甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【岡谷市】東堀正八幡宮(柴宮)

今回は長野県岡谷市の東堀正八幡宮(ひがしぼり しょうはちまんぐう)について。

 

東堀正八幡宮は市東部の住宅地に鎮座しています。別名は柴宮(しばみや)

創建は不明。社殿は本殿こそ標準的な規模ですが、拝殿は当地に特有の諏訪造という構成になっているだけでなく、大隅流の工匠による彫刻を見ることができます。

 

現地情報

所在地 〒394-0083長野県岡谷市長地柴宮1-4(地図)
アクセス 下諏訪駅から徒歩30分
岡谷ICから車で10分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

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境内はうっそうと茂った社叢の中にあり、周囲は住宅地なので遠目にもその場所がすぐ分かります。境内は南向き。

入口には石造の明神鳥居。扁額はなし。右の社号標は「東堀正八幡宮」。

 

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参道の左手には手水舎。切妻、銅板葺。

懸魚、豕扠首(いのこさす)、木鼻といった意匠が使われています。

水は出ていませんでした。

 

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手水舎の蟇股。題材は菊で、その周囲を水引が囲っています。

内部に天井はなく、化粧屋根裏。軒裏は繁垂木。

 

舞屋

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参道の先には舞屋。桁行3間・梁間3間、寄棟(妻入)、鉄板葺。

案内板(岡谷市教育委員会)には妻入とあるので、上の写真(東面)は右側面で、写真左側の南面が正面です。

建立年代については“虹梁の絵様などから拝殿の建立に近い安永期頃(1772~1780)の建築と考えられる”とのこと。

 

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正面(南面)の虹梁。唐草が彫られており、この意匠から「拝殿とほぼ同じ年代のものである」と推定されているようです。

柱はこの手の舞屋や神楽殿にしてはめずらしく、円柱が使われています。

 

軒は桁から腕木を伸ばし、小天井を張っています。わりとよく見る造りで、一般的には出桁(だしげた)と言うと思うのですが、案内板によると「せがい造り」なる技法とのこと。

 

拝殿

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境内の中央には拝殿(写真中央)および左右片拝殿が鎮座しています。

諏訪大社の上社本宮幣拝殿や下社(秋宮と春宮)幣拝殿も同様の配置をしており、このような配置の社殿を諏訪造(すわづくり)といいます。諏訪地域に何件かあるだけで、他地域ではほぼ見られない造りです。

 

拝殿は入母屋(平入)、正面千鳥破風付、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。

案内板によると棟札より1766年(明和三)建立。棟梁は山田清五良信金、彫物師は大隅流の伊藤儀左衛門。

 

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向拝柱は几帳面取り角柱。木鼻は正面が唐獅子、側面が獏。

虹梁には唐草が彫られ、中備えは中央が竜、その左右では大瓶束が唐破風の桁を受けています。唐破風の下の小壁は、雲と唐獅子。破風板の兎毛通は鳳凰。

 

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向拝柱と母屋はゆるやかにカーブした海老虹梁でつながれています。

向拝の軒裏の垂木がカーブした部分に添えられている手挟は、菊の葉が籠彫りになっています。

 

母屋柱は円柱。柱上には台輪がまわされ、台輪と頭貫に木鼻がついた禅宗様木鼻になっています。

台輪の上に置かれた組物は出組(一手先)。

扁額は「八幡宮」。

 

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拝殿の左右には片拝殿が配置されています。こちらは向かって右側(東側)のもの。

片拝殿は桁行1間・梁間1間、切妻(唐破風)、銅板葺。

柱は円柱。頭貫には象鼻。柱上には台輪がまわされ、組物は出三斗、中備えは巻斗と実肘木。

屋根は側面から見ると唐破風の形状にカーブしており、拝みから下がる兎毛通は波の意匠が彫られています。

 

柱間は正面と左右が吹き放ちで、床と高欄は階段と昇高欄を介して拝殿とつながっています。

 

本殿

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拝殿の後方には板塀に囲われた本殿が鎮座しています。

一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)、銅板葺。

案内板によると棟札より1741年(寛保元)建立。棟梁などについての記述はありませんでした。

祭神は誉田別命などの八幡神と思われます。

 

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破風板からは4つの懸魚が下がり、いずれも蕪懸魚をベースにした形状ですが、彫りが繊細です。

向拝については木鼻と蟇股が確認できましたが、正面から見られないため題材などはわからず。

 

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母屋柱は円柱で、軸部は長押と貫で固定されています。頭貫の木鼻は拳鼻。

中備えは蟇股で、はらわたには彫刻が入っています。近くで見られないので題材がよく分からないですが、案内板によると“日月に桐花・菊花を配した幟旗のような珍しい主題”であり“18世紀中頃、転換期の新しい試みが読みとれる”らしいです。

 

組物は出組。持ち出された妻虹梁の下には軒支輪。妻虹梁の上では大瓶束が棟を受けています。

 

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背面。こちらは中備えの蟇股がありません。

縁側は切目縁が3面にまわされ、背面は脇障子でふさがれています。脇障子に彫刻はありません。

母屋柱の床下は、円柱の成形を八角形に手抜きしていました。

 

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最後に拝殿の周囲の境内社。多数の境内社が並立していて、そのすべてに4本の御柱が立てられています。

諏訪地域ではよく見る光景ですが、これほど数が多い場所はなかなかないと思います。

 

以上、東堀正八幡宮(柴宮)でした。

(訪問日2019/04/20,2020/01/03)

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