世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【青木村】 日吉神社 ~信州最大クラス 五間社流造の本殿~

今回は長野県のマイナー観光地ということで、小県郡青木村日吉神社(ひよし-)について。

読みは“ひよし”と“ひえ”のどちらが正しいのか分からなかったのですが、上田地域観光協議会のサイトによると前者が正しいようです。

 

神社本殿の規模は間口の柱間の数で決まり、柱間は1間(一間社)か3間(三間社)とするのが標準です。しかし当然ながら例外もあり、2間や4間、最大規模のものだと11間まで存在します。話を長野県内に限定して調べてみると、柱間5間の“五間社”(ごけんしゃ)が最大のようで、その五間社の本殿が青木村日吉神社に鎮座しています。

日吉神社へのアクセスは、最寄りの別所温泉駅から徒歩1時間程度ですが、上田駅からバスに乗って殿戸バス停で下りるほうが良いでしょう。

車の場合、県道143号線に「県宝 日吉神社」という看板があるのでそれを目印にするといいでしょう。駐車場は、境内の入口に5台分程度あります。

 

今回は道の駅に車を置いて自転車で訪問したのですが、日吉神社への道は「本当にこれで合ってるのか...?」と疑いたくなってしまうような急坂でした。訪問の際は、地図をよく確認して迷子にならないよう注意しましょう。

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境内の入口。小さな石橋と、両部鳥居があります。

また、境内の道路に面した場所に、この日吉神社の由緒が書かれた石碑があります。

 

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舞屋、あるいは神楽殿

屋根は新しめの瓦ですが、柱や梁などの木材はそれなりに古そうです。

 

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こちらは宝物館。中には入れないですが、高さの異なる2つの建物がくっついた形状をしていて、面白いと思ったので撮影しました。

 

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石段を上った先にあるのは拝殿... ではなく、本殿とのこと。

本殿がない神社ならよくありますが、拝殿がない神社は珍しいかも。

 

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そしてこちらが本殿。柱間を数えてみると、たしかに5間あります!

先述のように、神社のほとんどは一間社か三間社なので、この五間社は神社の中でもかなりのレアものです。寺社建築が好きな人ならば、垂涎の物件と言えるでしょう。

屋根は木材の薄板で葺かれており、柿葺(こけらぶき)の五間社流造(ごけんしゃ ながれづくり)です。木階(きざはし:角材の階段)は無く、いわゆる見世棚造(みせだなづくり)。

装飾がほぼ無い質素な造りをしており、室町時代中期のものと考えられています。

 

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軒下。組物も非常にシンプル。江戸のゴテゴテした神社とちがって、室町のすっきりとした神社は見ていて癒されます。

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ちょっと気になったのは垂木の面取り。奥の垂木(地垂木という)は面取りされていないのですが、手前の垂木(飛檐垂木という)は下側の角だけ面取りされています。これはどういう意図でやったのでしょうか? さっぱり見当がつきません...

 

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背面。神社建築のセオリーに基づいて、母屋の柱は円柱(丸柱)です。

写真左端の柱は「床上は円柱だが、床下は八角となっており、これは室町以降の神社建築で見られる手抜きです。右端の奥のほうの柱もそうなっています。しかし妙なことに、写真左から2本目以降の柱は床下まで円柱に成形されており、手抜きをしていません。

これが何を意味するのか私なりに考えてみたところ、2つの説が思い浮かびました。1つ目は、“5間ある母屋のうち、両端の1間は格の低い外陣(あるいは中陣)であるから”という説。2つ目は、“もともと両端の1間は吹き放ちの外陣で、改築の際にここを板で覆って母屋に付け加えたから”という説です。両者とも憶測にすぎないので、ご注意下さい。

 

境内の紹介については以上となります。私のような寺社マニアならば興奮せずにいられない五間社の本殿ですが、意外にも国重文ではなく、県宝指定に留まっています。石碑に書かれた解説を読んでも年代がはっきりしていないところから察するに、建立年の証拠となる棟札が無いためでしょう。とはいえ、日吉神社本殿は他所の国重文にも見劣りしない内容だと思います。

青木村というと国宝の三重塔(通称 見返りの塔)が著名ですが、こちらの日吉神社も素晴らしいので是非ご覧になって欲しいです。

 

以上、日吉神社でした。

(訪問日2019/04/29)