今回は滋賀県竜王町の勝手神社(かって-)について。
勝手神社は町南部の住宅地に鎮座しています。
創建は不明。社伝によれば859年(貞観元年)に奈良県吉野町の勝手神社から勧請されています。
境内には桧皮葺の大規模な本殿が鎮座しており、室町前期の造営のため国重文に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒520-2541滋賀県蒲生郡竜王町岡屋1347(地図) |
アクセス | 竜王ICから車で5分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
勝手神社の境内入口は住宅地の生活道路に面しています。境内は南東向き。
一の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「勝手神社」。東向き。
参道を進むと右に90度折れた先に二の鳥居があります。
石造の明神鳥居。扁額は「勝手神社」。
二の鳥居の左手には手水舎。
切妻、桟瓦葺。
虹梁には唐草が彫られ、中備えは蟇股。木鼻は拳鼻。
妻壁には渦状に彫刻された蟇股。
破風板の拝みには鰭のついた蕪懸魚。
拝殿
拝殿は入母屋(妻入)、正面軒唐破風付、銅板葺。
配置や構造からして神楽殿に見えますが、近隣(湖東から湖南にかけての地域)の拝殿はこのような造りのものが多いです。
扁額は「勝手神社」。
柱は角柱。柱間には斜め格子の戸が立てつけられています。
軒裏は二軒まばら垂木。
中門と透かし塀
拝殿の後方には、中門と透かし塀に囲われた本殿が鎮座しています。
本殿はもちろんのこと、中門と透かし塀の屋根も檜皮葺となっています。
中門は一間一戸、切妻、檜皮葺。
組物は女梁(実肘木)と舟肘木だけが使われ、シンプルな意匠となっています。
妻壁には笈形付き大瓶束。
天井はなく化粧屋根裏です。
本殿
本殿は三間社流造、向拝3間、檜皮葺。
棟札より1400年(応永7年)上棟。国指定重要文化財。
祭神は案内板(滋賀県教育委員会)によると受鬘之神(うけかずらのかみ)。
母屋は桁行3間・梁間2間で、その前方に前室を設け、さらに前方に庇を伸ばして3間の向拝とした構造。
案内板(竜王町教育委員会)によると、滋賀県の中世の神社本殿に多い構造とのこと。同町の苗村神社西本殿(国宝)もこれに似た構造になっています。
向拝は3間。
柱間には虹梁がわたされ、中備えに蟇股が配置されています。
向拝柱は角面取り。室町前期のものなので、面取りの幅がとても大きいです。
柱上の組物は連三斗。
蟇股のはらわたには彫刻があり、草花らしきものが彫られています。題材はよく解りませんが、室町前期にしては非常に洗練されていて良い造形だと思います。
組物の上では小ぶりな手挟が軒裏を受けています。手挟には唐草の繰型がついています。
向拝柱と母屋をつなぐ懸架材はありません。
正面には角材の階段が6段。
階段の下には浜床。
前室は角柱が使われ、柱間には斜めの格子が張られています。
角柱は向拝柱と同様に、大きく面取りされていました。
縁側はくれ縁が3面にまわされています。欄干は跳高欄。
神座のある母屋(写真左奥)は縁側が少し高くなっています。
縁側の終端には脇障子。当然ながら彫刻の類はありません。
縁の下。縁束は角柱。
前室の柱の床下は角柱、母屋柱の床下は円柱。
「床下の成形を八角柱で止める」という手抜き工作は室町期から出現しますが、この本殿は室町の前半のもののため、そのような手抜きはなされていません。
左側面(西面)の壁面。
母屋柱は円柱。前方(写真右)の柱間には両開きの板戸が立てつけられています。
柱の上部は長押で固定されています。頭貫は見えず、木鼻はありません。ここは非常に古風です。
柱上の組物は、中央は平三斗、前後は連三斗と出三斗を組み合わせたものとしています。また、組物と梁を仲介する実肘木は小さくて目立ちません。
組物のあいだに中備えはありません。
妻壁には無地の妻虹梁がわたされ、妻飾りには豕扠首が使われています。
本殿の左右には境内社。
両者とも一間社流造、見世棚造、銅板葺。
以上、勝手神社でした。
(訪問日2021/03/12)