世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【長野市】祝神社 ~真田十万石の城下にたたずむレア物件「二間社」~

今回は長野県のマイナー観光地ということで、長野市の祝神社(ほうり-)について。

 

祝神社は松代(まつしろ)の市街地の一角に鎮座しており、二間社(にけんしゃ)というちょっとレアな様式の本殿が、いかにも城下町らしい堀と石垣の上に建っている様を楽しむことができます。

ただし、ロケーションは良いものの、松代は城下の町割が色濃く残っているため道路が狭く入組んでおり、車での訪問にはやや注意が必要です。

 

 

 

現地情報

・所在地:

 〒381-1231

 長野県長野市松代町伊勢町567

・アクセス:

 旧松代駅跡から徒歩10分程度

 長野ICから車で5分程度

・駐車場:5台程度(無料)

・営業時間:随時

・入場料:無料

・社務所:あり(要予約)

・滞在時間:15分程度

 

境内

境内入口

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境内の入口。写真を左右に走る通りは、石畳風のコンクリートで舗装されています。冒頭に書いたように道が狭く、車で来たせいで対向車との行きちがいに難儀しました。

鳥居の前には橋がありますが、水路が暗渠化されているためトマソンと化しています。

鳥居はクリーム色に塗装されており、扁額には「祝神社」とありました。

 

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鳥居の右隣に立つ案内板。建築様式についてのくだりは突っ込みどころが散見され、あんのじょう、設置者が明記されていません。

“本殿は一間社入母屋造り銅瓦葺き”とありますが実際は銅板葺の二間社流造(後述)ですし、“拝殿は間口4間・奥行7間”とありますが実際は間口3間です。重要なところがことごとく間違っている...

ただし、ここで述べている本殿と拝殿は、現存の社殿を再建する前のことを言っている可能性も無くはないです。

 

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参道は非常に短いですが境内には多数の摂社末社が立ち並びます。

稲荷、天神、恵比寿、猿田彦、弁天、などメジャーな神々が祀られています。

 

拝殿

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拝殿は桟瓦葺の入母屋(妻入)で、正面3間・側面7間。軒唐破風(のき からはふ)付きの向拝が1間。

大棟と唐破風に載った鬼瓦には、真田氏の紋である六文銭が描かれています。大棟の側面は“なまこ壁”の意匠になっている点が個性的だと思います。

 

拝殿の右側に立っているのは御柱で、この神社は「お諏訪さん」の愛称で地域から親しまれているとのこと。祭神はタケミナカタと八坂刀女のほか、生魂命神(いくたまのみことかみ)という神も祀られているようです。初めて聞いたので“生魂命神”についてウェブで調べてみたのですが、それらしい情報が見つからず、詳細不明です...

 

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明度を変えた写真。

正面側の1間は吹き放ちで、背面側の3間は床が一段高くなった奥間(内陣?)になっています。

拝殿として大規模な部類に入る上、どちらかというと神社よりも寺院っぽい構造に見えます。

 

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向拝の軒下。

存在感あふれる太い虹梁(こうりょう)の上には龍の彫刻が配置されており、両端の木鼻には首を曲げて正面を向く獅子の彫刻があります。

先述のやや疑わしい案内板によると“見事な立川流の彫刻”とのことですが、確かに立川流っぽい題材と配置になっているので、このくだりは信用してもいいかも。

 

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向拝を側面から見た図。

母屋と向拝はまっすぐな虹梁で繋がれており、その中央に束が立っています。そして、束と母屋をつなぐように海老虹梁(えびこうりょう)がかけられています。

ふつう、海老虹梁は母屋と向拝をつなぐものだし、まずこんな場所に束は立てません。他の神社では見られない、変わった構造をしています。

 

本殿

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拝殿の後方には、左右を背面を石垣と水堀に囲われた本殿が鎮座しています。大棟にはやはり六文銭がついています。

松代城からは少し距離のある場所なのですが、なんとなく城の縄張りみたいな雰囲気。

パンフレットによると、拝殿・本殿ともに200年ほど前の造営とのこと。

 

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反対側から見上げた図。母屋の正面に扉が2組あるのが確認できます。

よって、本殿は銅板葺の二間社流造(にけんしゃ ながれづくり)で正面2間・側面1間、正面に向拝1間。

 

向拝の上には龍と思しき彫刻が堂々と配置されており、虹梁の両端は象の彫刻になっています。この辺も、立川流っぽいです。

脇障子の彫刻は、案内板(松代登録文化財の会)によると獅子のようです。

ほか、破風から垂れる懸魚(げぎょ)や、正面と側面の梁の上の蟇股(かえるまた)や、側面の束の左右の飾りなどに彫刻を見ることができます。

 

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背面。

母屋は3本の柱で構成されており、柱間は2つ。江戸時代の造営なので、柱の床下は八角柱になっています。定番の「手抜き」ですね。

 

流造(ながれづくり)という様式は、神社建築では最もメジャーな様式になるのですが、母屋の柱間が2間となる“二間社流造”は一間社や三間社と較べて非常に数が少ないです。

正面に扉が2組ついている本殿を見かけたら、レアな物件なので背面に回るなどして柱をよく確認しておくといいでしょう。

 

境内については以上。

松代城から歩いて来れる距離にあり、すぐ近くには初代藩主・真田信之(幸村の兄)の霊屋が鎮座する長国寺もあり、城下町を散策するついでに訪れるのに丁度良いです。

また、貴重な二間社を見られる神社の中でも、祝神社は特にアクセスしやすい立地にある点でもおすすめできます。

 

以上、祝神社でした。

(訪問日2019/08/11)