今回は長野県茅野市米沢(よねざわ)の瀬神社(せ-)について。
瀬神社はビーナスライン沿線に位置する集落の中に鎮座しています。
村の産土神ではありますが、本殿は大隅流の宮大工による彫刻が多数配置された豪華なものになっています。また、舞台も大隅流の作で、こちらも見応えのある内容となっています。
現地情報
所在地 | 〒391-0216長野県茅野市米沢塩沢字居平7643(地図) |
アクセス | 茅野駅で柏原線に乗車、宮前バス停にて下車 諏訪ICから車で25分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
入口と舞台
こちらが境内の入口。
右のほうの入母屋の建物は舞台で、この写真にうつっているのは背面。
舞台を正面から見た図。背面は入母屋ですがこちら側は切妻になっています。
写真では見切れてしまっていますが、破風板の上の端から「雀威し」(すずめおどし)という菱形の飾りが伸びています。松本盆地周辺で見かける本棟造(民家の建築様式)とよく似ています。
構造は正面1間・側面4間・背面6間。案内板(茅野市教育委員会)によると梁間(間口)は10.8m、桁行(奥行き)は6.6m。妻入の建物にしてはかなり横長です。
舞台の正面を軒下から見上げた図。
極太の梁の上には大ぶりな組物が並んでおり、2階(?)の床下は持出し梁になっています。窓からは縁側が突き出ていて、擬宝珠のついた欄干が立てられています。
案内板によると1842年の建立で、棟梁は大隅流の伊藤安兵衛という宮大工とのこと。
拝殿
拝殿と本殿は石垣の上にあり、舞台とはす向かいに建っています。
拝殿は銅板葺の入母屋(妻入)で、軒唐破風(のき からはふ)付き。向拝らしきものはありません。
なお、こちらの拝殿は正面が入母屋で背面が切妻になっており、先述の舞台とは対照的な造りです。
拝殿の正面の軒下。
唐破風から垂れ下がる兎毛通(うのけどおし)は鳳凰の彫刻。ガラス戸の上は龍、戸の左右に配置されているのは竹。
屋根裏の垂木が放射状に伸びているように見えますが、これは私の写真の撮りかたが悪かっただけで、実際は平行垂木です。
拝殿の柱はいずれも角柱。ですが、縁側の終端には脇障子(わきしょうじ)が立てられており、彫刻まであります。なお、彫刻の題材は不明。
左側に写っているのは、本殿の覆いです。
本殿
本殿にはガラス窓の覆いが設けられており、中を覗き込むことができます。
本殿はこけら葺の一間社流造(いっけんしゃながれづくり)で、向拝は軒唐破風付き。
ガラスの映り込みのせいでほとんど見えないですが、虹梁の上には龍、木鼻は唐獅子と象、海老虹梁は上り龍と下り龍です。また、壁面には人物像の彫刻、脇障子の彫刻は酒呑童子が題材とのこと。
造営は1861年で、宮大工は大隅流の矢崎善司と矢崎房之進。
祭神はスセリビメ(須勢理毘売)。スセリビメは大国主の正妻ですが、諏訪大社の主祭神であるタケミナカタは大国主とヌナカワの子です。直接の血縁がないので諏訪大社との関係性はそこまで深くはない気がするのですが、境内にはしっかりと御柱が立てられていました。
本殿の覆いにはガラス窓の外に金網までついていて、きれいな写真を撮るのは非常に難しいです。ガラス窓だけならまだ頑張りようがあるのですが、金網まであるともうどうしようもありません...
上の写真は本殿左側面。
背面側(写真左のほう)にも縁側が設けられており、縁側の床下は四手先の複雑な組物で支えられています。そして縁の下にも彫刻が配置されています。
背面の縁の下。柱の床下は、八角柱になっています。
縁の下の彫刻は唐獅子、その下は波に鯉というやや珍しい題材。
写真の下半分に見えるのはおそらく丸石神。山梨県の名物(?)です。
背面の右のほうの図。軒下を撮ろうとしたのですが、これが限界でした。
梁と桁は、尾垂木の突き出た二手先の組物で持ち出されているところは辛うじて確認できます。脇障子は背面も抜かりなく彫刻されており、その上には波のような渦巻き状の彫刻が乗っているのがちょっと個性的。
以上、瀬神社でした。
(訪問日2019/10/13)