今回は静岡県磐田市の淡海国玉神社(おうみ くにたま-)について。
淡海国玉神社は磐田市街にある旧中仙道・見附宿に鎮座しています。
創建は不明。『延喜式』に記載された式内社のひとつで、平安期には確立されていたようです。以降、見附(磐田市見付)には国府が置かれ、遠江国の総社として信仰されています。
現在の境内は旧見附学校の裏手にあり、江戸初期に造営された桧皮葺の本殿が県指定文化財となっています。
現地情報
所在地 | 〒438-0086静岡県磐田市見付2452-2(地図) |
アクセス | 磐田駅から徒歩30分 見付ICから車で5分 |
駐車場 | 旧見附学校に5台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
神門
淡海国玉神社の境内は南向き。境内入口は旧見附学校(左端に見切れている建物)の東側にあります。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「惣社大神」。
左手の社号標は「遠江国総社 淡海国玉神社」。
参道左手には手水舎。切妻、桟瓦葺。
柱は角柱で、内に転びがついています。
軒下には出三斗や唐獅子の木鼻などが使われています。
鳥居の先には門。名称不明のため「神門」としておきます。
一間一戸、四脚門、切妻、桟瓦葺。
柱はいずれも円柱。上端が丸く絞られています。
四脚門は前後の控柱を角柱にすることが多く、控柱を円柱にした例はややめずらしいです。
控え柱の上部には、正面側面ともに拳鼻が設けられています。
側面。
柱をつなぐ頭貫の上には台輪がまわされ、組物が妻虹梁を受けています。
妻虹梁の上の妻飾りは笈形付き大瓶束。笈形には菊と思しき花が彫刻されています。
拝殿
拝殿は入母屋、向拝1間、銅板葺。
1863年再建。市指定文化財。
信濃国・立川流の宮大工である立川昌敬の作とのこと。
大きく反りかえった隅の軒先が印象的。江戸後期にしてはかなりバランスの良いプロポーションだと思います。
拝殿向拝の両脇には、狛犬ならぬ駒兎。
「因幡の白兎」の神話に大国主(この神社の主祭神)が登場することにちなんでいるようです。
向拝柱は几帳面取りの角柱。
側面には見返り唐獅子の木鼻。毛並みもしっかりと造形されていて、睨みが利いていながらもどこか愛嬌のある顔つき。
網がかかっていて見づらいですが、柱上は基部に皿がついた出三斗。
向拝の水引虹梁には唐草が彫られています。
中備えは空間いっぱいに竜の彫刻が配されていますが、金網のせいでよく見えず。
母屋柱は角柱。
柱上の組物は出三斗と平三斗。
中備えには十二支の彫刻が配されているようですが、こちらもよく見えず。立川流は彫刻が見どころのだけに、保護のためとはいえ金網がかかっているのは残念。
左側面(西面)。
壁面は前方2間が引き戸、後方1間が横板壁。
縁側は終端に脇障子が立てられています。欄干はなし。
入母屋破風の拝みには蕪懸魚。
写真右下には後方(右側)に、低い切妻の幣殿が伸びています。
本殿
拝殿の後方には塀に囲われた本殿が鎮座しています。
三間社流造、向拝3間、檜皮葺。
境内案内板(磐田市教育委員会文化財課)によると明暦年間(1655~1657)の再建。県指定文化財。
祭神は大国主ほか15柱とのこと。
向拝柱は几帳面取りの角柱。柱上の組物は出三斗と連三斗。
端の向拝柱の木鼻は、正面が拳鼻、側面が唐獅子。唐獅子の木鼻の頭に巻斗が乗り、連三斗を持ち送りしています。
水引虹梁は無地で、どちらかといえば頭貫に近い外観。中備えの蟇股は、はらわたに鳥獣を題材とした彫刻が入っています。
向拝軒下を側面から見た図。
向拝柱と母屋は湾曲した海老虹梁でつながれています。
海老虹梁は向拝側が水引虹梁の高さから出ていて、下部に繰型のついた持ち送りが設けられています。この持ち送りは寺院風の意匠に見えます。母屋側は頭貫の上に取りついていて、向拝側と母屋側とでかなり高低差が大きいです。
向拝の下。
正面には角材の階段が5段。昇高欄は親柱に擬宝珠がついています。
階段の下には正面側にのみ浜床が設けられています。
母屋正面は、三間社なので柱間が3つ。中央には桟唐戸、左右の柱間には蔀戸が立てつけられています。
頭貫の上の中備えは蟇股で、こちらも彫刻が入っているのですが、陰になってしまいよく見えず。
母屋側面。
前方の柱間は引き戸、後方は横板壁になっています。
縁側は切目縁が4面にまわされ、欄干は跳高欄。背面側には脇障子が立てられ、羽目板には弓を持った武者が彫られています。題材が誰なのかは不明。
頭貫木鼻は象鼻と拳鼻。中備えの蟇股には、植物を題材にした彫刻が入っています。
柱上の組物は連三斗と平三斗。
妻飾りはシンプルな妻虹梁と笈形付き大瓶束。
背面の軒下。
組物と桁のあいだにはさまる肘木は、1本の通し肘木になっています。
頭貫木鼻もやや風変わりな繰型がついています。
背面。こちらにも縁側がまわされています。
三間社なので背面も3間。柱間は横板壁。
母屋柱は床下も円柱に成形されていました。
破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚。
大棟鬼板には、六角形の見慣れない紋が描かれていました。
以上、淡海国玉神社でした。
(訪問日2021/03/20)