今回は山梨県南アルプス市の諏訪神社(すわ-)と長谷寺(ちょうこくじ)について。
現地情報
所在地 | 〒400-0204山梨県南アルプス市榎原442(地図) |
アクセス | 竜王駅または塩崎駅から徒歩1時間 白根ICから車で5分 |
駐車場 | 3台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
寺務所 | あり(要予約) |
公式サイト | なし |
所要時間 | 15分程度 |
諏訪神社(上八田)
諏訪神社(すわ-)は上八田(うえはった)の集落に鎮座しています。
後述の長谷寺ともかかわりの深い神社で、長谷寺とともに近在の村落の鎮守とされたようです。
参道と随神門
諏訪神社の境内は南向き。
入口の鳥居は石造の明神鳥居。扁額には社名ではなく梶の葉の紋が描かれていました。
案内板(氏子総代会)によると鳥居は1678年のものとのこと。
境内入口。社号標は「諏方神社」。
随神門は桟瓦葺の切妻。正面3間・側面1間。三間一戸。
拝殿と本殿
拝殿は桟瓦葺の入母屋(平入)。向拝1間。
大棟の紋は諏訪梶と武田菱。
向拝柱は妙に太い几帳面取り角柱。すぼまった上端に虹梁(こうりょう)がわたされています。
虹梁の両端の木鼻は唐獅子。上の中備えは竜。
拝殿の裏には本殿。鉄板葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。
案内板によると1702年(元禄十五年)に本殿が造営されたという記録があるようで、そのときのものと思われます。
祭神はタケミナカタとアマテラス。
正面側(写真右)の軒裏は垂木が三重。
写真右端の向拝柱には唐獅子の木鼻がつけられ、柱上では牡丹と思しき花が彫刻された手挟(たばさみ)が垂木を受けています。
写真中央の母屋は、柱上の組物によって妻虹梁が持出しされています。また、柱間にも組物が使われています(詰組)。
持出しされた妻虹梁の上には笈形(おいがた)付きの大瓶束(たいへいづか)が棟を受けています。
向拝や妻壁の彫刻からして、江戸中期あたりの作風と見ていいでしょう。
縁側は切目縁(きれめえん:壁面と直交に床板を張る)が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。背面側は脇障子でふさがれていました。縁の下は縁束で支えられています。
右後方から見た背面(北面)。
母屋柱の床下は八角柱になっていました。
以上、諏訪神社(上八田)でした。
長谷寺
長谷寺(ちょうこくじ)は諏訪神社と隣接する真言宗の寺院です。山号は八田山。
創建は奈良時代、行基による開基と伝えられています。伽藍は山門と本堂があるだけの内容ですが、本堂は室町後期の造営であることがわかっており国重文となっております。
山門
長国寺の境内は南向き。前述の諏訪神社から車道をはさんですぐ裏手にあります。
山門の右に立つ寺号標は「八田山 長谷寺」。
山門は銅板葺の切妻。正面3間・側面2間。柱は円柱。三間一戸。
あまり派手な装飾のない山門ですが、貫や梁が複雑にわたされていて意外に見応えがあります。
正面側の1間は壁のない吹き放ち。柱上の組物は出組で、桁が持出しされています。
右側面(東面)。
妻の梁も出組で持出しされており、その上には出三斗の組物と板蟇股(いたかえるまた)。
本堂
本堂は、桁行3間・梁間3間、入母屋、向拝1間、銅板葺。
案内板(山梨県・南アルプス市教育委員会)によると、墨書銘より1524年(大永四年)の再建であることが明らかとのこと。国指定重要文化財(国重文)。
本尊は行基の作といわれる十一面観音。
向拝の軒先は2つの角柱(向拝柱)で支えられています。角柱はC面取りされており、C面の幅がやや大きめ。
2つの向拝柱は虹梁でつながれ、虹梁の中央部では鰐口が吊るされ、上の中備えにはシンプルな蟇股が置かれています。
向拝柱の柱上の組物は連三斗(つれみつど)で、虹梁の両端の木鼻に載せられた皿斗(さらと)も連三斗を受けています。
向拝柱と奥の母屋(身舎)をつなぐ梁は、カーブしていない直線的なもの。
軒裏は二軒のまばら垂木。
写真左の母屋は円柱で構成され、柱上の組物は平三斗(ひらみつど)。正面の間口は2つ折りの桟唐戸が立てつけられています。
扁額は「長谷寺」。
左側面(西面)。
母屋を構成する円柱は貫でつながれ、頭貫には雲状の木鼻がつけられています。貫の柱間には蓑束(みのづか)。
正面側(写真右)の柱間は引き戸になっており、ほかの柱間は壁板が縦方向に張られています。
背面(北面)
壁と直交に板を張った切目縁が前後左右の計4面にまわされています。この写真には写っていないですが、欄干は擬宝珠付き。
大棟は箱棟になっています。
破風板からは懸魚、入母屋破風の内部は格子。
なお、内部にも特色があるようですが、堂内には入れません。
堂内の様子については案内板に説明があります。
本堂内部は四天柱が立てられ、その内側を内陣、外側を外陣とする。内陣後方に来迎壁を張り、その前に禅宗様仏壇を据え、壇上に本尊を安置する妻入入母屋厨子を置く。厨子内には附指定の本堂嘉永二年(一八四九)再興棟札も納められている。内陣には各所に彩色が施されており、柱や貫には黒地に丹が塗られ、斗栱内側に彩色、天井格間には絵が描かれている。厨子も黒と丹の彩色のほか、壁から斗栱にかけて花や花唐草などの文様が彩色されている。
以上、長谷寺でした。
(訪問日2020/05/24)