世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【山梨市】大井俣窪八幡神社 ~前編・室町時代の本殿を間近で鑑賞~

今回は山梨県のマイナー観光地ということで、大井俣窪八幡神社(おおいまた くぼはちまん-)について。単に“窪八幡宮”と呼ぶこともあるようです。

当記事では書きたいことがあまりにも多く、かなりの長文になってしまったので、境内の社殿を大まかに紹介する前編と、窪八幡神社の本殿を細かく解説する後編に分割してお送りします。

 

この神社は、山梨県に数ある神社の中でも必見の内容です。私に言わせれば、ここは甲信地方の神社では最高級の穴場です。社殿のすごさについては後で詳細に語りますが、こんな素晴らしい神社でありながらゴールデンウィーク初日の昼間にも関わらず閑散としていて、規格外の豪壮な社殿を心行くままに独り占めできる夢のような空間です。

 

 

現地情報

・所在地:

 〒405-0041

 山梨県山梨市北654

・アクセス:

 東山梨駅から徒歩30分/山梨駅からバスで10分

 勝沼ICから車で30分

・駐車場:5台程度(無料)

・営業時間:随時

・入場料:無料

・社務所:あり(要予約)

・滞在時間:20分程度

 

境内

参道

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文化財だという鳥居があるのですが、そちらはスルーしてまずは門から。檜皮葺(ひわだぶき)の四脚門(よつあしもん、しきゃくもん)です。

察しの良い方なら、この門を見ただけで窪八幡神社が只者ではないことを瞬時に理解できるかと思います。檜皮は神社の屋根の素材として最高格のわけですが、近現代ではメンテナンス性と経済性の都合から銅葺に葺きかえられている場合がほとんどです。そんな檜皮をこのような門にまで使用しているということは、この先にある拝殿や本殿ももちろん檜皮葺であり、非常に篤く信仰を受けている神社であることが推測できます。

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柱が6本ありますが、これは四脚門です。メインの円柱が2本、補助の角柱が4本といった構成で、角柱が4本あるので四脚と呼ばれます。傾向としては神社よりも寺院に採用されることが多いです。

 

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手水舎。さすがにこちらは銅葺きでした。

 

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八幡宮というと神仏習合の傾向が強いですが、ここも例外ではなく、鐘楼(2階建ての鐘つき堂)があります。こちらは檜皮葺。

 

若宮八幡神社 拝殿

窪八幡神社境内には多数の社殿がありますが、恐ろしいことに重文の社殿が6棟もあります。全ての社殿を紹介しているときりがないので、以降は重文の社殿だけに絞って紹介・解説していきます。

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まずは摂社、若宮八幡神社(わかみやはちまん-)の拝殿から。間口四間の入母屋(平入)です。

棟が反っていて、左右の端が高くなっています。たぶんこれは、棟がまっすぐだと目の錯覚で左右が垂れた感じに見えてしまうので、こんな風にしているのでしょう。

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そして間口4間に対して出入口は1間なので、左右非対称の造りになっています。ですが向こうに見える若宮八幡神社本殿と出入口の中心が一致しています。前後と左が吹き放ちなのに、右だけ壁になっているのも奇妙です。

私の推測ですが、この拝殿のいちばん右の1間は、後付けで追加されたものかもしれません。

 

若宮八幡神社 本殿

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こちらが若宮八幡神社の本殿。檜皮葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。正面3間・側面1間、向拝3間。

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軒下。組物も虹梁も装飾がなくてシンプル。室町時代末期の本殿とのこと。なんとも嬉しいことに瑞垣の中に入れます! 室町時代の三間社をこんな間近で拝めるのは、甲信地方ではなかなかありません。

江戸時代にありがちな彫刻まみれの社殿とちがって、無駄な装飾がないぶん神社建築本来の造形美を楽しめます。

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背面。「床上は円柱だが床下は八角柱」という定番の手抜きは室町時代辺りから出現するのですが、この社殿は横着せずにしっかりと床下まで円柱に成形されています。

また、縁側の終端には高欄(手すりのこと)も何もなく、漫然と歩いていたら転落してしまいそう。ちなみに、このような縁側がついた本殿は古いものが多く、この近辺だと熊野神社(甲州市)大宮熱田神社(松本市)など、いずれも室町以前のものです。

 

高良神社 本殿

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メインの本殿は最後のお楽しみに取っておくことにして、お次は末社、高良神社(こうら-)本殿。檜皮葺の一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。正面1間・側面1間、向拝1間。正面側が入母屋のような形状になっているので、隅木入り春日造というタイプです。

春日造(隅木入り)は別に珍しい様式ではないですが、この日は流造ばかり見てきたので、流造以外の本殿を見るとつい嬉しくなってしまいます。母屋の屋根や向拝は反りのついた曲線的な造りで、社叢の緑に檜皮葺のカーブが美しく映えます。

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こちらはホワイトバランスを変えた写真。これといった装飾が見当たらず、質素な外観。

左奥に映っているのは武内大神の本殿です。

 

武内大神 本殿

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武内大神(たけのうちおおかみ)本殿。檜皮葺の一間社流造。正面1間・側面1間、向拝1間。文字通り、祭神は武内宿禰(たけのうちの すくね)です。

木階(きざはし:正面の階段のこと)は9段あり、この規模の社殿にしては段数が多いかも。

 

窪八幡神社 拝殿

さて、ここで摂社末社の紹介がすんだので、やっと本社の窪八幡神社を紹介できます。

写真は窪八幡神社の拝殿です。屋根は檜皮葺で平入の切妻。壁のようにそびえ立っており、あまりにも長大なため、とても一枚の写真には収まりません。

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正面(間口)はなんと十一間、側面(奥行)は三間。あと少しで消失点に達しそうな長さです。こちらもやはり室町時代の様式なので、シンプルな造り。組物も舟肘木(ふなひじき)くらいしか使われていません。

続いて、いよいよ真打ちとなる本殿の紹介に行きたいところですが、文量が多くなってしまったので後編に続きます

後編は更に濃い解説をして行きたいので、当記事で疲れてしまったかたはブラウザを閉じることを推奨いたします...

hineriman.hatenablog.jp

(後編につづく)