今回は長野県諏訪市の諏訪大社上社本宮(すわたいしゃ かみしゃ ほんみや)について。
創建は不明。『古事記』の国譲りの節で、争いに敗れたタケミナカタが諏訪に封じられたのが起源といわれています。ほか、タケミナカタが土着の洩矢神を屈服させ、諏訪を統治したのが始まりとする説もあります。
平安期の『延喜式』には上社・下社ともに「南方刀美神社」(みなかたとみ-)と記載されており、信濃国の一宮として式内社に列しています。戦国期には武田氏の領地となっていますが、甲州征伐の折に織田氏による焼き討ちを受けています。江戸期には幕府や高島藩(諏訪氏)などの庇護を受けました。
明治期の神仏分離令で仏教色が廃され、社名は「諏訪神社」となっています。戦後は、ほかの諏訪神社との区別のため現在の「諏訪大社」という社号が正式名称となりました。
現地情報
所在地 | 〒392-0015長野県諏訪市中洲宮山神宮寺1(地図) |
アクセス | 茅野駅から徒歩50分 諏訪ICから車で5分 |
駐車場 | 100台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 諏訪大社 | 信濃國一之宮 諏訪大社(公式サイト) |
所要時間 | 30分程度 |
境内
境内入口
この日は2019/04/30で、平成最後の日。茅野市に行きたくて近くを通ったのですが、「朝(08:00)で雨降りだから空いているだろうし、せっかくだから寄ってみよう」と思い立って上社本宮に寄ってみることにしました。行ってみると、こんな時間と天気にも関わらず最寄りの駐車場がほぼ満車。普段だったらありえない混みかたに困惑しつつも、境内の散策を開始しました。
まずは鳥居。最寄りの駐車場からは徒歩1分くらいの距離で、とても参拝しやすいです。
鳥居の下から見た境内。左に立っているのは御柱。
写真奥に見える門の向こうに拝殿があるのですが、拝殿(後述)は写真右のほうを向いています。方角で言うと、西向きです。
手水舎
手水舎。一宮のだけあって管理が行き届いています。
なお、手水舎の裏には“明神湯”なる手水みたいなのがあり、お湯が出ているので冬場はこちらのほうがおすすめです。
手水のすぐ近くには、最強の力士・雷電為右衛門(らいでん ためえもん)の像。
ここに像があるのは、一説ではタケミナカタ(諏訪大社の祭神)とタケミカズチの勝負が日本における相撲の起源とされているのと、雷電の出身地がここからさほど遠くない東御市だったためでしょう。
江戸時代の絵に描かれた姿よりも細身ですね。左利きだったからなのか、手形も左手のものです。
神楽殿などの社殿
神楽殿。入母屋で間口3間(実質4間)、奥行き4間。この地域の神楽殿としてはかなり大規模。重文です。
こちらは天流水舎(てんりゅうすいしゃ)。雨乞いに使用したみたいです。
国重文のようですが、どの辺りがすごいのか私にはさっぱり解りません...
五間廊(右)と勅使殿(左)。両者とも国重文。
五間廊(ごけんろう)は文字通り奥行き5間の廊下のような構造物です。
勅使殿(ちょくしでん)は妻入の切妻で、正面が唐破風。案内板によると拝殿のような性質の建物とのことで、言われてみれば柱も角柱です。
神馬舎(しんめしゃ)。こちらも重文。
中には馬の像が安置されています。
回廊と神門
入口御門と布橋。両者とも重文。
手前の門状の構造物が入口御門、その奥につづく長い回廊が布橋です。本来は大祝(おおほうり:最高位の神官で、現人神とされた)だけが通れたのですが、現在は参拝客も自由に通れるようになっています。その名残なのか、柱は全て円柱(丸柱)です。
摂末社遥拝所。重文。
手前に階段が設けられていない、いわゆる見世棚造(みせだなづくり)です。
四脚門(よつあしもん/しきゃくもん)。やはり重文です。
こちらは通行不可で、神事のときに神官だけが通れるとのこと。
入口御門と同様、全ての柱に円柱が使われています。
拝所とその周辺
拝所の左手は勅願殿(ちょくがんでん)。やはりこれも重文。
「勅」という字には“天皇の”という意味がありますが、こちらは個人的な祈祷を行うための場所。対して、公的な祈願は拝殿の前で行うとのこと。
多数の重文がありましたが、ようやく拝所に到着しました。一般の観光客が入れるのはここまでで、参拝は写真中央の切妻の屋根の下で行います。
なお、当記事で通ったルートは遠回りであり、先述した多数の重文を全て無視した最短ルートで来ることもできます。鳥居をくぐった先にある階段を上ればすぐに拝所に到着するので、手短に参拝だけ済ませて往復5分くらいで帰ってしまうことも可能です。
幣拝殿と左右片拝殿
拝所から見た幣拝殿と片拝殿。
中央に見える唐破風と奥に見える屋根が幣拝殿。左右にあるのが片拝殿。全て重文です。
この独特の配置は“諏訪造”(すわづくり)と呼ばれます。私の知る限り、このような配置の神社は諏訪神社の系統でしか見たことがないです。
だいぶ早足になってしまいましたが、上社本宮にある社殿を、重文のものをメインに紹介しました。先ほど書いたように、細々とした見所を無視して参拝してしまうこともできますが、丁寧な案内板が多数ありますので境内の端までじっくり見て行くことをおすすめします。
今回はあっさりめの解説になってしまったので、今度は人気のないタイミングを狙って訪問し、もっと濃い解説をしたいと思っています。
平成最後の日の境内
最後に、平成の最終日の08:20頃の諏訪大社上社本宮の様子を。社務所の前に謎の行列ができて参道を塞いでおり、通行にちょっと難儀しました。平成最後の御朱印、とかでしょうか...?
あとで調べてみたところ、おおかた予想通りで、特別な御朱印帳を数量限定で08:30から販売していたらしく、それを求めた行列だったようです。
小雨の中でもかまわず並んでいるみたいですが、そこまでしてでも欲しいものなのでしょうか...? あいにく私は信仰心がほぼゼロなので、並んでまで御朱印を買い求めたいとは思えません...
以上、諏訪大社上社本宮でした。
(訪問日2019/04/30)