甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【小菅村】長作観音堂

山梨県小菅村

長作観音堂(ながさく かんのんどう)

2025/05/31撮影

概要

長作観音堂は村南部の山間の集落に鎮座する仏堂です。

創建は不明。口碑によると、聖徳太子によって神楽入という地点*1に観音像が祀られ、807年(大同二年)に観音堂が建立されたらしいです*2。観音堂は、もとは長谷寺という臨済宗建長寺派の寺院の伽藍で、年代不明ですが現在地へ移転・移築されています。長谷寺は明治初期に廃寺となり、跡地は小学校分校になりましたが、観音堂は解体をまぬかれて現存しています。

現在の観音堂は「寺子屋自然塾」という施設の一画にあります。観音堂は鎌倉時代に造られた住宅風の建築で、国の重要文化財に指定されています。

現地情報

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所在地 〒409-0211山梨県北都留郡小菅村長作429(地図)
アクセス 大月ICから車で40分
駐車場 5台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

文化財情報

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重要文化財1件(1棟)

観音堂 *3

境内

観音堂

長作観音堂は南向きに鎮座しています。

石垣の上に観音堂があり、そのほかの堂宇はありません。

 

桁行3間・梁間4間、寄棟造、銅板葺。

鎌倉後期の造営と考えられます。1963年の解体修理で現在の姿になっています。

国指定重要文化財

 

各部の構造や意匠は住宅風の造りで、簡素かつ素朴な印象。鎌倉時代の建築とされますが、平安時代の作風が色濃い純粋な和様建築です。

山梨県内では大善寺本堂(1291年上棟)に次いで2番目に古い建築のひとつです*4

 

正面は3間。柱間は3間とも半蔀。

軒裏は一重まばら垂木。

 

向かって左側。

柱は大面取り角柱。軸部は長押で固められています。頭貫木鼻はありません。

柱上は舟肘木。横幅が長く、木口から下面にかけての曲線がゆるやかで、非常に古風な形状をしています。

 

古い時代の建築のため、柱の面取りが非常に大きいです。

柱幅を1としたときの面幅の比は0.2程度で、これは鎌倉時代の技法です(参考:角面取り)。

 

左側面(西面)。

側面は4間。4間のうち前方の1間通りは外陣のようで、縁側が1段低くなっています。

 

前方の1間。

格子の引き戸が入り、その上下に長押が打たれています。

 

後方の3間。

柱間は板戸と横板壁。こちらも柱間を長押で固めていますが、板戸の上下は長押が二重に打たれています。

 

縁側は切目縁が4面にまわされています。欄干はありません。

縁の下は大面取りされた縁束で支えられています。

縁束と母屋柱は、礎石の上に据えられています。

 

背面は3間。

中央の柱間は板戸、左右は横板壁。

こちらも扉の上下に長押を1つ余分に打っていて、長押に開けた穴で扉の軸を受けています。

 

背面の隅(北東)の柱。

大面取り角柱が使われている点は正面と同様ですが、こちらは軒桁と舟肘木の軒先へ突き出る部分が切り落とされています。

 

以上、長作観音堂でした。

*1:現在地の北東1キロメートルほどの山中

*2:案内板(長作観音堂奉賛会の設置)より

*3:附:厨子1基

*4:熊野神社本殿2棟(甲州市)は1318年のものとする説がある