甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【姫路市】廣峯神社 その3(境内社)

兵庫県姫路市

廣峯神社(ひろみね-)

2025/05/01撮影

 

その1では拝殿などについて

その2では本殿などについて述べました。

当記事では本殿北側の境内社について述べます。

 

山王権現社と庚申社

廣峯神社本殿の裏手(北側)の区画には、7棟の境内社が並立しています。

いずれも江戸時代のものですが造営年がことなり、もっとも古いものは江戸中期の1724年、もっとも新しいものは幕末の1868年のものです。

屋根葺きは、7棟いずれも神社建築ではめずらしい本瓦葺となっています。

 

向かって左手前(南西)の2棟は、左が山王権現社、右が庚申社。

両棟とも、一間社流造、本瓦葺。

 

こちらは山王権現社で、祭神は金山彦神。

1777年(安永七年)造営。市指定文化財。

 

虹梁の絵様には植物の葉が彫られています。中備えは蟇股で、彫刻は波に兎。

向拝柱は几帳面取り角柱で、側面に唐獅子の木鼻がついています。

柱上の組物は連三斗。

 

海老虹梁は向拝の組物の上から出て、母屋の組物の肘木の位置に取りついています。

母屋柱は円柱。軸部は貫と長押で固められ、頭貫には拳鼻、長押には菊の紋の釘隠しがあります。

正面の扉の上の中備えは蟇股。盲連子と格狭間を組み合わせた意匠。

海老虹梁や蟇股の造りは、その2で述べた軍殿八幡社(1711年)とよく似ています。

 

側面。中備えは蟇股。

柱上の組物は出三斗。

妻飾りは笈形付き大瓶束。笈形は若葉の意匠。

破風板の拝みには蕪懸魚が下がり、鰭は菊の彫刻になっています。桁隠しも菊の彫刻です。

 

縁側は切目縁が4面にまわされています。縁束や腰組はありません。

母屋柱は床下も円柱に成形され、柱間は壁を張ってふさいでいます。

 

つづいて右側の庚申社。祭神はサルタヒコとアメノウズメ。

1751年(寛延四年)造営。市指定文化財。

 

虹梁の絵様は、渦や若葉が彫られています。中備えの蟇股は牡丹と思しき花が彫られています。

向拝柱は面取り角柱。側面に唐獅子の木鼻がつき、柱上は連三斗。

 

海老虹梁は向拝の組物の上から出て、母屋の頭貫の位置に取りついています。

母屋柱は円柱。柱間の長押は、頭貫より低い位置に打たれています。

 

頭貫には木鼻がつき、母屋柱の上の組物は出三斗。中備えの蟇股には竜が彫られています。

妻飾りは笈形付き大瓶束。笈形はF字型のシンプルな形状のもの。

破風板の拝みには鰭付きの蕪懸魚。鰭は若葉の意匠。

 

縁側は切目縁で、こちらも山王権現社と同様に縁の下を支える部材がありません。

 

天神社と稲荷社

右手前(南東)の2棟は、左が天神社、右が稲荷社。

 

向かって左の天神社は、菅原道真を祀っています。

一間社流造、本瓦葺。

1724年(享保九年)造営。市指定文化財。

 

虹梁中備えは蟇股で、麒麟の彫刻が入っています。

向拝柱は几帳面取り角柱。側面に獏の木鼻がつき、柱上は連三斗。

 

海老虹梁は向拝の組物の上から出て、母屋の組物の肘木に取りついています。軍殿八幡社や先述の山王権現社と似た造り。

母屋柱は円柱で、軸部は貫と長押で固められています。頭貫には拳鼻。

 

母屋の組物は出三斗。頭貫の上に中備えはありません。

妻飾りは笈形付き大瓶束。笈形は雲状の彫刻。

破風板の拝みには鰭付きの蕪懸魚。桁隠しは若葉の意匠。

 

縁側は切目縁が3面にまわされています。

ほかの社殿と同様に、縁の下に支持材がありません。

 

向かって右の稲荷社。祭神はウカノミタマ。

一間社切妻造(妻入)、本瓦葺。

1761年(宝暦十一年)造営。市指定文化財。

 

屋根の様式は妻入りの切妻造で、正面のケラバをのばすことで向拝の庇の役割を持たせています。このような様式の神社本殿は初めて見ました。

 

正面の切妻破風。

破風板には蕪懸魚が下がっています。鰭は雲の意匠。

妻面には妻虹梁がわたされ、笈形付き大瓶束で棟木を受けています。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。正面と側面に木鼻がついています。

柱上は出三斗。肘木は横に長く、角ばった形状。

向拝柱にわたされた虹梁は、絵様を陰刻したもの。中備えはありません。

 

向拝柱と母屋柱とのあいだには、繋ぎ虹梁がわたされています。

母屋柱は円柱。軸部は貫と長押で固められ、頭貫には拳鼻がつきます。

母屋の柱上の組物は出三斗。正面側面ともに中備えはありません。

 

縁側は切目縁が3面にまわされ、縁の下の支持材は省略されています。

 

背面。

妻飾りは虹梁大瓶束。こちらは笈形がありません。

破風板の拝みは、正面と同様の蕪懸魚です。

 

大鬼社

本殿裏手の区画の奥には、3棟の境内社があります。

左が大鬼社、右が熊野権現社、中央奥が冠者殿社。

 

向かって左の大鬼社は東向きに鎮座しています。祭神はイザナキ。

一間社流造、本瓦葺。

1735年(享保二十年)造営。市指定文化財。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。側面に唐獅子の木鼻がつき、柱上は連三斗。

虹梁中備えの蟇股には鳳凰が彫られています。

 

海老虹梁の母屋側は、組物の肘木と木鼻とのあいだに取りついています。

向拝の桁の木口には、雲状の桁隠しがついています。

 

母屋柱は円柱。頭貫に木鼻がつき、柱上は出三斗。中備えはありません。

妻飾りは笈形付き大瓶束。笈形は雲の意匠。

破風板の拝みには蕪懸魚。左右の鰭は若葉の意匠。桁隠しは、向拝のものと同じく雲状の彫刻です。

 

縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干の親柱には擬宝珠がついています。

縁の下の支持材はありません。

 

熊野権現社

向かって右には熊野権現社が西面し、大鬼社と向かい合っています。写真右端は稲荷社の背面。ここまで一間社の社殿が連続しましたが、この社殿は三間社で横幅が広いです。

祭神は速玉男命などの熊野権現。

 

三間社流造、本瓦葺。

1868年(慶応四年)造営。市指定文化財。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。細い材が使われています。

側面には木鼻。柱上には小ぶりな出三斗が置かれています。

虹梁は絵様を薄く線彫りし、中備えは透かし蟇股。蟇股は若葉状の彫刻が入っていますが、平板な造形です。

 

縁側は正面のみに設けられています。

母屋は正面3間で、柱間は板戸。側面は1間で横板壁。

 

軸部は貫と長押で固められ、頭貫に拳鼻がついています。

母屋の組物は大斗と花肘木を組んだもの。中備えはありません。

妻飾りは虹梁大瓶束。

破風板の拝みに蕪懸魚が下がっています。

 

冠者殿社

中央奥には冠者殿社(かしゃでんしゃ)が南面しています。祭神はタカミムスビ、カミムスビ、コノハナノサクヤビメの3柱。

一間社流造、本瓦葺。

19世紀初頭の造営。市指定文化財。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。側面に象の木鼻がつき、柱上は連三斗。

 

虹梁中備えは透かし蟇股。

五瓜に唐花の神紋が彫られています。

 

母屋柱は円柱。頭貫に拳鼻がついています。

母屋の組物は出三斗。中備えはありません。

妻飾りは笈形付き大瓶束。

破風板の拝みと桁隠しに懸魚が下がっています。

 

縁側は切目縁が3面にまわされ、縁の下の正面側の隅は持ち送り板、後方は縁束で支えられています。

 

荒神社と吉備神社

本殿裏の区画から山道を200メートルほど歩いて境内北西へ進むと、荒神社と吉備神社に到着します。廣峯神社本殿からの所要時間は10分弱程度。

 

妻入りの覆屋の内部には荒神社(こうじんじゃ)が鎮座しています。祭神はスサノオ(牛頭天王)。

一間社隅木入り春日造、こけら葺。

17世紀前半の造営。市指定文化財。

 

正面の破風。

六葉のついた懸魚が下がり、妻面に虹梁が見えます。

 

向拝の虹梁には若葉の絵様が陰刻され、中備えに蟇股が配されています。蟇股の彫刻は桐と孔雀。

 

向拝柱は唐戸面取り角柱。側面に禅宗様木鼻がつき、柱上は連三斗。

 

母屋柱は円柱。貫と長押で固められ、頭貫に木鼻があります。

正面の柱間は板戸。その上の中備えは蟇股。

海老虹梁の母屋側は、頭貫木鼻の上に取りついています。

 

側面の軒下。

柱上の組物は出組。桁下には軒支輪があります。

 

背面。こちらも中備えに蟇股があります。

妻飾りは虹梁大瓶束。

 

縁側はくれ縁が3面にまわされ、跳高欄を立てています。縁の下は貫でつながれた縁束で支えられています。

 

荒神社向かって左側の覆屋の中には吉備神社。内部の社殿は木製の土台の上に据えられています。

一間社流造、銅板葺。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。柱上は巻斗と舟肘木。

母屋柱は円柱。組物は向拝のものと同じく巻斗と舟肘木を組んだもの。

向拝と母屋とのあいだに海老虹梁があるほか、破風板の拝みに梅鉢懸魚が下がっています。

 

以上、廣峯神社でした。