今回は神奈川県鎌倉市の長勝寺(ちょうしょうじ)について。
長勝寺は市東部の海岸の住宅地に鎮座する日蓮宗の寺院です。山号は石井山。
創建は寺伝によると1253年(建長五年)。当地の領主の石井長勝が自邸に法華堂を造って日蓮に寄進し、本圀寺としたのが当寺の前身のようです。のちに本圀寺は山科(京都市山科区)へ移転しました。1345年(貞和元年)、日静によって本圀寺跡地に寺院が再興され、開基の石井長勝の名前から長勝寺と号しました。その後の詳細な沿革は不明ですが、江戸時代には幕府の庇護を受けています。
現在の境内伽藍の主要部は江戸後期以降のものと思われます。境内南の高台に鎮座する法華堂については室町後期の建築と考えられ、県の指定文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒248-0013神奈川県鎌倉市材木座2-12-17(地図) |
アクセス | 鎌倉駅から徒歩20分 朝比奈ICから車で15分 |
駐車場 | 20台(無料) |
営業時間 | 09:00-16:00 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり |
公式サイト | 長勝寺 |
所要時間 | 15分程度 |
境内
山門
長勝寺の境内は東向き。境内は横須賀線に並行するように伸びています。
駐車場の先には山門があります。
山門は、一間一戸、四脚門、切妻、桟瓦葺。
向かって左の控柱。
柱はいずれも円柱。控柱には唐獅子と獏の彫刻がついています。
柱上の組物は、木鼻のついた出組。
正面の虹梁は菊水の絵様が彫られています。
虹梁の上には台輪が通り、しめ縄がかけられています。
台輪の上の中備えは詰組。
内部の通路上の中備え。
撥束の上に平三斗を置いた意匠が2つ並び、その左右に唐獅子の彫刻が配されています。
右側面(北面)を後方から見た図。
側面は2間。主柱の上には冠木が突き出ています。
側面の台輪の上の中備えは撥束。
妻虹梁の上には笈形付き大瓶束。
大瓶束は、結綿の部分が獅噛の意匠になっています。
左右の笈形は波と雲の意匠。
基壇は四半敷の石畳。禅宗様の礎盤の上に柱が立てられています。
柱の下端は丸く絞られ、銅板の飾り金具がついています。
本堂
山門の先には本堂が鎮座しています。本尊は大曼荼羅。
本堂は、宝形、銅板葺。
手前にある日蓮像と四天王像は、高村光雲の作らしいです。
正面の軒下。扁額は「帝釈尊天」
柱は円柱で、正面の柱間は桟唐戸。
柱は上端が絞られ、頭貫と台輪に禅宗様木鼻がついています。
柱上の組物は尾垂木二手先。
本堂向かって右には、名称不明の堂が南面しています。
扁額には「久遠」とあり、内部には位牌と多宝塔が安置されています。
六角円堂、銅板葺。
法華堂
境内南側の一段高い区画には、法華堂が北面しています。
桁行5間・梁間6間、寄棟、銅板葺。
室町後期の造営と推定されます。県指定有形文化財。
関東の歴史的建築の多くは江戸以降のものであり、それより古い室町時代の建築は貴重です。ただしこの法華堂は造営年がわからず、当初の形態がどこまで保たれているかも不明のため、県指定の文化財にとどまっています。
正面は5間。
柱間は、中央3間は桟唐戸、左右各1間は舞良戸。
母屋柱は上端が絞られた円柱。頭貫と台輪には禅宗様木鼻。
柱上の組物は出三斗。中備えは平三斗が置かれています。出三斗と平三斗は1本の肘木を共有しており、通肘木となっています。
右側面(西面)。
側面は6間。柱間は、舞良戸と桟唐戸のほか、縦板壁が使われています。
縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干はありません。
法華堂向かって右には鐘楼。
宝形、銅板葺。
柱には唐獅子の木鼻がつき、柱上は出組。
軒裏は二軒繁垂木で、禅宗様の扇垂木となっています。
以上、長勝寺でした。
(訪問日2024/01/27)