今回は長野県長野市の蚊里田八幡宮(かりたはちまんぐう)について。
蚊里田八幡宮は長野市街北部の住宅地に鎮座しています。
鎌倉期からの歴史がある神社のようで、境内の中央には派手な彫刻で装飾された拝殿が立っています。本殿については覆い屋の内部にあり、観察することはできません。
現地情報
所在地 | 〒381-0084長野県長野市若槻東条1313(地図) |
アクセス | 三才駅から徒歩40分 須坂長野東ICから車で5分 |
駐車場 | 10台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | あり(要予約) |
公式サイト | 蚊里田八幡宮公式HP |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
蚊里田八幡宮の境内は南向き。
入口の鳥居は木製の赤い両部鳥居。庇の下の扁額は「蚊里田八幡宮」。
拝殿
石段を登った先には拝殿があります。
拝殿の前のスペースが狭く、真正面からだと全体が収まらないため下のような左側からのアングルとなりました。
拝殿は銅板葺の入母屋(平入)、正面に千鳥破風(ちどりはふ)。正面3間・側面2間で、軒唐破風(のき からはふ)の向拝1間。
全方向に壁がなく吹き放ちで、柱はいずれも角柱。欄干は擬宝珠付きで、切目縁が3面にまわされています。拝殿というよりは神楽殿や舞屋のような構造です。
長野市近辺の神社では壁のない拝殿が多々ありますが、その中でも蚊里田八幡宮の拝殿は規模が大きくて豪華な造りをしています。ご覧のように屋根の構造が複雑で、ボリュームのある重厚な外観。
向拝の軒下。紫色の幕には三つ巴の紋。
写真中央の梁には波の意匠が立体的に彫られています。梁の上では唐獅子にまたがる仙人の彫刻。
梁の両端の木鼻は、正面側は唐獅子、側面は象が彫刻されています。
両者とも木材の質感を生かした流麗な造形。立川流や大隅流の宮大工の手によるものでしょうか?
彫刻の作風から推察すると、この拝殿の造営は江戸後期から明治期あたりでしょう。
向拝と母屋をつなぐ梁。写真右側が母屋、左側が向拝になります。
梁は直線的で、底面には錫杖彫り。梁の中央には短い大瓶束(たいへいづか)が置かれ、大瓶束の上で小さな海老虹梁(えびこうりょう)が母屋とつながっています。
右側面。
柱間にわたされた梁の中間には束が立てられ、その上にも組物が配置されています。
組物はシンプルな出組。出組によって持ち出された桁の下には、蛇腹状の支輪が見えます。頭貫の木鼻は象鼻。
その他の社殿
拝殿の左手には社務所。訪問時は年末だったため、紅白の幕や松飾りがつけられていて二年参りと初詣に備えたいでたち。
銅板葺の入母屋(妻入)ですが、正面の庇が右にずれた位置にあり、どことなく出雲大社のような大社造(たいしゃづくり)の本殿を彷彿とさせます。
拝殿の右手にある神楽殿は銅板葺の入母屋(平入)。
軒裏は一重の繁垂木。縁側は切目縁で、欄干は擬宝珠付き。床がやや高めに造られているのが特徴的。
拝殿の後方には本殿。写真は本殿の覆い屋。
覆い屋は銅板葺の切妻(平入)。柱はいずれも角柱。
おそらく内部に本殿があるのですが、入って行ってよさそうな雰囲気ではないため断念。
案内板(社務所の設置)によると祭神は誉田別命、神功皇后、仲哀天皇の3柱。
神功皇后が福岡県怡土郡(いと-、現在の糸島市と福岡市)の「蚊田の里」なる場所から持ってきたという石が御神体で、これが蚊里田という独特の地名・社名の由来とのこと。この石は鎮懐石、男根石という別名もあるようです。
鎌倉時代に当地を納めた地頭が、源頼朝から八幡宮をつくるよう命じられたのが蚊里田八幡宮の由緒とのこと。
以上、蚊里田八幡宮でした。
(訪問日2019/12/31)