今回は山梨県南アルプス市藤田(とうだ)の八幡神社(はちまん-)について。
八幡神社は南アルプス市の住宅地に鎮座しています。
創建は境内案内板によると天長年間(824-833)に宇佐神宮から勧請され、鎌倉初期に加賀美遠光によって社殿が建立されたとのこと。その後は武田氏や徳川氏の寄進を受けたようです。
境内は楼門(随神門)があるほか三間社の本殿があり、凝った造形の彫刻を見ることができます。
現地情報
所在地 | 〒400-0334山梨県南アルプス市藤田1205(地図) |
アクセス | 東花輪駅から徒歩40分 南アルプスICから車で5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
随神門
八幡神社の境内は南向き。入口の前は水路で、擬宝珠のついた赤い橋がかかっています。
鳥居は石造の明神鳥居。
参道左手には手水舎。切妻、銅板葺。
随神門は三間一戸、楼門、切妻、桟瓦葺。
柱はいずれも角柱。母屋の下半分は壁がなく吹き放ち。
目立った意匠はありませんが、柱には雲状の持ち送りがついていて、上層の縁側を受けています。
上層。こちらも角柱。中央には格子戸。
縁側は切目縁。欄干は、擬宝珠を簡略化したような意匠。
軒裏は一重まばら垂木。
妻壁。
楼門で切妻というのは、ちょっと風変わりに感じます。
拝殿と本殿
拝殿は入母屋、銅板葺。
拝殿後方には本殿。
桁行3間・梁間2間、三間社流造、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。
造営年は不明。彫刻の意匠から、江戸中期から後期と思われます。
祭神は仲哀天皇、誉田別命、神功皇后。
向拝柱は几帳面取り。
柱の木鼻は正面が唐獅子、側面が獏。良い造形だと思います。この彫刻を大きく撮ろうとしたところ、カメラが動物撮影モードに切り替わりました。
虹梁中備えには竜の彫刻。こちらはあまり良い造形には見えません。
唐破風の下の小壁には、円柱の束。
海老虹梁は大きく湾曲して向拝と母屋をつないでいます。
手挟の彫刻は波に亀。透かし彫りで、力の入った造形です。
母屋正面には三組の扉が設けられています。
手前には角材の階段が5段。縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。
縁側の背面は脇障子でふさがれています。
脇障子の羽目の彫刻は牡丹に唐獅子。
母屋柱は円柱。軸部は長押と貫で固定され、頭貫木鼻は象鼻。
組物は木鼻のついた出組。中備えはなし。板支輪には草花が彫られています。
持ち出された妻虹梁には唐草が彫られ、妻飾りは笈形付き大瓶束。笈形は波の意匠で、前述の手挟に似た凝った造形。
破風板の拝み懸魚は、鶴が題材のようですが一部欠損してしまっています。
背面。三間社なのでこちらも3間。
中央の柱間は壁がなくなっていて、立札のようなもので応急処置的にふさがれています。また、固定のためなのか鉄パイプのつっかい棒が設けられています。
母屋柱の床下は八角形に成形されていました。
最後に左側面(西面)の拝懸魚と大棟鬼板。
鬼板には鬼面。梅干しのような赤ら顔。
鬼面は甲信地方ではよく見かけますが、甲府盆地西部はとくに見かける頻度が高いです。
以上、八幡神社(藤田)でした。
(訪問日2021/01/30)