甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【彦根市】千代神社

今回は滋賀県彦根市の千代神社(ちよ-)について。

 

千代神社は彦根城南側の住宅地に鎮座しています。

創建は不明。社伝によると第8代・孝元天皇の時代に開かれ、衰退したのち第17代・履中天皇の時代に再興されたらしいです。古代から中世にかけての沿革は不明。当初は姫袋(同市古沢町)に鎮座していましたが、桃山時代に石田三成によって彦根山東側(同市尾末町)へ移転されました。1601年(慶長六年)に、彦根城の築城のため井伊直政によって旧社地の姫袋へ移転となり、以降は彦根藩の崇敬を受けて隆盛しました。もとは千代之宮と呼ばれていたようですが、1869年に現在の「千代神社」に改称しています。戦後は近隣の工場の公害を避けるため現在地への移転が決まり、移転工事は1965年に着工し翌年に竣工しています。

現在の境内は戦後に整備されたものです。社殿のほとんどは近代のものと思われますが、本殿は江戸前期に造られた三間社で、国の重要文化財に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒522-0081滋賀県彦根市京町2-9-33(地図)
アクセス 彦根駅から徒歩15分
彦根ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

参道と拝殿

千代神社の境内は南東向き。住宅地の生活道路に面した場所にあります。

正面の入口は境内西側にあり、石造明神鳥居が西面しています。扁額は「千代神社」。

 

鳥居をくぐると参道が左に折れ、手水舎があります。

入母屋造、銅板葺。

 

木鼻や虹梁といった意匠はありませんが、内部は小組格天井で、欄間に波の彫刻が入っています。

 

参道の先には拝殿。拝殿や本殿は南東向きです。

 

拝殿は、入母屋造、正面千鳥破風付、正面軒唐破風付、銅板葺。

拝殿の正面には向唐破風の庇が設けられ、左右両側面には切妻造の小屋がつながっています。拝殿にしてはやや複雑な造りです。

 

庇の部分の破風板。

破風板には彫金がつき、中央は松、左右は鶴の意匠です。

兎毛通は鳳凰の彫刻。

 

唐破風の小壁には虹梁大瓶束が設けられています。大瓶束の左右の壁面は縦板壁。

頭貫にはしめ縄がかかり、中備えは蟇股。彫刻の題材は唐獅子。

 

庇の正面の柱は円柱です。唐獅子と獏の木鼻がついています。

柱上の組物は連三斗。

 

側面。

柱間は1間で、頭貫の上の中備えは透かし蟇股。

後方(写真右)の柱は角柱で、拝殿本体の縁側の縁束を兼ねています。

 

拝殿正面は3間。

中央の柱間は桟唐戸、左右は半蔀。

 

正面には軒唐破風が設けられ、虹梁大瓶束があります。大瓶束の左右には雲の彫刻。

 

拝殿の母屋の柱は面取り角柱。唐獅子の木鼻があります。

柱間には虹梁と台輪が通り、中備えは蟇股。

柱上の組物は出組。

 

母屋側面。柱間には半蔀と桟唐戸が設けられています。

母屋側面の後方には小屋がつながっています。こちらは角柱が使われ、柱上は舟肘木。縁側はありません。

 

本殿

拝殿の後方には本殿。ただし塀越しに見ることしかできないため、詳細の観察はむずかしいです。

主祭神はアメノウズメ。猿田彦と大物主も配祀されています。

 

本殿は、桁行3間・梁間2間、三間社流造、向拝3間、檜皮葺。

1638年(寛永十五年)再建国指定重要文化財

 

拝殿の影になっていて全体までは見えませんが、向拝は3間あります。

母屋は正面3間・側面2間の構造で、正面の柱間は蔀、側面の柱間は白い横板壁です。

滋賀県によくある前室付きの流造ではなく、通常の三間社流造です。

 

向拝柱は面取り角柱。柱の上部や組物は、桃山風の極彩色に塗り分けられています。

向拝柱の側面には象の木鼻。柱上の組物は連三斗。

母屋柱は円柱で、軸部に長押が打たれ、頭貫に拳鼻がついています。母屋の組物は出三斗と連三斗。

 

ほか、向拝と母屋の中備えには蟇股が使われ、向拝柱と母屋柱とのあいだには海老虹梁がかかっているのが確認できます。

 

破風板は赤く彩色され、猪目懸魚が4つ下がっています。

大棟には鳥衾のついた鬼瓦。

 

境内社

拝殿向かって右側、境内東側には4棟の境内社が並立しています。

向かって右手前から、祖霊社、天満宮、秋葉社、稲荷社。

 

右端は祖霊社。戦没者を祀ったものと思われます。

一間社神明造、銅板葺。

室外には神明造に特有の棟持ち柱が立てられ、縁側をつきぬけて棟木を受けています。

 

破風板には鞭掛がつき、大棟には棟覆板、千木と鰹木が乗っています。

こちらも神明造に特有の意匠です。

 

天満宮、秋葉社、稲荷社は、3棟とも一間社流造、銅板葺。

こちらは天満宮で、向拝柱は角柱、母屋柱は円柱。組物はいずれも舟肘木。

 

秋葉社。

木鼻には唐獅子や象の彫刻が使われ、扁額に隠れていますが向拝の虹梁中備えにも彫刻があります。

 

稲荷社。

こちらは手前に木造明神鳥居がありますが、社殿は簡素です。

柱は向拝・母屋ともに糸面取り角柱。頭貫に拳鼻がつき、柱上は大斗と舟肘木を組んだもの。母屋正面には桟唐戸が設けられています。

 

境内東側にも出入口があり、鳥居が立てられています。

石造明神鳥居で、扁額は「千代神社」。

左の社号標は「縣社 千代神社」。

 

以上、千代神社でした。

(訪問日2025/03/23)