世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【寺社の基礎知識】それ、本殿じゃないですよ! 神社の拝殿と本殿のちがいを解説

今回は寺社の基礎知識ということで、神社の拝殿と本殿について。

 

神社に参拝するとき、多くの人は参道の先にある建物の前までいき、賽銭を投げて鈴を鳴らし、二礼二拍手一礼の所作でお参りをしているはずです。

しかし、それだけで帰ってしまっていないでしょうか? もしそうだとしたら、それは非常にもったいないです。なぜなら、貴方がお参りした場所は「拝殿(はいでん)」であり、神が鎮座する「本殿」ではないからです。

 

今回は、本殿と勘違いしがちな「拝殿」と、神社の本体である「本殿」について解説していきます。

 

 

 

拝殿と本殿

拝殿とは

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(拝殿の例:伊夜彦神社)

冒頭に書いたように、神社の参道に沿って進んで行くと、たいてい賽銭箱と鈴のある大きい建物に行き当たります。この建物が最も大きくて目立ち、境内の中心部にあるので、本殿と勘違いしてしまう人も居るかと思いますが、これは「拝殿」です。

拝殿は、読んで字のごとく、参拝者が神を拝むための場所です。また、社務所が入っていたり、祈祷や神事を行う場所として使われたりすることもあります。いずれにせよ、拝殿は“人のための空間”であるので、神を祀る場所ではありません

 

本殿とは

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(本殿の例:筑摩神社)

ほとんどの神社では、拝殿の脇からうしろへ回り込んでみると比較的小さい建物があり、その周辺だけ板塀で囲われています。この建物が「本殿」です。

本殿は御神体を納めるための建物で、言うなればここが“神の空間”になります。

神社で最も重要な建物なので、拝殿よりも高価な素材が使われたり手の込んだ造りがなされており、神社建築で文化財登録されているのは大半が本殿です。そして、本殿からは神社の歴史や祀られた神について推測する手がかりを多く得ることができます。つまるところ、本殿こそが神社建築の最大の見所といって過言でないです。これを見ないで帰ってしまうのは、もったいないとしか言いようがありません。

 

本殿のほうが小さいのはなぜ?

常識的に考えると、いちばん大きい建物が最も重要だと思うのが普通です。実際、寺院建築ではいちばん大きい建物を本堂(あるいは金堂)とするのが一般的です。しかし、神社建築ではその常識が通用しません

なぜかと言うと、神社本殿というものは中に人が入ることが想定されていないからです。

先述したように祈祷や神事は拝殿で行われ、本殿に人が入ることはまずありません。なので、本殿に建物としての実用性は不要なわけで、わざわざ大きく造る理由がないのです。

そして、神社本殿の内部は人目に触れることがないため、装飾のようなものが一切ない無味乾燥な空間になっています。

 

神社本殿の起源は高床式倉庫だとする説がある(※異論もあります)ように、そもそも神社本殿というのは私たちの居住する建物とはコンセプトが根本的にちがっているわけです。このあたりのギャップが、拝殿を本殿だと思いこむ人が少なくない理由なのではないでしょうか。



本殿のない神社もある

たいていの神社は“拝殿のうしろに本殿”といった配置になっているのですが、もちろんこれに該当しない例も数多くあります

代表的な例を挙げると、西日本では大神神社(奈良県桜井市)、東日本だと諏訪大社(長野県諏訪市・下諏訪町)があります。本殿のない神社は何を拝むのかというと、後方の山を御神体として拝んでいる場合が多いです。

 

逆に、拝殿がない神社もあります。代表例を挙げると、伊勢神宮があります。

他にも、日光東照宮のように拝殿と本殿が一体化している神社も存在します。

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(右が拝殿、中央は幣殿、左が本殿:妙義神社)

 

最後に

以上、神社の中心的な建物である拝殿と本殿についての概論を解説いたしました。「神社は、後方の小さい建物が本体」ということだけでもご理解頂ければ幸いです。

神社の参拝の際は、拝殿の前で礼拝をしたら、その奥のほうにある本殿を是非とも見ていって下さい。きっと、より深く神社を知り、楽しむことができるはずです。

 

とはいえ、最も目立つ拝殿は価値がないというわけではなく、拝殿でも国宝や重文指定されているものも珍しくありません。拝殿もまた、神社建築の見所の1つであることは疑いようもないです。この辺は、くれぐれも誤解なきように。

 

以上、神社の拝殿と本殿のちがいについてでした。

 

 

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