世をひねる

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【長野市】葛山落合神社

今回は長野県長野市の葛山落合神社(かつらやま おちあい-)について。

 

葛山落合神社は長野市郊外の山間の集落に鎮座しています。

本殿は室町時代の造営で重要文化財、摂社・諏訪社も室町時代の造営で県宝に指定されており、充実した内容となっています。また、両者とも北信地方ではややめずらしい春日造です。

 

現地情報

所在地 〒380-0887長野県長野市入山4518(地図)
アクセス 長野ICまたは須坂長野東から車で35分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道と拝殿

葛山落合神社の鳥居

葛山落合神社の境内は南向き。

鳥居は木製の明神鳥居で、扁額は「葛山落合神社」。

 

葛山落合神社の手水舎

鳥居の右側には手水舎(?)。鉄板葺の切妻。

いちおう水道の蛇口はありますが、屋根の下には岩が置かれています。

 

葛山落合神社拝殿

拝殿は鉄板葺の入母屋(平入)、向拝なし。柱は角柱。

白い幕には真田氏の六文銭の紋。江戸期には松代藩領だったようです。

 

葛山落合神社拝殿の正面軒下

正面の扉の上の梁には派手な龍の彫刻。軒下にも十二支と思しき動物が彫られた蟇股(かえるまた)が並んでいます。

 

葛山落合神社拝殿の軒裏と木鼻

軒裏は一重の繁垂木。柱についている木鼻は象鼻。

 

本殿

葛山落合神社本殿

拝殿の裏には本殿が鎮座しています。国指定重要文化財

本殿はこけら葺きで隅木入りの一間社春日造(いっけんしゃ かすがづくり)。

隅木の楔にあった墨書より、1465年(寛正6年)建立とのこと。屋根は2017年に葺き替えたため、真新しい外観。

 

祭神はイザナギ。造営当時は戸隠神社の一部として岩戸大宮熊野権現と称していたようですが、1794年に葛山落合神社に改称したようです。

 

葛山落合神社本殿の破風

この本殿のわかりやすい特徴が、正面の破風(はふ)。

春日造なので正面側は入母屋のようになっていますが、入母屋破風の内部に格子が張られているのは神社本殿として珍しいです。そして格子の目が斜めになっているのも珍しいです。

 

葛山落合神社本殿向拝の組物と木鼻

正面の軒を支える向拝柱はC面取りされた角柱。室町期のものなので、角部のC面の幅がやや広め。柱の上の組物は連三斗(つれみつど)。

柱の右側には雲状の木鼻がついていますが、その上部に斗(ます)が乗せられて連三斗につながっています。

 

葛山落合神社本殿向拝

向拝を左正面から見た図。

向拝柱をつなぐ虹梁(こうりょう)の上には蟇股。内部がくり抜かれ、彫刻になっています。

このほか、目立った彫刻や装飾は特にありません。

 

葛山落合神社本殿の階段と浜床

正面には木階(きざはし)が5段。その下には浜床が張られています。

縁側は正面と左右の計3面にまわされており、床板が壁面と直交になった切目縁(きれめえん)でした。欄干や脇障子はありません。

 

葛山落合神社本殿の海老虹梁

写真左の向拝柱が角柱であるのに対し、右の母屋柱は円柱。これは寺社建築のセオリー。

 

向拝柱と母屋柱をつないでいる海老虹梁(えびこうりょう)は、やや曲線的なシルエットをしているものの、海老と呼ぶには真っすぐすぎる気がしないでもないです。

海老虹梁の向拝側は、組物の上から出ています。母屋側は、柱から突き出た肘木と斗によって受けられており、あまり神社本殿らしくない構造です。

 

母屋柱の柱上の組物は、通常の出三斗。梁や桁の持出しはありません。

軒裏の垂木は一重の繁垂木で、正面の向拝だけは二軒(ふたのき)になっています。

 

葛山落合神社本殿の背面

春日造なので背面は完全な切妻です。破風板からは懸魚(げぎょ)が3つ垂れ下がっています。

妻壁にはシンプルな豕扠首(いのこさす)。梁も持出しされておらず、これといった意匠のない非常にシンプルなもの。頭貫には木鼻さえついていないという質素さ。

 

葛山落合神社本殿背面の床下

背面の床下。

母屋柱は円柱ですが、床下は八角柱になっていました。これは円柱に成形する手間を惜しんだ手抜き工作で、室町期から出現します。

 

葛山落合神社本殿

全体を総括すると、装飾が少なくて非常に質素な見た目をしていますが、細部の意匠や構造をよく観察してみると意外にオリジナリティや個性を見てとることができ、とても奥ゆかしい本殿だと思います。

境内入口にあるカラーの案内板(長野県教育委員会?)によると

安政2年(1855) 拝殿修理や地盛・本殿地上げ修理

この時、本殿内陣拝殿の改築設計がされたが実現できず修理にとどまった

改築されていたら現在の重文本殿はなかったと思われる

とのこと。もし改築されていたら、このような奥ゆかしい意匠も残らなかったことでしょう。

 

諏訪社

諏訪社

本殿の右隣には諏訪社が鎮座しています。長野県宝

本殿はこけら葺きで隅木入りの一間社春日造

案内板(設置者不明)によると室町後期の様式とのこと。

 

諏訪社の破風

前述の本殿は正面の破風が独特でしたが、こちらの諏訪社の破風は板が張られています。

屋根のこけらからは苔が生えています。

 

諏訪社の向拝

向拝柱は几帳面取された角柱。

柱についた木鼻に斗が乗って連三斗につながっており、ここは前述の本殿と同じ構造。

 

諏訪社

木階は5段、浜床はなし。縁側もありません。

母屋にかけられた白い幕には、諏訪梶の紋が描かれています。

 

諏訪社のつなぎ虹梁

向拝柱と母屋柱をつなぐ梁は直線的なもの。母屋側は頭貫の高さから出ています。

母屋柱の上の組物は出三斗で、梁や桁の持出しはしていません。また、頭貫の木鼻もありません。

 

諏訪社の背面妻壁

背面の妻壁は豕扠首。

上に見切れている破風板には、懸魚が3つ。

 

諏訪社の床下

床下は筋交いがあるだけで、板などで塞がれていません。

母屋柱は床下も円柱でした。

 

向拝柱の木鼻と連三斗の構造や、母屋の頭貫に木鼻がないところが本殿と似通っており、作風はそのままに本殿をグレードダウンさせた感じ。

本殿に対してこちらは県宝指定にとどまっていますが、墨書や棟札などで造営年がはっきりと判れば重文指定されてもおかしくないと思います。

 

以上、葛山落合神社でした。

(訪問日2020/04/14)

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