今回は京都府宇治市の神明神社(しんめい-)について。
神明神社は市南部の市街地に鎮座しています。
創建は社伝によると674年(白鳳三年)で、天武天皇によって栗子山という場所に社殿が造られたのがはじまりらしいです。その後、平安遷都(794年)の折に、当地に伊勢神宮が勧請されたとのこと。平安後期には戦火を受けて荒廃し、1099年(康和元年)に現在地へ移転したようです。史料上では『康富記』の1442年(嘉吉二年)の記事が初出です。また、『看聞御記』の1416年(応永二十三年)の記事に当社と思しき記述があり、遅くとも15世紀前期には成立していたと考えられます。近世の詳細な沿革は不明ですが、明智光秀が山崎の戦い(1582年)に敗れて近江へ逃れる際に、当社に立ち寄ったと伝わります。
現在の境内は、市街地の中に深い社叢が茂り、伊勢神宮を模した神明造の本殿2棟(内宮と外宮)が鎮座しています。ほか、厳島社などの境内社が、境内の各所に点在しています。
現地情報
所在地 | 〒611-0025京都府宇治市神明宮西35(地図) |
アクセス | 新田駅から徒歩20分 宇治東ICから車で10分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | 京都 宇治 神明神社 | 神明皇大神宮 |
所要時間 | 15分程度 |
境内
参道と境内社
神明神社の境内入口は北西向き。めずらしい方角を向いています。
入口には石造神明鳥居。
境内に入ると右手(西側)に池があり、その中の島に厳島神社が北東向きに鎮座しています。
右にある手水舎は、切妻造、銅板葺。
橋の先には木造明神鳥居。扁額は「辨財天」。
厳島神社は、見世棚造、一間社流造、桟瓦葺。
庇の下に吊るされたちょうちんには「厳島弁財天」と書かれています。
向拝柱は角柱、母屋柱は円柱。
妻飾りには豕扠首が使われ、破風板の拝みに懸魚が下がっています。
参道をまっすぐ進んで外宮のほうへ進むと、左手に手水舎と池があります。
手水舎は、切妻造、桟瓦葺。
池は藻隠池(もがくれいけ)という名前があり、山崎の戦い(1582年)で敗れた明智光秀が当地に隠れたと伝えられているらしいです。
外宮
境内の中心部へ進むと、参道左手に外宮本殿が鎮座しています。本殿は南東向き。祭神はトヨウケ、ニニギ、フトダマ。
外宮本殿は、一間社神明造、向拝1間、茅葺。
社記によると1819年(文政二年)再建とのこと。
大棟には外削ぎの千木と、5本の鰹木があります。
正面には1間の向拝が設けられ、流造に似た平面構造。通常の神明造は、向拝や庇を設けません。
向拝柱は円柱が使われています。向拝柱は角柱を使うことがほとんどで、円柱を使うのはめずらしいです。
階段は7段設けられ、昇高欄の親柱は擬宝珠付き。
母屋は正面1間・側面2間。通常の神明造は正面3間・側面2間です。
正面の柱間には格子戸、側面の柱間には横板壁が張られています。
縁側は3面にまわされ、側面後方に脇障子を立てています。
母屋柱は円柱。柱上に梁がわたされ、その上に乗った舟肘木で軒桁を受けています。
妻飾りは豕扠首のような部材が使われています。
母屋側面の室外には棟持柱が立てられ、棟木を受けています。
破風板の拝みの近くには鞭掛(4本の棒)。
大棟には棟覆板があります。
棟持柱、鞭掛、棟覆板は神明造に特有の意匠です。
背面は1間。柱間は横板壁。
内宮
外宮の手前には参道がコの字型に伸び、境内東端の内宮につながっています。内宮本殿も南東向きです。
祭神はアマテラス、田力男、豊秋津大神。
本殿の手前にある中門は、切妻造(妻入)、桟瓦葺。
門扉の上にしめ縄がかかり、「内宮」の扁額が掲げられています。
内宮本殿は、一間社神明造、向拝1間、茅葺。
外宮本殿と同じく1819年再建のようです。
向拝柱は円柱。柱上に舟肘木が置かれ、軒桁を受けています。
階段は7段。欄干は擬宝珠付き。
母屋は亀腹の上に建てられています。
正面1間・側面2間で、側面の室外に棟持柱がある点も外宮と同様。
破風板は、母屋部分と向拝部分とで別の部材になっています。
軒裏は一重の繁垂木。
大棟には内削ぎの千木と、6本の鰹木。
下宮本殿は、千木は外削ぎ、鰹木は5本でした。千木と鰹木のほかは、外宮・内宮どちらも同じ造りとなっています。
本殿周辺の境内社
内宮本殿の手前には、末社を合祀した社殿があります。
見世棚造、六間社流造、桟瓦葺。
柱はいずれも角柱。
母屋正面の扉の上には祭神の名前が書かれており、稲荷社、春日社、天神社などが合祀されていました。
外宮本殿の裏には羽拍子社。祭神はシナツヒコ。
入口には木造明神鳥居。扁額はありません。
羽拍子社本殿は、見世棚造、一間社流造、銅板葺。
大棟には千木が乗り、三つ巴の紋があしらわれています。
柱はいずれも角柱。
妻飾りに豕扠首が使われているほか、めだった意匠はありません。
境内東側の区画には神楽殿があります。
入母屋造、桟瓦葺。
境内東側には裏口と思われる参道があり、生活道路に面した場所に鳥居が立っています。駐車場もこちら側にあります。
鳥居は、神明鳥居と明神鳥居の中間的な造りをしています。
以上、神明神社でした。
(訪問日2024/12/06)