甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【高崎市】八幡八幡宮(上野国一社八幡宮) 前編 神門、鐘楼など

今回は群馬県高崎市の八幡八幡宮(やわたはちまんぐう)について。

 

八幡八幡宮は市西端の丘陵上の住宅地に鎮座しています。正式名は上野国一社八幡宮(こうずけのくに いっしゃ はちまんぐう)

創建は社伝によると957年(天徳元年)で、源頼信が当地に石清水八幡宮を勧請したのがはじまりとのこと。当初は碓氷八幡宮、板鼻八幡宮と呼ばれていました。以降、源頼朝をはじめとする関東の源氏一門の崇敬を受け、鎌倉以降も新田氏、足利氏、武田氏に崇敬されたようです。江戸時代には幕府から社領を寄進されています。

現在の主要な社殿は江戸中期に整備されたもので、拝殿・幣殿・本殿は権現造となっており、市の文化財に指定されています。ほかにも、本地堂を転用した天満宮や、鐘楼もあり、神仏習合の時代を偲ばせます。また、社宝の算額は県内最古のもので、県の文化財となっています。

 

当記事ではアクセス情報および神門、随神門、鐘楼、神楽殿について述べます。

拝殿・幣殿・本殿や、天満宮などの境内社については後編をご参照ください。

 

現地情報

所在地 〒370-0884群馬県高崎市八幡町655(地図)
アクセス 群馬八幡駅から徒歩20分
吉井ICまたは藤岡ICから車で30分
駐車場 50台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 20分程度

 

境内

神門(仁王門)

八幡八幡宮の境内は南向き。境内南の、国道18号に面した場所には大鳥居(一の鳥居)がかかっています。

社頭には神門。通路部の左右には仁王像(平成の再建)が安置されています。

右手前の社号標は「上野國一社 八幡宮」。

 

神門は、三間一戸、八脚門、切妻、銅板葺。

この神門や本殿などの計9棟で市指定文化財となっており、いずれも1750年(文化十一年)または1757年(宝暦七年)の再建のようです。もとは本殿・幣殿・拝殿の1棟だけが指定されており、2023/08/01に追加で8棟が指定されました(高崎市公式サイト*1より)。

 

正面中央の柱間。扁額は退色して判読不能。

柱はいずれも円柱。

正面の柱間には虹梁がわたされ、黒い線で波状の絵様が彫られています。

 

向かって右の柱。

頭貫には拳鼻がついています。

柱上の組物は出三斗。

 

妻飾りは二重虹梁。中備えはありませんが、二重虹梁の上では笈形付き大瓶束が棟木を受けています。

破風板の拝みには蕪懸魚。桁隠しには雲の彫刻。

 

内部は格天井が張られていました。

 

背面。

ほぼ前後対象の構造ですが、背面側は虹梁や木鼻が省略されています。

 

随神門

神門から石段を上った先には、二の鳥居と随神門があります。

二の鳥居は石造明神鳥居。扁額は「八幡大御神」。

 

随神門は、三間一戸、八脚門、切妻、鉄板葺。

市指定文化財。

 

正面中央の柱間には、飛貫と頭貫がわたされています。

頭貫の上には、平三斗が3つ並んでいます。

 

中央左側の柱。円柱で、上端が絞られています。

側面と正面には拳鼻が付き、柱上は出三斗。

 

左側面(西面)。

側面の柱は角柱が使われ、柱上は舟肘木です。

妻飾りは大瓶束。

内部に天井はなく、化粧屋根裏です。

 

背面。

正面から見ると見上げたアングルになるため解りにくいですが、背面から見ると、屋根がむくりのついた曲線になっているのが解ります。

 

境内は高台にあるため、随神門付近から市街地を見下ろすことができます。

鳥居の向こうに見える山は、達磨寺が鎮座する鼻高町地区の丘陵です。

 

鐘楼と神楽殿

随神門をくぐると、左手に鐘楼があります。上の写真は北東から見た図。

入母屋、鉄板葺。

市指定文化財。

 

かつて当社には、別当として神徳寺という寺院が併設されており、幕末までは神仏習合の霊場だったようです。この鐘楼は、そのころのなごりと思われます。

 

柱は円柱で、頭貫と台輪に禅宗様木鼻がついています。

柱上は出三斗。台輪の上の中備えは平三斗。

梵鐘は戦後の再建。もとの梵鐘は、太平洋戦争で供出されたとのこと。

 

破風板の拝みには蕪懸魚。

奥まって見づらいですが、妻飾りに大瓶束が入っています。

大棟は箱棟になっています。

 

随神門の右手には、神楽殿が北面しています。

訪問時は秋祭りのイベントとして餅まきが行われ、神楽殿周辺は地域の住人や子供が集まってにぎわっていました。上の写真は祭事の中休みの最中に撮ったもの。

 

神楽殿は、入母屋(妻入)、銅板葺。

こちらも市指定文化財です。

 

柱は円柱で、正面と側面に拳鼻がついています。

柱上は出三斗。

虹梁中備えは蟇股。

 

右側面(西面)。

正面とほぼ同じ意匠ですが、側面は蟇股がやや簡素なものになっています。

内部は格天井が張られています。

 

神門、随神門、鐘楼、神楽殿については以上。

後編では、拝殿・幣殿・本殿と、天満宮などの境内社について述べます。