世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【下諏訪町】諏訪大社下社秋宮の見所を解説 ~街道の交差点に鎮座する一宮~

今回は長野県の超メジャー観光地ということで、諏訪大社下社秋宮(すわたいしゃ しもしゃ あきみや)について。

当記事では下社秋宮の主要な見所について解説いたします。

 

下社秋宮は、春宮とともに諏訪湖の北東に鎮座する信濃国一宮の1社です。中仙道と甲州街道が合流する場所のすぐ近くにあり、現代でも国道20号線と国道142号線の道沿いという好立地にあるため、観光客で賑わっています。4社の中では上社本宮に次いで観光地化が進んでいます。

 

 

境内 

手水舎 

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境内に入ろうとすると、まず最初にあるのが手水社。

唐破風が付いていますが、凝っているのは屋根だけではありません。

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前後左右すべての梁・桁の上に細かな彫刻が施されています。

上の写真は正面側の蟇股ですが、躍動感あふれる鳩が彫刻されています。

まだ境内に入ってもいないのにこの凝りよう。信濃国一宮の名は伊達じゃないですね。

 

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こちらが境内入り口の鳥居。

訪問したタイミングは日が出たばかりの早朝だったため、ちょうど鳥居の向こうに太陽が見えるアングルで撮れました。

 

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鳥居をくぐった先にも手水があり、こちらは温泉です。冬場の参拝のときは、こちらで手を洗うといいでしょう。

 

神楽殿

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境内を進むと、大きな神楽殿が見えてきます。巨大な神楽殿なのですが、写真だといまいち巨大さが伝わりにくいですね...

なお、写真左に見切れているのは“寝入りの杉”という神木(?)で、いろいろといわれがあるのですが、他に語りたいことが沢山あるのでスルーいたします。

 

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神楽殿の側面。

正面が柱間3間であるのに対し、奥行5間もあって縦長な平面になっています。

そして特筆すべきは屋根の構造。切妻が2つ組み合わさった構造をしています。

 

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背面にも破風があり、上空から見たら棟が十字型になっているようです。

分類としては妻入の切妻のわけですが、案内板によると「三方切妻造」という様式らしいです。聞き慣れない様式ですが、ウェブ検索してみてもこの神楽殿しかヒットしないので、あまり普遍的な様式ではなさそうです。

 

幣拝殿

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神楽殿の横をまわって進むと、後方に楼門のような幣拝殿が鎮座しています。

中央に幣拝殿、その両脇に横長な片拝殿が並ぶ社殿配置は諏訪大社の最大の特徴で、「諏訪造(すわづくり)」と呼ばれる独自の様式です。

諏訪造は下社春宮や上社本宮でも見ることができますが、規模の大きさと豪華さでは秋宮がいちばんだと思います。それと、間近でじっくりと鑑賞できる点も素晴らしいです。

 

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写真中央が幣拝殿。屋根は檜皮葺、平入の切妻で、正面に軒唐破風が付いています。

柱は全て丸柱。屋根の下の組物はそこまで複雑ではないですが、1階・2階ともに虹梁の上には精緻な彫刻がびっしりと配置されています。

幣拝殿、左右片拝殿、先述の神楽殿、4件とも諏訪の名工・立川和四郎(初代)の造営で、いずれも重要文化財。長野県を代表する神社建築であるのはもちろん、東日本でも屈指の名建築といって過言でないでしょう。

 

左右片拝殿

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片拝殿(右)。正面5間、奥行き2間。

圧倒的な威厳を放つ幣拝殿に気を取られがちになってしまいますが、片拝殿もしっかり見ていきましょう。

秋宮と春宮は幣拝殿の造りが非常に似ていますが、片拝殿の造りはぜんぜんちがいます。春宮の片拝殿は奥行1間ですが、こちらは2間あるので、春宮よりも大規模です。

 

宝殿

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片拝殿の端のほうから奥をのぞき込んでみると、千木のついた茅葺の建物が見えます。これは宝殿と呼ばれる建物で、ここに祭神(タケミナカタと八坂刀女)が祀られているとのこと。

諏訪大社は基本的に本殿がないのですが、この宝殿が本殿に相当すると言っていいかもしれません。諏訪大社の神については諸説あるので、断言はできませんが...

 

ここでちょっと気になるのが、幣拝殿が檜皮葺であるのに対して、本殿に相当する宝殿が茅葺きであることです。

神社建築の屋根は檜皮が最高級であり、茅は安価で低級な素材という位置づけなのですが、格上のはずの宝殿は茅葺になっており、神社建築の作法に反しているように思えます。

この理由については、「太古からの屋根材として格式高く使用された例である。古式は高い格式を示す」(出典 三浦正幸『神社の本殿』p.90)という説明があり、私もこの説を支持します。

 

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最後に、幣拝殿の2階部分の図。

諏訪大社は4社ありますが、やはり建築を楽しむなら下社秋宮です。上社・下社という名前だと“下”のほうが格下に感じなくもないですが、決してそんなことはありません!

秋宮は4社の中でも特にアクセスが良く、社殿の立派さも抜群なので、諏訪大社4社のどこか1つだけを見るのなら秋宮をお勧めします

ただ、できれば全部見るか、それが無理ならせめて春宮とセットにして見ていただくのが良いと思います。

 

以上、諏訪大社下社秋宮でした。

(訪問日2019/05/18)