今回は長野県松本市の大宮熱田神社(おおみやあつた-)について。
大宮熱田神社は松本盆地の西の端のほうに鎮座しており、文字通り名古屋の熱田神宮の祭神を合祀しています。アクセス良好とは言いがたい場所ではありますが、国重文の室町時代の本殿や、県下最大とされるモミの大木など、見所の多い内容となっています。
現地情報
所在地 | 〒390-1702長野県松本市梓川梓4419(地図) |
アクセス |
上高地線下島駅から徒歩1時間 松本ICから車で15分 |
駐車場 | 3台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
境内
参道
境内入口。鳥居の扁額には「大宮大明神」とありました。
鳥居の左奥には、冒頭に書いたモミ(樅)の巨木が立っています。
手水。異様に大きく作られていて、オーバースケールに感じなくもないかも。
しかも、近づくとセンサーが感知して自動で水が出るハイテク手水となっております。
参道の途中。竹薮の中に摂末社が立ち並んでいます。
神楽殿は妻入の入母屋。こちらも大きめに造られているように見えます。
どう呼んだらいいのか分らない社殿。壁には百人一首が納められていました。
拝殿と本殿
拝殿。直線的な切妻屋根に、千木と鰹木がついていて、神明造っぽい外観。しめ縄も太くて大きいです。
拝殿の右側から裏手に回ると本殿があります。途中、国寶(“宝”の旧字体)と書かれた石碑がありましたが、これは戦前のいわゆる旧国宝のことを指していて、現行の国指定重要文化財に相当します。
本殿はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃながれづくり)。案内板によると、室町時代の造営とのこと。
ありきたりな様式ですが、一間社にしては大きめに造られています。
上の写真ではちょっと分りづらいですが、この本殿の最大の特徴は向拝(正面にのびた屋根)を支える柱が丸いこと。
普通の神社本殿は、成形の難しい円柱で母屋(つまり神の空間)を作り、成形しやすい角柱を室外の向拝(俗人の礼拝所)に使うことで空間の格の違いを示します。
しかしこの本殿は向拝にまで円柱が使われています。あまりにも初歩的な作法を破っているので、おそらくわざとやったものと思われますが、理由は分りません。
なお、向拝に円柱が使われている本殿はごく少数ですが存在し、私の知る範囲だと大井俣窪八幡神社(山梨市)があります(リンク先には丸柱を使う理由についての考察もあるので、よければご参照下さい)。
また、向拝の柱が縁側に立っていて欄干(手すり)と一体化している点も変わっています。普通、向拝の柱は正面の階段の下あたりに立っているものです。
背面。
柱を見ると「床上は円柱だが床下は八角柱」という定番の手抜きがなされています。こうした手抜きは、室町以降の本殿でしばしば見かけます。
ほか、途切れた縁側も特徴的。普通、縁側の終端には脇障子(わきしょうじ)というついたてみたいな板材をはめるのですが、この本殿はそれがありません。
変わった造りのように思えますが、甲信地方だと熊野神社(甲州市)があり、そこまで珍しいものではないと思います。
境内の解説は以上。
境内はさほど広くないものの、全体的に社殿が大きめに作られており、素人目に見ても立派に思えます。なので、神社にあまり詳しくない人でも小ネタとして楽しめる内容なのではないでしょうか。
もちろん、室町時代の個性的な本殿もありますので、神社建築好きならば一層のこと楽しめるでしょう。
以上、大宮熱田神社でした。
(訪問日2019/07/20)