甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【岡谷市】小口薬師堂 ほか2件

今回は長野県岡谷市の小口薬師堂などの小ネタについて。

 

御社宮司神社

所在地:〒394-0034長野県岡谷市湖畔1-26(地図)

 

御社宮司神社(みしゃぐじ?-)は岡谷の中心市街に鎮座しています。

創建は不明。社名から諏訪大社と関連があると見ていいでしょう。社殿については拝殿と本殿に多くの彫刻が使われており、規模のわりに豪華な造りをしています。

 

境内

f:id:hineriman:20201109122055j:plain

御社宮司神社の境内は南向き。車道に面した場所に入口があります。

鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「御社宮司神社」。

 

f:id:hineriman:20201109122112j:plain

拝殿は入母屋(平入)、正面千鳥破風付、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。

 

f:id:hineriman:20201109122125j:plain

向拝は大量に彫刻が配されていて豪華。

虹梁には波の彫刻が浮き彫りになっており、木鼻は虹梁の彫刻とひとつづきになるような構成。

虹梁中備えは竜と天女が相対する構図。上の小壁には大瓶束が立てられ、左右には唐獅子の彫刻。

 

f:id:hineriman:20201109122149j:plain

拝殿の後方には覆い屋がかけられた本殿が鎮座しています。

本殿は一間社流造、向拝軒唐破風付、こけら葺?。

軒唐破風のついた流造は立川流・大隅流でよくありますが、造営年や棟梁は不明。

紫の垂れ幕は諏訪梶の紋なので、祭神はタケミナカタなどの諏訪神と見てよさそうです。

 

f:id:hineriman:20201109122214j:plain

母屋の縁の下だけでなく、階段の下や浜床の下まで腰羽目がついています。いずれも波の意匠。

 

f:id:hineriman:20201109122239j:plain

右側面(東面)の縁の下は「牡丹に唐獅子」。

母屋壁面にも羽目がついているのですが、暗くて題材がまったくわからず。

背面はこれといった意匠がなくあっさりしていますが、母屋柱は床下までしっかりと円柱に成形されています。

 

あまり古いものではなさそうですが、彫刻が多用されて手の込んだ本殿なので、覆いのせいでほとんど見えないのが非常に惜しいです。

 

以上、御社宮司神社でした。

 

小口薬師堂

所在地:〒394-0022長野県岡谷市銀座2-15-11(地図)

 

小口薬師堂(おぐち やくしどう)は岡谷市東部の市街に鎮座しています。

創建は不明。薬師堂本堂は名工・立川和四郎の作で、その軒下では精緻な彫刻を見ることができます。

 

境内

f:id:hineriman:20201109122530j:plain

小口薬師堂の境内は南向き。境内は幹線道路の交差点の一角にあります。

本堂は入母屋(妻入)、向拝1間・軒唐破風付、銅板葺。

1834年(天保十四年)の再建。棟梁は2代目和四郎こと立川和四郎富昌(当時60歳)で、彼の円熟期の作といえます。

内部には薬師如来が祀られているほか、聖観世音菩薩もあわせて祀られているとのこと。

 

f:id:hineriman:20201109122612j:plain

f:id:hineriman:20201109122623j:plain

向拝柱は几帳面取り角柱。木鼻は正面が唐獅子、側面が象。

虹梁中備えには何かの故事を題材にしたと思われる彫刻がありますが、題材不明。その上では笈形付き大瓶束が唐破風の棟を受けています。

 

f:id:hineriman:20201109122640j:plain

向拝柱と母屋は湾曲した海老虹梁でつながれています。手挟は雲状の意匠で、あまり立川流らしくない古風な意匠です。

 

母屋の扁額は「薬師如来 聖観世音」。

母屋柱は円柱で、頭貫には雲状の木鼻。柱上には台輪がまわされ、組物は持出しのないふつうの三つ斗が使われています。

軒裏は二軒の平行繁垂木。

 

f:id:hineriman:20201109122654j:plain

無住のようですが境内には鐘楼があります。入母屋、銅板葺。

几帳面取りの柱の上に台輪がまわされ、突き出た台輪の下部に頭貫木鼻が添えられていて、禅宗様の木鼻のようになっています。

柱上には出三斗、中備えは蟇股。

 

以上、小口薬師堂でした。

 

賀茂神社(小口)

所在地:〒394-0022 長野県岡谷市銀座1-4-7(地図)

 

賀茂神社(かも-)は市街地東部の小口(おぐち)地区に鎮座しています。

創建は不明。なお、小口地区と隣接する小井川地区にも同名の神社がありますが、関連性は不明です。

 

境内

f:id:hineriman:20201109123155j:plain

賀茂神社の境内は南向き。

鳥居は石造の明神鳥居。黒い石質の材が使われているのが特徴的。

 

f:id:hineriman:20201109123230j:plain

拝殿は入母屋(平入)、向拝1間、銅板葺。

賀茂神社なので諏訪神が祀られているわけではないと思うのですが、拝殿の後方には立派な御柱が立てられています。

 

f:id:hineriman:20201109123246j:plain

向拝柱は几帳面取り角柱。柱上には皿付きの出三斗。木鼻は側面に拳鼻。

中備えの蟇股には立川流・大隅流がよく題材にする宝尽くしが彫られていますが、誰の作かは不明。

母屋の扉の上の扁額は「賀茂神社」。

 

f:id:hineriman:20201109123314j:plain

拝殿の後方には板塀と覆い屋に囲われた本殿が鎮座しています。

一間社流造、こけら葺。造営年不明。

本殿のサイズのわりに大きくて高い基壇に乗せられています。紫の垂れ幕には梶の葉と思しき紋が見えます。

 

以上、賀茂神社(小口)でした。

(訪問日2020/01/03)