世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【下諏訪町】武居恵比須社 ほか ~下諏訪東部の小ネタ特集~

今回は長野県のマイナー観光地ということで、下諏訪町の武居恵比須社(たけいえびすしゃ)などの小ネタについて。

 

武居恵比須社と若宮神社(わかみや-)は、諏訪大社下社秋宮の裏手に鎮座しています。両者とも小規模な社殿があるだけですが、とくに武居恵比須社の拝殿は彫刻が見事です。

ほか、秋宮から旧甲州街道を少し南下した場所にある津島神社(つしま-)についてもとりあげます。

 

 

武居恵比須社

〒393-0000長野県諏訪郡下諏訪町木の下南5975(地図)

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武居恵比須社は、下社秋宮の裏手のいいなり地蔵のある集落を少し登って行った先に鎮座しています。

行ってみると鳥居の前に鎖がかけられており「危険、鳥居老朽」とのこと。しかし立入禁止とは書いていないので、念のためかばんで頭を守りながら早足で鳥居の脇を通過し、無事に境内へ入れました。

 

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鳥居の先には、小規模ながら手堅くまとまった雰囲気の拝殿があります。

拝殿は銅板葺の入母屋(平入)で、向拝は向唐破風(むこう からはふ)。垂木は一重でした。

 

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向拝の軒下を見上げると、非常に立派な彫刻が配置されています。

兎毛通(うのけどおし 唐破風の懸魚のこと)には鳳凰、写真中央の虹梁(こうりょう)の上には龍、虹梁の両端には唐獅子と象の木鼻。棟梁が誰なのかは不明ですが、この彫刻配置は立川流(秋宮の棟梁)の典型です。

 

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拝殿の裏には、御柱に囲われた本殿が鎮座しています。

本殿は銅板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。母屋の柱は角柱でした。彫刻の類は一切なく、シンプルな造り。

なお、wikipediaによると武居恵比須とは先住の土着神である武居大伴主神(たけい おおともぬしのかみ)のことで、正しくは「会美酒」(えびす、えみし)と書くようです。とはいえ、七福神のえびすとも全くの無関係ではないようです。

 

以上、武井恵比須社でした。

(訪問日2019/06/08)

 

若宮神社

〒393-0024長野県諏訪郡下諏訪町五官6658(地図)

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下社秋宮の裏手から旧甲州街道に沿って上諏訪方面へ向かうと、街道沿いに「若宮神社」と書かれた石製の社標が立っています。

社標の前で街道を折れて坂道を登って行くと、参道の階段が現れます。参道はご覧のとおり急斜面にあり、階段は100段くらいです。

 

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参道の途中の手水。

手水はわりと新しいもののようで、ちょろちょろと水が出ていました。そして、手水ではあまり見かけない亀の石像が置かれていました。

 

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参道を登りきると、拝殿が鎮座しています。

拝殿は背部に妻入の切妻の建物がついており、T字を逆さにした形状の建物になっております。本殿は見当たらず、拝殿の後ろの斜面に小さな祠があるだけでした。

鳥居、狛犬、拝殿、いずれもほとんど年季の入っていない感じで、本殿もないので建築的にも雰囲気的にもあまり語るほどのことがありません...

 

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とはいえけっこうな高さまで登ったので、眺望の良さはなかなかのもの。下諏訪の市街地と諏訪湖を一望することができます。

 

以上、若宮神社でした。

(訪問日2019/05/18)

 

津島神社(高木)

〒393-0033長野県諏訪郡下諏訪町北高木9305(地図)

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若宮神社から旧甲州街道に戻って上諏訪方面へ向かうと、下諏訪町・諏訪市の境の近くに島木赤彦の家である柿蔭山房(しいんさんぼう)があります。

島木赤彦(しまき あかひこ)はアララギ派の歌人で、近代史の文壇のくだりでちょこっと出てくるので名前くらいは知っている人も少なくないはず...? なお、私は名前以外は知らなかったし、この辺の出身だったことも最近知りました。

 

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島木赤彦の家の前は石畳の歩道になっていて、立ち止まって振り向くと坂の向こうには諏訪湖の水面が見え、なかなか雰囲気の良い小径です。

 

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歩道を登って行くと、津島神社の境内入口の鳥居が現れます。

鳥居は石製の明神鳥居。扁額はありません。

 

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境内はさほど大きくなく、鳥居をくぐるとすぐに拝殿があります。

拝殿は銅板葺の入母屋、正面に軒唐破風付き。

写真右端は一の御柱、左端は二の御柱。

 

津島神社なので主祭神は疫病神・牛頭天王(ごずてんのう)で、愛知県津島市の津島神社の系統に属します。鬼瓦や棟に描かれた紋は木瓜(もっこう)で、花びらが5枚あるいわゆる織田木瓜(信長の家紋と同じ)でした。

祭神や紋からして諏訪大社とはほとんど無関係のはずなのですが、どういうわけか立派な御柱が立てられており、裏手に回ってみてもしっかりと四の御柱まで立ててありました。

 

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向拝の唐破風部分。

屋根裏の垂木は一重。唐破風の懸魚(兎毛通)は鳳凰。虹梁の中央は、くり抜かれていない板蟇股(いたかえるまた)、虹梁の両端の木鼻はこちらを振り向いたポーズの唐獅子。

 

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拝殿の裏手には、覆いの中に本殿が鎮座しています。

壁板のせいで見づらいですが、本殿はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)であることがわかります。

母屋の柱は円柱。彫刻の類はほぼなく、蟇股は板蟇股、組物は出三斗(でみつど)だけで、全体的に質素で古風な造り。建築年代は不明ですが、年代を推定しようにも手掛かりになりそうなパーツが見つかりません...

 

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最後に、境内入口の路上から眺めた諏訪湖を。写真は岡谷方面を眺めた図で、湖に突き出した場所は赤砂岬です。

諏訪湖は全体的に丸っぽい形状をしているので入組んだ地形の場所がほとんどなく、結氷していない時期はあまり写真映えしません。そんな諏訪湖で唯一といえる岬が赤砂岬で、旧甲州街道沿いの高台から見下ろすと、いい感じに突き出た地形を見ることができます。

ただ、まだまだ藻が繁茂している状態なのであまりきれいな画ではないですね...

 

以上、津島神社(高木)でした。

(訪問日2019/10/05)