甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【東近江市】五箇神社

今回は滋賀県東近江市の五箇神社(ごか-)について。

 

五箇神社は近江商人の町として知られる五個荘の集落に鎮座しています。

創建は不明。当初は2棟の本殿が並立していたらしいですが、天正年間(1573-1592)に兵火で焼失し、文禄年間(1592-1596)に本殿を1棟に合祀して再建されました。

現在の境内社殿は江戸後期のもので、拝殿と本殿が県の文化財です。とくに本殿は大規模な桧皮葺で、滋賀県内でよく見られる前室付き流造となっています。

 

現地情報

所在地 〒529-1404滋賀県東近江市宮荘町767(地図)
アクセス 五個荘町駅から徒歩15分
八日市ICから車で20分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

拝殿

五箇神社の境内は南西向き。入口は住宅地の生活道路に面しています。

鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「五箇神社」。

 

参道左手には手水舎。

切妻、桟瓦葺。

 

拝殿は、入母屋、向拝3間、銅板葺。

1809年(文化六年)造営。後方の切妻屋根の部分は1882年(明治十五年)の増築*1。県指定有形文化財。

案内板いわく“滋賀県においては、向拝を設けた拝殿は珍し”く、“県内の拝殿の形式の変化を考えるうえで、本殿とともに貴重”とのこと。

 

向拝は3間あり、中央の1間は中備えに板蟇股があります。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。側面には木鼻。

柱上の組物は出三斗。

 

向拝の組物の上では、繰型のついた手挟が軒裏を受けています。

海老虹梁はありません。

縋破風の桁隠しは猪目懸魚。

 

母屋柱は角柱。

頭貫と台輪には禅宗様木鼻。

柱上の組物は大斗と実肘木。

 

左側面。

正面側面ともに柱間はいずれも蔀。

 

側面後方の小屋。こちらは明治時代の増築。

切妻、銅板葺。

正面は蔀、側面は縦板壁。拝殿の本体部分の縁側が、小屋の正面の軒下まで伸びています。

 

柱は角柱、柱上は舟肘木。

破風板の拝みには猪目懸魚。

 

本殿

拝殿の後方には、塀に囲われた本殿が鎮座しています。祭神はアマテラスなど多数。

桁行3間・梁間3間、三間社流造、向拝3間 軒唐破風付、檜皮葺。

1839年(天保十年)造営。県指定有形文化財。

棟梁は当地の宮大工の北村宗兵衛吉久と、その子の北村嘉七。脇棟梁は尾張の伊藤平左衛門とのこと。

 

向拝は3間。中央の軒先には唐破風が設けられています。

 

向拝柱は几帳面取り角柱で、隅の柱の側面には獏らしき木鼻が見えます。

組物は出三斗と連三斗。組物の上で軒裏を受ける手挟は、菊が籠彫りされています。

縋破風の桁隠しには、雲の意匠の懸魚。

 

向拝の軒下には角材の階段が5段。欄干の親柱は擬宝珠付き。

階段の下には浜床が張られ、浜床にも欄干が立てられています。

 

向拝と母屋をつなぐ梁はありません。

母屋の正面は3間。柱間には引き戸が使われています。

 

母屋の側面は3間。柱間は板戸と横板壁。

前方の1間通りは前室(外陣)となっていて、床が一段低いです。縁側にも高低差があり、欄干をカーブさせてつなげています。

 

母屋の前面の柱は角柱。前面には唐獅子、側面には牡丹らしき意匠の木鼻。

柱上の組物は出三斗。組物の上には、彫刻の入った手挟が見えます。

前面の柱間には虹梁が渡され、中備えは蟇股。蟇股には彫刻が入っていますが、距離と角度のせいで題材がよく判らず。

前室の側面の柱間(写真右)には海老虹梁が渡されています。

 

反対側、左側面(北西面)。

母屋柱は円柱。頭貫と台輪には禅宗様木鼻。

組物は尾垂木二手先。柱間の中備えは蟇股。

 

妻飾りは二重虹梁。

大虹梁の上には蟇股が配され、その左右には大瓶束。蟇股は、樹木が彫られています。二重虹梁の上は暗くてよく見えず。

破風板の拝みと桁隠しには、三花懸魚が下がっています。

 

背面も3間。

縁側は切目縁が3面にまわされ、背面側は脇障子を立ててふさいでいます。

組物や中備えなどの意匠は側面とほぼ同じ。

 

大棟には千木と鰹木。千木は先端が水平にカットされたもの。鰹木は細い紡錘形のものが5本。

 

以上、五箇神社でした。

(訪問日2022/10/15)

*1:境内案内板(東近江市の設置)より