甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【逗子市】妙光寺と久木神社

今回は神奈川県逗子市の妙光寺久木神社について。

 

妙光寺

所在地:〒249-0001神奈川県逗子市久木6-1-6(地図)

 

妙光寺(みょうこうじ)は市西部の住宅地に鎮座する日蓮宗の寺院です。山号は法久山。

創建は1471年(文明三年)。当地の名主である松岡雅楽助により、父母の菩提寺として開かれました。本尊の日蓮像は、雅楽助の父の冨永三朗左衛門が、夢告を受けて掘り当てたと伝わります。

 

境内

妙光寺の境内は南東向き。入口は住宅地の生活道路に面した場所にあります。

入口の山門は、四脚門、切妻、桟瓦葺。左右袖塀付き。

 

左手前の控柱。

柱はいずれも円柱で、上端が絞られています。控柱の正面と側面には、頭貫に禅宗様木鼻があります。

柱上の組物は出三斗。

正面の頭貫の上の中備えは平三斗。

 

左側面。

主柱の側面中央部には大きな象鼻がついています。側面上端には頭貫木鼻と台輪木鼻。

主柱の前後(写真では左右)には海老虹梁がわたされ、前後の控柱の組物の上に取り付いています。

 

内部の通路上の扁額は、山号「法久山」。

扁額のかかった部分の欄間には連子が入り、頭貫と台輪の上では平三斗が棟木を受けています。

 

参道左手には鐘楼。

入母屋、桟瓦葺。

 

上端の絞られた円柱が使われ、頭貫と台輪に禅宗様木鼻がついています。

柱上は出三斗。台輪の上の中備えは蟇股です。

 

参道の先には本堂があります。

入母屋、向拝3間 軒唐破風付、桟瓦葺。

 

向拝の中央の柱間。

虹梁は絵様が彫られ、中備えは竜の彫刻。両端の下部には、雲の意匠の持ち送りが添えられています。

唐破風の梁の上には蟇股が置かれています。

 

左右の柱間。

中備えの彫刻は、笹に猪と思しき獣が彫られています。

向拝柱は几帳面取り。正面には唐獅子、側面には獏の彫刻。

柱上の組物は出三斗。肘木に繰型がついています。

 

母屋柱は面取り角柱。頭貫と台輪に禅宗様木鼻があります。

柱上は出三斗。中備えは蟇股。

 

以上、妙光寺でした。

 

久木神社

所在地:〒249-0001神奈川県逗子市久木6-2-39(地図)

 

久木神社(ひさぎ-)は久木地区の住宅地の山際に鎮座しています。

創建は不明。当初は稲荷社として上述の妙光寺の管理下に置かれていましたが、明治初年の神仏分離により独立の神社となりました。その後、近隣の神社を合祀し「稲荷神社」として村社に列しています。1970年に社号を改め、現在の「久木神社」となりました。関東大震災では社殿が倒壊し、現在の社殿が再建されています。

 

境内

久木神社の境内は南西向き。上述の妙光寺から、北へ50メートルほどの位置にあります。

参道には石造神明鳥居がかかっています。扁額は「久木神社」。

 

参道左手には手水舎。切妻、桟瓦葺。

右手には由緒書きの石碑があります。

 

石段の先には拝殿。

入母屋、正面千鳥破風付、向拝1間、桟瓦葺。

 

虹梁は、波に千鳥の絵様が彫られています。中備えは竜の彫刻。両端の持ち送りは波の意匠。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。唐獅子と獏の彫刻がついています。

組物は、出三斗を変形させたもの。

 

向拝柱と母屋は海老虹梁でつながれています。海老虹梁の向拝側には持ち送りが添えられ、波に千鳥が彫られています。

向拝柱の上の手挟は、松の彫刻。

 

母屋柱は角柱。柱上は出三斗と平三斗。

頭貫の位置には唐獅子の木鼻がついています。扁額の上と、隅の柱の斜め方向についており、風変わりな配置です。

 

拝殿の後方には幣殿が伸び、本殿と思しき社殿につながっています。

本殿部分は、切妻、桟瓦葺。

 

母屋柱は円柱。頭貫の位置には、斜め方向に唐獅子の木鼻があります。

妻飾りは二重虹梁。二重虹梁の上では、笈形付き大瓶束が棟木を受けています。

拝み懸魚は鳳凰の意匠。桁隠しは雲の意匠です。

 

本殿の裏手には赤い幟が連なり、草分稲荷という境内社が祀られていました。

 

以上、久木神社でした。

(訪問日2024/01/27)