世をひねる

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【青木村】大法寺

今回は長野県青木村の大法寺(だいほうじ)について。

 

大法寺は青木村の北東部にある山際の集落に鎮座している天台宗の寺院です。山号は一乗山。

開基は奈良時代と伝えられ、信州でも屈指の古刹の1つ。境内の最奥部には国宝に指定されている三重塔があり、その端正な美しいフォルムから「見返りの塔」の別名で呼ばれています。ほか、重要文化財に指定されている厨子や仏像もあり、決して規模の大きな寺院ではないものの非常に充実した内容となっています。

 

現地情報

所在地 〒386-1603長野県小県郡青木村当郷2052(地図)
アクセス 八木沢駅から徒歩1.5時間
上田菅平ICから車で30分
駐車場 20台(無料)
営業時間 09:00-17:00(※11月-3月は16:00まで)
入場料 300円、観音堂などの特別拝観は700円
寺務所 あり
公式サイト 【公式】大法寺 国宝 見返りの塔 - 国宝三重塔 大法寺
所要時間 30分程度

 

境内

本堂と参道

大法寺本堂

大法寺の境内および伽藍は南向き。

駐車場から境内へ入ると、最初に本堂が現れます。

本堂は鉄板葺の寄棟(平入)。向拝なし。扁額は「大法寺」で、寺院ですが紙垂(しで:稲妻型の白い紙)がかかっています。

 

大法寺参道

観音堂と三重塔は本堂から少し距離を置いた場所にあり、写真のような参道を数十メートルほど歩きます。

参道の右手に並んでいるのは羅漢の石像。

母の日の少し前の訪問だったからなのか、石像には赤いカーネーションが供えられていて彩り鮮やか。

 

観音堂

観音堂の前には拝観受付があります。これ以降は有料区画となります。

特別拝観(観音堂の内部と三重塔)は700円三重塔のみの場合は300円

大法寺観音堂

観音堂は鉄板葺の寄棟(妻入)。向拝なし。扁額は「開運大非閣」。

右側に重要文化財の札が立てられていますが、重文指定されているのはこの観音堂そのものではなく、内部に鎮座する「厨子及び須弥壇」「十一面観音立像及び普賢菩薩立像」の2件です。

なお、堂内は撮影禁止となっています。

 

厨子及び須弥壇については、両者とも禅宗様の意匠が使われており、厨子は室町時代、須弥壇は鎌倉時代のもの。厨子の屋根にはしゃちほこが乗っており、大法寺公式サイトによると“わが国で鯱(しゃち)が屋上に飾られるようになってから、最初のものではないかといわれています”とのこと。

十一面観音(本尊)と普賢菩薩(脇侍)については平安中期の作風とのこと。前者は像高171cm、後者は107cm。とくに普賢菩薩で国宝・重文指定されているものは全国に10体しかなく貴重だそうです。

 

三重塔(見返りの塔)

大法寺三重塔

境内の最奥には「見返りの塔」の通称で知られる国宝の三重塔が鎮座しています。

三重塔は檜皮葺。3間四方。3層。高さ18.56メートル。

1333年(正慶2年)大阪市天王寺の大巧四郎(だいく しろう)らを当地に招いて造営されたもの。ちなみに、1333年は鎌倉幕府が滅亡した年です。

 

三重塔の軒下

正面から軒下を見上げた図。扁額は「照応」(?)。

軒裏の垂木は、いずれの層も二軒(ふたのき)の繁垂木となっています。

 

三重塔の初重

母屋の周囲には切目縁(きれめえん:壁面と直交に床板を張った縁側)がまわされています。1層目(初重)の縁側は欄干がなく、床下は束で支えられています。2層目と3層目は跳高欄(はねこうらん)がついており、床下は腰組で支えられています。

 

母屋を構成する柱はいずれも通常の円柱。これといって目立つ彫刻や装飾はなく、扉は板戸が使われています。

この三重塔は鎌倉後期のものですが、禅宗様の意匠(桟唐戸や扇垂木など)はまったく使われておらず、古風かつ純粋な和様建築となっています。案内板によると下記のとおり。

この塔が建てられた鎌倉時代から南北朝時代に移る過渡期には、装飾的な彫刻を各所につけるのが通例であるが、この塔では初重の中央間の簡単な蟇股以外、装飾細部を一切用いていない。しかし、それらに見られる手法は正規なものであって地方的なくずれがまったく見られず、中央の工匠が造営したことがうかがえる。

 

三重塔を横から見た図

裏山より三重塔を真横から見た図。

三重塔や五重塔は上の層に行くにつれてだんだん母屋を小さくするのがセオリーですが、この三重塔は1層目が妙に大きく造られているのが特徴的。

案内板によると“これがこの塔の最も大きな特徴であり、形に変化がつき、おちついた形になっている”とのこと。

 

三重塔の初重の軒下

1層目(初重)の軒下。

垂木を受ける桁は持出しされており、組物は二手先(ふたてさき)となっています。

 

三重塔の二重の軒下

2層目(二重)の軒下。

垂木を受ける桁は持出しされていますが、組物は三手先(みてさき)となっています。1層目よりも一手多く持出しされています。3層目(三重)の軒下も同様の構造です。

案内板の解説は下記のとおり。

二重、三重で組物を三手先という最も正規な組み方をしているのに対し、初重だけは少し簡単な二手先にしたので、その分だけ平面が大きくなっている。この手法はこの塔のほかは、奈良の興福寺三重塔があるだけできわめて珍しいものである。

建築的な解説は以上。

 

三重塔の屋根

屋根葺きはヒノキの樹皮を重ねた檜皮葺(ひわだぶき)。

真新しいきれいな檜皮が新緑の野山に映えます。

 

大法寺三重塔

最後に見上げた図。

屋根の大きさや軒の反りは統一感があって非常にバランスが良いのに対し、1層目の母屋が大きいため、独特の遠近感をかもし出しています。

これに気づくと二度見、三度見せずにはいられません。まさに「見返りの塔」の異名に嘘偽りなし。

 

解説は以上。三重塔のほかにも重要文化財が多数あり、東信地方を代表する名刹といえる内容。三重塔については信州の建築物の中でも五指に入る古さなので、古建築めぐりをするのなら必見です。

国宝指定されているほどの物件なので寺社建築に詳しくない人でも充分に楽しめますが、予備知識をつけてから鑑賞すればより一層深く楽しめることと思います。

 

以上、大法寺でした。

(訪問日2019/04/29)

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