甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【竜王町】鏡神社

今回は滋賀県竜王町の鏡神社(かがみ-)について。

 

鏡神社は町西部の丘陵に鎮座しています。

創建は不明。祭神である天日槍尊が当地に鏡を納めたことが社名の由来とのこと。平安期には牛若丸こと源義経が当地で元服したという伝説があるようです。

境内は拝殿と本殿だけのシンプルな内容ですが、室町期に造営された大型の流造の本殿が国重文に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒520-2573滋賀県蒲生郡竜王町鏡1289(地図)
アクセス 篠原駅から徒歩30分
竜王ICから車で10分
駐車場 なし(道の駅 竜王かがみの里に無料駐車場あり)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

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鏡神社の境内は東向き。境内入口は車通りの多い車道に南面しています。

社号標は「鏡神社」。

 

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境内入口の左手には「源義経 烏帽子掛けの松」。

鞍馬寺を発ち奥州平泉を目指した源義経は道中で鏡神社に立ち寄り、この松に烏帽子をかけて元服したとのこと。

松の木は明治期の台風で折れてしまったため、現在は幹の部分だけの状態。

 

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先へ進むと参道が左に90度折れ、東向きになります。

鳥居は木造の両部鳥居。前後の稚児柱は石造。扁額は「鏡大明神」。

 

手水舎と拝殿

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参道左手には手水舎。

切妻、桟瓦葺。

 

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拝殿は切妻(妻入)、桟瓦葺。

柱間はいずれも吹き放ちで、神楽殿に似た造り。滋賀県内の拝殿でよく見かける構造です。

扁額は「鏡神社」。

 

中門と透かし塀

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拝殿の後方に鎮座する本殿は、中門と透かし塀に囲われています。

中門は唐門(妻入)、桟瓦葺。扉は桟唐戸が使われています。

透かし塀は桟瓦葺。菱形の格子が入っています。

 

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中門の軒下。

柱は角柱。梁の上には蟇股、妻虹梁の上では大斗と肘木が棟を受けています。

 

本殿

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本殿は三間社流造、向拝3間、こけら葺。

造営年は不明。案内板(竜王町教育委員会)によると、蟇股の造りから文安年間(1444-1449)頃の造営と考えられています国指定重要文化財

祭神は天日槍尊、天津彦根命、天目一箇命。

 

桁行3間・梁間2間の母屋に前室を設け、さらに3間の向拝を付加した形式。同町の勝手神社本殿と完全に一致する形式です。

このような前室を設けた流造は、滋賀県内の室町期の本殿に多く見られます。

 

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向拝は3間。

正面の階段は3間の向拝と同じ幅で、横長な階段となっています。

この距離ではわかりづらいですが、向拝柱は角面取りで、室町期のものなので面取りは大きく取られていました。

柱上の組物は出三斗。影になってしまいましたが柱間の中備えは蟇股。

 

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向拝の奥には前室が設けられています。

柱は角柱。正面は格子戸、向かって右側面には両開きの板戸。

正面の柱間には蟇股が配置されており、案内板ではこれを年代推定の根拠としていますが、遠目ではほとんど詳細を観察できず。

 

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後方の母屋を構成する柱は円柱。縁側も一段高くなっています。

3面にまわされた縁側は欄干がなく、床下は縁束で支えられています。後方は脇障子が立てられています。

母屋柱の床下の成形は八角柱に手抜きせず、円柱に成形されています。

 

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角度がついて見づらいですが、母屋柱の上部の組物は大斗・実肘木と舟肘木。斗栱を使っておらず、非常に古風。

妻飾りは豕扠首でした。

破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚が下がっています。

 

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大棟鬼板には鬼瓦。

屋根葺きはこけらが使われ、破風ぎわの箕甲にも追従してやわらかな三次元曲面を形成しています。

 

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全体図。

向拝が3間あるからか、前方の庇が横長でゆったり広々とした印象のバランスだと思います。

 

以上、鏡神社でした。

(訪問日2021/03/12)