今回は長野県諏訪市の諏訪護国神社(すわ ごこく-)について。
諏訪護国神社は諏訪市の中心部にある高島公園の敷地内に鎮座しています。
創建は1900年(明治三十三年)。諏訪地域出身の戦没者を祀るために創られました。
この手の神社の社殿は非常にあっさりしたものが多いですが、諏訪護国神社は当地域に特有の様式の社殿になっているだけでなく多数の彫刻もあり、地域色ゆたかで見ごたえのある造りをしています。
現地情報
所在地 | 〒392-0022長野県諏訪市高島1-20-1(地図) |
アクセス | 上諏訪駅から徒歩15分 諏訪ICから車で10分 |
駐車場 | 高島公園に20台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
境内
神門
諏訪護国神社の境内は北向き。めずらしい方角を向いています。
鳥居は石造の神明鳥居。笠木は円柱が使われています。
鳥居と拝殿のあいだには神門。
一間一戸の四脚門、切妻、銅板葺。
目立った装飾のない簡素な造り。柱はいずれも円柱。
左側面(東面)。写真右が正面側になります。
柱上には組物もなく、ただ梁がわたされているだけ。妻飾りは豕扠首で、この上部に斗と実肘木が使われています。
内部に天井はなく、化粧屋根裏。軒裏は一重のまばら垂木。
神門から見た拝殿。
拝殿と左右片拝殿
神門の先には拝殿(中央)と左右片拝殿が鎮座しています。
これは諏訪大社と同じ社殿配置で、このような配置の社殿は諏訪造(すわづくり)と呼ばれます。ほかの地域では見られない、当地に特有の様式です。
戦没者を祀った神社は全国に多数ありますが、このような独特の様式が採用されたものはめったにないと思います。
また、左右片拝殿の前には立派な御柱が立てられており、この点でも非常に諏訪らしい地域色にあふれる神社といえます。
拝殿は桁行3間・梁間1間、入母屋(平入)、正面千鳥破風付、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。
向拝柱は几帳面取り角柱。
虹梁には唐草が彫られ、中備えは蟇股。
蟇股の左右に置かれた出三斗は唐破風の桁を受けています。
木鼻は正面が唐獅子、側面が象。
作者は不明ですが、題材や作風は立川流に似ていて、ここもやはり諏訪らしい造り。
千鳥破風と軒唐破風。
千鳥破風の拝みからは鰭のついた懸魚が下がっています。
唐破風に下がる兎毛通は、菊の意匠。
鬼板には特に紋はついていません。
向拝柱と母屋は湾曲した海老虹梁でつながれています。
向拝柱の上の手挟は、唐草と繰型がつけられたもの。
母屋柱は円柱。正面と側面は壁がなく、吹き放ち。内部は格天井。
軸部は長押と貫で固定され、頭貫には繰型のついた木鼻。
柱上には台輪がまわされ、組物は木鼻のついた出組。中備えは蟇股。
側面の柱間は1間ですが、組物の配置からして中央の柱を1本省略したような造りをしています。
左右片拝殿は桁行2間・梁間1間、切妻、銅板葺。
上の写真は向かって右(西側)にある片拝殿(左)。神座から見たときに左になるため、こちらが片拝殿(左)です。
屋根は内側(拝殿側)が唐破風で、外側は切妻になっています。
拝殿と同様、3面が吹き放ちで内部は格天井。ほか、木鼻や組物なども拝殿と同様です。
内側の妻壁。
妻飾りはシンプルな梁の上に大瓶束が立てられています。大瓶束は結綿がついていません。
破風板の兎毛通は波の意匠。
台輪の上をよく見ると、なぜか拝殿よりも左右片拝殿のほうが彫刻が凝っています。
蟇股には竹や梅などの植物、桁下の板支輪には竜を題材にした彫刻が見えます。
外側の妻壁。写真は向かって左(東側)にある片拝殿(右)のもの。
こちらの妻飾りは笈形付き大瓶束になっています。
外側は唐破風ではなく切妻で、破風板の拝みには鶴が彫られた懸魚が下がっています。
片拝殿(右)の後方から見た本殿。
本殿は桁行3間・側面2間、切妻、銅板葺。
この手の護国神社でよくある神明造ですが、棟持柱をはじめ各部の意匠が省かれていて、神明造としてはかなり簡素。
最後に諏訪護国神社のはす向かいに立つ高島城天守。
以上、諏訪護国神社でした。
(訪問日2020/11/16)