今回は山梨県北杜市白州町下教来石(はくしゅうまち しもきょうらいし)の諏訪神社(すわ-)について。
諏訪神社は白州町地区の国道20号沿線に鎮座しています。
創建および沿革は不明。当初はアマテラスを祀っていたようで、年代不明ですが諏訪大社(長野県諏訪市)の分霊を合祀し、幕末まで諏訪明神と呼ばれていました。江戸前期には幕府から社領の安堵を受けています。もとは御朱印山という場所に鎮座し、1617年(元和三年)に下教来石1番地へ遷座しましたが、1966年に国道20号の拡張のため数十メートルほど北へ遷座し、社殿も現在地へ移築されました。
現在の境内は昭和後期に整備されたもので、近隣から移設されたと思われる石造物が点在しています。県指定文化財の本殿は江戸後期に立川和四郎によって造られたもので、立川流の彫刻で飾られています。
現地情報
所在地 | 〒408-0317山梨県北杜市白州町下教来石22-23-3(地図) |
アクセス | 小淵沢駅から徒歩1時間 小淵沢ICから車で10分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
諏訪神社の境内は南東向き。境内西側は国道20号、東側は集落の生活道路に面しています。
境内南側には石造明神鳥居。扁額は「諏訪神社」。
鳥居の右手には手水舎。
切妻、鉄板葺。
境内の中心部には拝殿。
入母屋、向拝1間、銅板葺。
虹梁中備えは蟇股。
向拝柱は几帳面取り角柱。側面には象鼻。
柱上は出三斗。
母屋柱は角柱。頭貫には拳鼻。柱上に台輪が通っています。
柱上の組物は大斗と肘木を組んだもの。中備えはありません。
母屋の正面は3間、側面は2間。縁側は正面のみ設けられています。
破風の妻面は格子状になっています。破風板に懸魚はありません。
本殿
拝殿の後方には本殿の覆屋があります。
内部には本殿が鎮座しています。
一間社流造、向拝1間 軒唐破風付、こけら葺。
1844年(天保十五年)再建。県指定有形文化財*1。
棟梁は信州諏訪の2代目和四郎こと立川和四郎富昌。諏訪大社上社本宮の幣拝殿を造営した宮大工です。
向拝は1間。
向拝柱は几帳面取り角柱。正面に唐獅子、側面に象の木鼻がついています。
虹梁には絵様が彫られています。眉欠きの下面には錫杖彫が見えます。中備えには鳳凰らしき彫刻がありますが、暗いうえ角度がついていて詳細な観察は難しいです。
向拝柱と母屋とのあいだにわたされた海老虹梁は、竜の彫刻。この部材を竜の彫刻にするのは、立川流でよく見られる技法です。
母屋正面には桟唐戸が設けられています。
桟唐戸の左右の羽目には竜の彫刻。
母屋の手前には5段の階段が設けられています。階段の下の欄間には波の彫刻。
階段と欄間の下には浜床が張られています。
母屋の右側面。
壁面の羽目板には故事を題材にした彫刻があります。
縁側の脇障子にも彫刻があり、こちらは手長という神が題材です。
縁の下は、縁束と斗栱で支えられています。
背面。
母屋柱は円柱で、頭貫に木鼻がついています。
こちらの壁面には唐獅子の彫刻。
縁側は背面以外の3面にまわされています。
母屋柱の床下は八角柱となっています。
柱や縁束は、土台の横木の上に据えられています。
左側面。
こちらも壁面に彫刻があり、大杯をあおる人物が彫られています。
脇障子の彫刻は足長。手長の相方の神のようです。
妻面。
頭貫の上には植物の彫刻があります。柱上の組物は二手先。
妻飾りは見づらいですが笈形付き大瓶束が使われています。
本殿の後方には石祠が並立しています。
おそらく近隣から移設されたものでしょう。
以上、諏訪神社でした。
(訪問日2024/12/14)
*1:附:棟札1枚、他1件