甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【静岡市】静岡浅間神社 その1(総門)

今回は静岡県静岡市の静岡浅間神社(しずおか せんげん-)について。

 

静岡浅間神社は静岡市街の中心地に鎮座しています。

当社は神部神社・浅間神社・大歳御祖神社の3社で構成されています。社伝によると神部神社は第10代崇神天皇の時代の創建、大歳御祖神社は第15代応神天皇の時代の創建とされます。浅間神社は901年(延喜元年)の創建で、醍醐天皇の勅願で富士山本宮浅間大社(富士宮市)が当地に勧請されたのがはじまりです。3社とも平安時代の『延喜式』に記載があり、式内社に列しています。

創建以来、当社は歴代の権力者の崇敬を受け、鎌倉から室町は源氏と足利氏、室町後期から江戸時代は今川氏と徳川氏の庇護を受けました。とくに徳川家康は当社で元服式を行い、のちに社殿を再建したため、江戸時代を通して歴代の将軍から篤く崇敬されました。江戸後期には、1804年(文化元年)から60年の歳月をかけて現在の社殿が再建されました。当社を構成する3社はそれぞれ別の神社というあつかいでしたが、戦後は「神部神社・淺間神社・大歳御祖神社」というひとつの宗教法人となっています。

 

現在の社殿は、前述のとおり江戸後期に60年の歳月をかけて再建された壮麗な建築で、細部の彫刻は諏訪の立川流の工匠によって造られています。とくに拝殿は異例といえる二重の構造になっており、神社建築として最大級の規模と高さを誇ります。境内には主要な3社のほか、4社の境内社が点在し、2件26棟の社殿が国の重要文化財に指定されています。

 

当記事では、アクセス情報および総門などについて述べます。

楼門、回廊、手水舎については「その2」

舞殿、拝殿、本殿については「その3」

少彦名神社、八千戈神社については「その4」

麓山神社、大歳御祖神社については「その5」をご参照ください。

 

現地情報

所在地 〒420-0868静岡県静岡市葵区宮ヶ崎町102-1(地図)
アクセス 静岡駅にてしずてつジャストラインバス乗車、浅間神社バス停下車
静岡ICから車で15分、または新静岡ICから車で20分
駐車場 80台(無料)
営業時間 06:00-18:00
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト 駿河国総社 静岡浅間神社
所要時間 90分程度

 

境内

総門

静岡浅間神社の境内は東向き。入口は市内の幹線道路に面しています。

入口の鳥居は石造明神鳥居。丁字路の道路上に立っています。

 

社頭には総門。向かって右の社号標は「神部神社 淺間神社」。

総門は、三間一戸、八脚門、切妻、銅瓦葺。

1817年(文化十四年)造営。「神部神社浅間神社」23棟のうちの1棟として国指定重要文化財(国重文)*1となっています。

 

正面の柱間は3間。

中央の通路部分には、しめ縄がかけられています。

 

通路部の柱間。

柱はいずれも円柱。柱間は貫でつながれています。

柱上の組物は出三斗。通肘木を介して軒桁を受けています。

頭貫の上の中備えは蟇股。

 

向かって左手前の柱。

頭貫には禅宗様木鼻がついています。

 

内部。写真右が正面側です。

天井はなく、化粧屋根裏です。小さい切妻屋根を前後に2つつなげた構造となっています。

 

背面。

通路部の柱間は、左右の柱間よりも少し広く取られています。

軒下の意匠は正面と同様で、頭貫木鼻や中備えの蟇股があります。

 

左側面(南面)。

側面は2間で、柱間は板壁。中備えは、ほかの面と同様に蟇股です。

妻飾りは二重虹梁。大虹梁(下の虹梁)の中央には蟇股、その左右に笈形付き大瓶束が置かれ、二重虹梁(上の虹梁)を受けています。二重虹梁の上にも笈形付き大瓶束がありますが、大虹梁の上のものとは笈形の造形が異なります。

 

破風板の拝みには蕪懸魚。左右の鰭は波の意匠。桁隠しも波の意匠です。

 

神厩舎など

総門(写真右)をくぐると、右手(北側)に神厩舎(しんきゅうしゃ)が西面しています。

桁行3間・梁間2間、切妻、桟瓦葺。

1816年(万延元年)造営。「神部神社浅間神社」23棟として国重文*2

 

柱は糸面取り角柱が使われています。組物や蟇股といった意匠はありません。

内部には白い馬の像が、縄でつながれて安置されています。

 

神厩舎の反対側、総門の南には名称不明の社殿が西面しています。

切妻、銅板葺。

 

縁側は前面にだけ設けられ、扉の左右に脇障子が立てられています。

柱は面取り角柱が使われ、頭貫には禅宗様木鼻、柱上には出三斗が使われています。

 

名称不明の社殿の向かいには御神水井戸。

切妻、銅板葺。

 

柱は几帳面取り角柱。頭貫には禅宗様木鼻がついています。

柱上は舟肘木。

 

虹梁中備えは板蟇股。

妻飾りには大瓶束が立てられ、その左右は木連格子が張られています。

破風板の拝みには猪目懸魚。桁隠しはありません。

軒裏はまばら垂木で、内部には格天井が張られています。

 

総門などについては以上。

その2では、楼門、回廊、手水舎について述べます。

*1:附:棟札1枚、絵図1枚

*2:附:棟札1枚