世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【下諏訪町】諏訪大社下社春宮の見所を解説 ~せせらぎに包まれた長閑な一宮~

今回は長野県の超メジャー観光地ということで、諏訪大社下社春宮(すわたいしゃ しもしゃ はるみや)について。

 

下社春宮は諏訪湖の北東に鎮座し、信濃国一宮である諏訪大社4社(四社)の1社です。4社はそれぞれ雰囲気がちがっていて、どの社も他に無い個性があって面白いのですが、下社春宮はすぐそばを川が流れており、せせらぎが聞こえるからか境内は非常に落着いた雰囲気です。

また、国道20号線などの街道筋からほんの少し外れた場所にあり、あまり観光地化されていない点も個人的に好きです。

 

現地情報

・所在地:

 〒393-0092
 長野県諏訪郡下諏訪町大門193

・アクセス:

 下諏訪駅から徒歩20分程度

 岡谷ICから国道20号線で15分程度

・駐車場:約40台分(無料)

・営業時間:随時

・入場料:無料

・社務所:あり

・滞在時間:20分程度

 

境内 

下馬橋

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国道20号線を春宮大門という交差点で北に曲がり、道路にかかる大鳥居をくぐって進んで行くと、しめ縄がかけられた橋があります。この橋の右側を通って進むと、駐車場と春宮の境内があります。

この橋は下馬橋といい、室町時代の造営のようです。ちなみに、諏訪大社4社の社殿はほとんどが江戸中期以降のものです。

普段は通行禁止で、お祭りの御輿だけが渡れるとのこと。橋の下を流れる川は暗渠化されてはいますが、橋の下からは水の流れる音が聞こえてきます。

 

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境内の入り口。左は手水社。奥には神楽殿が見えます。

なお、ここの道路は地味に車通りが多く、このアングルで撮影するときは通行の邪魔にならないよう注意が要ります。今回は早朝(06:00頃)の訪問だったので人も車も皆無でした。

 

神楽殿

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境内に入って鳥居をくぐるとすぐに神楽殿があります。後ろに写っているのは左右片拝殿と、御柱(向かって右が一の柱、左が二の柱)。

神楽殿は、規模こそ秋宮のものに大きく劣りますが、これくらいのサイズのほうがちょうど良いような気がします。あと、秋宮は境内が途中で折れ曲がっていますが、春宮は鳥居から幣拝殿まで一直線に並んでいるので、整然とした印象があります。だからなのか、私のような素人でも、それなりに良い構図の写真が簡単に撮れます。

 

左右片拝殿

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幣拝殿は後回しとして、まずは国重文の片拝殿から。

写真は左側の片拝殿。間口5間、奥行1間。柱はすべて丸柱。

流造みたいな“へ”の字型の屋根をしていて、一見すると切妻です。しかし案内板には「片流れの檜皮葺」と書かれています。つまり、後方についているのは屋根ではなく庇(ひさし)ということでしょうか。

寺院・神社建築において片流れ屋根はレアな存在ですが、庇が付加されて切妻みたいな外観になっている例は他に見たことがありません。

 

宝殿

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片拝殿の脇から奥をのぞき込むと、千木の乗った切妻屋根の宝殿が見えます。

秋宮と同様に宝殿は2棟が左右に並んでおり、御柱際のたびに式年遷宮されます。

幣拝殿と左右片拝殿が檜皮葺であるのに対して、奥にある宝殿は檜皮より格下とされる茅葺。この理由については秋宮の記事に書いたので、割愛いたします。

 

幣拝殿

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そしてこちらの中央が幣拝殿。こちらも国重文です。屋根は檜皮葺、平入の切妻で、正面は軒唐破風付き。

春宮・秋宮は境内配置と建物の造りがほぼ同じなのですが、特にこの幣拝殿は瓜二つと言えるくらいに似ています。とはいえ、彫刻の内容や賽銭箱周りの配置が実はぜんぜんちがっていたりします。

春宮の幣拝殿を手がけた棟梁は郷里の宮大工・柴宮長左衛門(旧姓は伊藤・村田)で、秋宮より1年早い1780年建立とのこと。春宮・秋宮は同時期に建設されていたため、互いに強く意識しあって造られたようです。

 

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軒下。

彫刻の巧拙については私には判断しかねますが、名工・立川和四郎(初代)が手がけた秋宮幣拝殿と見比べても、決して見劣りしない内容だと思います。

 

以上が春宮の境内にある主要な社殿になります。他にも摂社末社があったり、裏手には「万治の石仏」という風変わりな阿弥陀如来像があったりするのですが、後日に別記事で紹介することにして、今回は割愛いたします。

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最後に、境内のちょっと高い場所から見下ろした構図。

早朝の境内はほぼ無人だったのですが、私が社殿を見ているうちに続々と人が集まってきて大音量でラジオを鳴らし始めました。何事かと思っていると、ラジオ体操でした。神楽殿の前に集合し、早く到着した人は参拝を行い、しっかりと第2まで体操をやっていました。わざわざこんな素晴らしい場所に集合してラジオ体操をするなんて、ちょっと羨ましい...

「一宮」という格調高い肩書きには厳粛そうなイメージがありますが、この春宮はふつうの住宅街の中にあって地域の人たちの集合場所にされており、他の一宮とはどこか距離感がちがうように思えます。

 

先述のように、春宮と秋宮は境内の配置から幣拝殿の造りまで非常によく似ており、徒歩15分程度で行ける距離なので、この2社はなるべくセットで参拝することをお勧めいたします。そして、2社の社殿のちがいを探しながら鑑賞して行くと一層深い楽しみかたができます。

 

以上、諏訪大社下社春宮でした。

(訪問日2019/05/18)