今回は大阪府羽曳野市の壼井八幡宮(つぼい はちまんぐう)について。
壼井八幡宮は市東部の台地に鎮座しています。
創建は1064年(康平七年)。河内源氏の源頼義が当地に石清水八幡宮を勧請したのが始まり。創建当時は河内源氏の総氏神でしたが、鎌倉時代は鶴岡八幡宮が総氏神となっています。室町期以降は荒廃したようで、現在の本殿は江戸中期に徳川綱吉の命で再建されたものです。明治時代には八幡神社という社名に改称しています。
境内は本殿のほか、並立する摂社・壼井権現社の拝殿と本殿も江戸中期に再建されたものです。また、境内周辺には源氏にまつわる遺構や石碑があるようで、府の指定史跡となっています。
現地情報
所在地 | 〒583-0844大阪府羽曳野市壺井605-2(地図) |
アクセス | 上ノ太子駅から徒歩25分 羽曳野東ICから車で5分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり |
公式サイト | 壷井八幡宮公式サイト |
所要時間 | 15分程度 |
境内
参道
壼井八幡宮の境内は南向き。境内入口は住宅地の生活道路に面しています。
一の鳥居は石造の明神鳥居。扁額はありません。
急な石段の先には二の鳥居。石造の明神鳥居で、扁額は「八幡宮」。
中門
参道の先には中門。後方に見える屋根は本殿。
壼井八幡宮には拝殿がなく(後述の壼井権現社には拝殿がありますが)、中門が拝殿のかわりの拝所となっています。
中門は一間一戸、四脚門、切妻、檜皮葺。
後述の本殿とともに1701年の再建で、1995年に復原修理を受けています。
正面の軒下。
前方の控柱は几帳面取りで、上端が絞られています。柱上は大斗と実肘木。
内部にわたされた虹梁の中央には、大瓶束が立てられています。
向かって右の側面。
中央に立てられた主柱は円柱。
男梁(妻虹梁)ではなく頭貫のような部材で前後の柱が連結されており、頭貫の下部は繰型のついた女梁が添えられています。
妻飾りは笈形付き大瓶束のような部材ですが、主柱が妻壁まで伸びていて大瓶束はありません。
破風板の拝みには鰭付きの蕪懸魚。
大棟鬼板には徳川氏の三葉葵の紋。
本殿
中門の先には塀に囲われた本殿が鎮座しています。
桁行3間・梁間1間、三間社流造、向拝3間、檜皮葺。
徳川綱吉の命を受けた柳沢吉保により1701年(元禄14年)再建。1995年の復原修理で現在の姿になっています。柳沢吉保は江戸幕府の大老格で、甲斐国を領したことから恵林寺(山梨県甲州市)に墓があります。
「壼井八幡宮境内」として府指定史跡の一部となっているようですが、社殿単体ではとくに文化財指定はされていないようです。
祭神は誉田別命などの八幡三神。
向拝柱は角柱。江戸中期にしては大きめに角面取りされています。
柱上の組物は連三斗。柱の側面に設けられた拳鼻が、巻斗を介して組物を持ち送りしています。
写真左端に見切れている蟇股の彫刻は、おそらく梅に鶯。ウグイスにしてはハトのような体形をしています。
虹梁中備えには蟇股。上の写真の中央に見える蟇股は、松に鷹が彫られています。
向拝の奥の母屋は、正面に3組の扉が立てつけられています。
前面には向拝の幅いっぱいに5段の木階(階段)が設けられています。階段の下には浜床。
向かって左の側面(西面)。
向拝と母屋をつなぐ海老虹梁は、母屋の頭貫の高さから出て、向拝柱の組物の上に降りています。軒裏をかすめるように湾曲しています。
母屋柱は円柱。頭貫には拳鼻。柱上は舟肘木。妻飾りは豕扠首。
破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚が下がっています。
大棟の前面と鬼板には三葉葵。大棟の上には外削ぎの千木と、5本の鰹木が載っています。
壼井権現社
壼井八幡宮の中門と本殿の左手(西側)には、摂社・壼井権現社が鎮座しています。
鳥居は石造の明神鳥居。
壼井権現社の拝殿は入母屋、向拝1間、本瓦葺。
こちらも壼井八幡宮本殿と同様に1701年の再建。
前面には火灯窓が使われ、やや寺院風の外観です。
拝殿の向拝部分。
向拝柱は角面取り。柱上は大斗と舟肘木。
虹梁の木鼻は象鼻、中備えは蟇股。
母屋に掲げられた扁額は「正一位壼井権現」。
拝殿の後方には中門と壼井権現社本殿があります。
中門は一間一戸、四脚門、切妻、檜皮葺。
前述の壼井八幡宮本殿の前にあった中門とほぼ同じ造りをしています。
桁行3間・梁間1間、三間社流造、向拝3間、檜皮葺。
こちらも1701年再建。
祭神は源頼信、源頼義、源義家、源義綱、源義光。源氏三神社のひとつらしいです。
壼井権現社本殿は前述の壼井八幡宮本殿と非常によく似た外観で、両者の差異は蟇股の彫刻の意匠くらいしかありません。あまりにも酷似しているせいで、撮った写真がどちらの本殿なのかわからなくなりそうで困惑しました...
細部については、塀に阻まれてうまく写真が撮れなかったのと、壼井八幡宮本殿とほとんど同じ意匠のため割愛。
以上、壼井八幡宮でした。
(訪問日2021/11/21)