世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【千曲市】武水別神社(八幡宮) ~広大な社叢と北信最大級の社殿~

今回は長野県の観光地ということで、千曲市の武水別神社(たけみずわけ-)について。八幡神社(やわた-)とか八幡宮(はちまんぐう)とかいった別名もあり、私の知る限りだとこれらの別名のほうが通りが良いです。

 

北信地方(長野県北部)で神社といったらまず戸隠神社(長野市)が出てくると思いますが、戸隠神社とともに北信地方最大クラスの神社が千曲市に鎮座しています。それが武水別神社です。ちょっと似た名前の建水分神社(たけみくまり-)が大阪府にありますが、そちらとは祭神も全く別で、特に関係はないようです。

表題の通り境内は広々としていて、普通に参拝するも良し、境内を散策してパワースポット的な場所を見つけるも良し、茶店うずら餅を食べてくつろぐも良し、社殿を楽しむも良し、といった感じで十人十色な楽しみ方ができます。万人におすすめできる神社ですね。

今回はいつも通り社殿について解説しながら紹介して行きたいと思います。

武水別神社へのアクセスは最寄りの駅が2つあり、姨捨駅(篠ノ井線)から徒歩40分程度、屋代駅(しなの鉄道線)から徒歩50分程度です。

車の場合は、社叢の中に無料駐車場が30台分程度あります。

 

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境内から見た大鳥居。

ご覧のとおり、車のすれ違いができるほどの巨大な鳥居があるので、この神社を見落とすことはまず無いでしょう。

鳥居の向こうに見える山地は、田毎の月として知られる姨捨の棚田です。

 

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境内を歩き始めて最初に目に付くのは、覆いがついた小さな社殿です。これは摂社・高良社(こうらしゃ)本殿で、室町時代の建立で県宝指定されているとのこと。

正面に階段がない、いわゆる見世棚造(みせだなづくり)。屋根はこけら葺きの一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)です。

 

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蟇股はくり抜かれておらず、組物や虹梁もシンプルな造り。確かにこの辺りは室町時代の神社の特色です。

そして、なんと垂木がありません! 屋根の軒裏を見ても、板が張られているだけです。私が思うに、重厚な垂木は神社建築の見所の1つなのですが、それをあえて使わないだなんて斬新すぎる...!

案内板の解説によると「軽快な趣」とのことですが、まさに“言い得て妙”な表現で、他に言い当てる言葉が見あたりません。

大井俣窪八幡神社(山梨市)日吉神社(青木村)を訪れたときも思ったのですが、やはり室町時代の神社建築はとても味わい深いです。

 

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気を取り直して境内の紹介を。写真左は手水舎、中央奥は神楽殿

手水舎の裏には川中島の戦い(第1次)に関する記念碑と解説がありました。なお、川中島の戦いには信憑性のある史料が少なく諸説紛々なので、この手の解説・案内板を見るときは出典や設置者も確認しておいたほうが良いです。戦国史は私も大好物なのですが、川中島の戦いについては「史実かどうか分からないことが多すぎる」というのが個人的な印象です。

 

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摂末社。こちらは梁の上などに彫刻が配置されており、江戸時代のものと見ていいでしょう。

 

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境内の中心部。神楽殿(?)と呼び名の分からない入母屋の社殿、そして拝殿が一直線に並んでいます。

 

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拝殿は本殿と一体化した造りをしています。屋根は銅葺き。

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側面と、拝殿・本殿の接合部。海老虹梁のような意匠がある区間が、接合部です。

権現造(ごんげんづくり)かと一瞬だけ思いましたが、ただ拝殿・本殿がくっついただけの造りでした。

 

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本殿背面。

木のせいで見づらいですが、三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)でした。

 

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そして、本殿の裏には多数の摂末社が建ち並んでいます。

 

社殿については以上になります。当記事では割愛しますが、広大な境内には”さざれ石”や御神木などなど他にも多数の見所があり、散策していて飽きません。また、境内で売られているうずら餅は私もけっこう好きです。自腹で買いたいほどではないですが、貰ったらかなり嬉しいものなので、お土産におすすめです。

 

以上、武水別神社でした。

(訪問日2019/05/01)