今回は京都府京都市右京区花園(はなぞの)の今宮神社(いまみや-)について。
今宮神社は妙心寺の南側の住宅地に鎮座しています。
創建は『百錬抄』(13世紀末の成立)によると1015年(長和四年)。疫病を鎮めるために祀られたのがはじまりとのこと。創建後は一時衰退しましたが、1052年にふたたび疫病が流行し、それを鎮めるため社殿が再建されました。その後は仁和寺の鎮守社となったようで、江戸前期の仁和寺再建にともない、当社も再建されています。当初は花園社、祇花園社(ぎけおんしゃ)と呼ばれていましたが、明治時代には仁和寺から分離され「厄除今宮大明神」と称したようです。
現在の社殿は江戸前期の再建で、桧皮葺の本殿が市の文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒616-8042京都府京都市右京区花園伊町17(地図) |
アクセス | 花園駅から徒歩10分 京都南ICから車で30分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
拝殿
今宮神社の境内は南向き。入口は境内の西側にあり、住宅地の生活道路に面しています。
左の社号標は「村社 今宮神社」。
鳥居は西向きで、石造明神鳥居。扁額は「今宮神社」。貫の下に太いしめ縄がかかり、それを保護するために銅板の屋根がかかっています。
境内の南側には手水舎。
切妻、桟瓦葺。
境内の中心部には拝殿があります。こちらは左側面(西面)。
桁行3間・梁間2間、入母屋、こけら葺。
入母屋破風には木連格子が張られ、破風板の拝みには梅鉢懸魚がついています。
正面の軒下。
柱は面取り角柱。柱間は長押で固定され、中央の1間は少し高い位置に長押が打たれています。
柱上には舟肘木。軒裏は一重まばら垂木。
内部は棹縁天井。
本殿
拝殿の後方には拝所があり、塀に囲われた本殿が鎮座しています。祭神はスサノオ。
本殿は、一間社流造、桧皮葺。
1644年(寛永二十一年)再建*1。市指定有形文化財。
向拝および母屋は正面1間。
母屋の手前には角材の階段が7段設けられ、階段の下には浜床が張られています。
向拝柱は几帳面取り角柱。
向拝柱を几帳面取りするのは、江戸前期の建築にしては新しめの技法に感じますが、案内板*2いわく“向拝等に一部新しい部分がある”とのことで、おそらくこの向拝柱は後世の改変かと思います。
柱上の組物は連三斗。柱の側面についた木鼻が、皿斗を介して組物を持ち送りしています。
海老虹梁は向拝の組物の上から出て、母屋の頭貫の位置に取り付いています。
母屋の正面には蟇股があり、彩色された植物の彫刻が入っています。
向拝の虹梁中備えも蟇股。彫刻の題材は虎。
母屋柱は円柱。側面は横板壁です。
縁側は3面にまわされ、欄干は跳高欄。背面をふさぐ脇障子は、上部の横木の上に彫刻が入っています。
母屋柱は長押と頭貫で固定され、頭貫には拳鼻。
柱上の組物は出三斗。中備えは蟇股。
角度がついていて見づらいですが、妻虹梁の上には豕扠首があります。
その他の社殿
本殿の手前の拝所は、切妻(妻入)、桟瓦葺。
破風板の拝みには、渦と波の彫刻が下がっています。
妻虹梁の上には板蟇股。
内部は化粧屋根裏で、まばら垂木です。
境内の西側には、松尾社が南面しています。
一間社流造、檜皮葺。見世棚造。
簡素な造りの境内社のため、縁側や階段はなく、前方に見世棚を設けた造りです。
母屋柱は円柱、柱上は舟肘木。
妻飾りは豕扠首で、破風板の拝みには猪目懸魚。
以上、今宮神社(花園)でした。
(訪問日2023/02/23)