世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【大町市】若一王子神社 ~見所は三重塔だけじゃない!~

今回は長野県のマイナー観光地ということで、若一王子神社(にゃくいちおうじ-)について。

 

若一王子神社は大町市の市街地にある神社で、境内には松本地方では唯一の三重塔があります。別名を王子権現(おうじごんげん)と言うようで、境内に観音堂があるあたりからしても、神仏習合の色が強いです。

長野県で三重塔というと、半数以上が佐久平と上小(上田周辺)に集中しているため、他の地域では三重塔はかなり貴重です。

 若一王子神社へのアクセスは上大黒町バス停が最寄りで、鉄道駅なら北大町駅から徒歩15分程度の距離です。

無料駐車場は境内の入口にあり、20台分くらいです。

 

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若一王子神社の境内。右手側にある三重塔が圧倒的な存在感を放っています。

 

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三重塔。建立は江戸時代中期(西暦1712年)とのことで、県宝指定を受けています。

黒ずんだ色で装飾は少なめ。一見地味な雰囲気ですが、軒下や廻縁の下にある肘木(木組のこと)が格好良く、雪国の雰囲気とよく似合っていると思います。

落雪注意の立て札があるように、積雪期に見学する際は注意。今回は春先の訪問だったので注意するほどではなかったのですが、大町は県内でも豪雪地帯の部類なので冬季はかなり雪が積もります。

 

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拝殿(左)と観音堂(右)。拝殿は銅葺きの切り妻で、装飾はシンプルな蟇股(かえるまた)くらいで、こちらも飾り気のない雰囲気。観音堂は茅葺きの寄せ棟で、本尊は十一面観音。

拝殿には、伊勢神宮の遷宮で不要になった旧社殿の一部を移築しているそうです。

 

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国指定重要文化財の本殿は向拝付きの妻入り、一間社で、典型的な春日造りです。

普請を手掛けたのは在郷の宮大工の名跡である金原周防で、国宝指定を受けている仁科神明宮の普請にも参加したことのある人物だそうです。

 

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背面に回ると、木彫りの赤鬼の顔が棟に載っているのがよく見えます。これは、鬼瓦ならぬ“鬼面”で、他県の神社では見られない特殊な装飾だそうです。鬼面の役割は、鬼瓦と同様で、厄除けや防火の願いが込められています。

神社建築は基本的に瓦屋根を避けるので、鬼瓦の代わりに木製の鬼面をつけるのは割と自然な発想だと私は思うのですが、他の神社で使われていないのは何故なのだろう? 鬼瓦は奈良時代以降に普及したものなので、国内での歴史もけっこう深いはずなのですが。

関係ない話ですが、春日造り、鬼瓦、という言葉から、どうしても某芸人を連想してしまいます...

 

それはさておき、若一王子神社に来たなら、ぜひとも裏へ回って本殿と鬼面を見ていきましょう。三重塔を見て「これだけのものか」と思いこんで帰ってしまうのは非常にもったいないです。

 

以上、若一王子神社でした。

(訪問日2019/03/15)