甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【大月市】稲村神社(黒野田)

今回は山梨県大月市笹子町黒野田(くろのだ)の稲村神社(いなむら-)について。

 

稲村神社(黒野田)は国道20号の笹子トンネル付近の集落に鎮座しています。

本殿は郡内地方でよく見かける入母屋ですが、近辺の神社本殿の屋根のほぼ全てが金属板で覆われているのに対し、この本殿は純粋なこけら葺きで維持されています。

 

現地情報

所在地 〒401-0025山梨県大月市笹子町黒野田740(地図)
アクセス

笹子駅から徒歩30分

大月ICから車で20分

駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

鳥居と拝殿

稲村神社の入口

稲村神社の境内は南向き。

鳥居は石製の明神鳥居で、扁額には「奥野 稲村 大明神」とありました。

鳥居の左奥にある手水舎は鉄板葺の入母屋。

 

稲村神社の拝殿

拝殿は鉄板葺の入母屋(平入)で、正面に千鳥破風(ちどりはふ)、向拝1間。

 

稲村神社の拝殿の向拝

軒下はまばら垂木ですが、向拝の部分だけ二軒(ふたのき)になっています。

虹梁の周辺には蟇股(かえるまた)、象鼻、海老虹梁(えびこうりょう)などの意匠が見られます。

 

本殿

稲村神社本殿

拝殿の裏には覆い屋とフェンスで保護された本殿が鎮座しています。

本殿はこけら葺き一間社入母屋(いっけんしゃ いりもや)、平入。向唐破風(むこう からはふ)の向拝1間。

 

造営年代は不明ですが、近辺に多数ある入母屋本殿と同様に江戸中期から末期のものと思われます

祭神については、稲村神社(大月市笹子町吉久保)と同じく国之常立命、スサノオなどの4柱のようです。

 

稲村神社本殿の向拝

向拝の正面の虹梁(こうりょう)の中備えは竜の彫刻。虹梁の両端の木鼻には、正面側は唐獅子、側面は獏が彫刻されています。いずれもかなり退色していますが、赤っぽい配色。

 

稲村神社本殿の母屋正面

母屋の正面は、扉とその両脇にも彫刻がはめ込まれています。こちらも赤っぽいです。題材については、案内板などがないため不明。

 

稲村神社本殿の軒下

向拝の軒下を右側から見た図。

写真左の向拝柱と右の母屋柱をつなぐ海老虹梁は、母屋のほうが若干高くなっていますが、高低差のあまりない場所をつないでいるためカーブもそこまで急ではありません。

海老虹梁の上のほうで垂木を受けている手挟(たばさみ)は牡丹の意匠の籠彫が施されていて、葉の部分の緑の彩色が辛うじて劣化に耐えて残っています。

 

稲村神社本殿の側面

母屋の頭貫の木鼻は唐獅子。こちらも退色しかけの赤が残っています。

木鼻の上の組物は、尾垂木が突き出た三手先の出組。

この本殿も郡内地方(とくに北都留郡)の神社本殿のご多分に漏れず組物(柱間に配置する組物のこと)が使われており、にぎやかな軒下になっています。

組物と詰組のあいだには彫刻はないものの、組物によって持ち出された梁には雲状の彫刻がうっすらと施されています。

 

縁側の脇障子には彫刻がありますが題材不明。

 

稲村神社本殿の縁

縁側は前後左右の4面にまわされており、背面は脇障子でふさがれています。床板はくれ縁、欄干は擬宝珠付き。そして床下は木鼻付きの組物で支えられています。

組物から出ている木鼻の彫刻は竜、鳳凰、象。赤と緑に塗り分けられていると思いきや、緑色はコケ(苔)でした。縁側の欄干もうっすらとコケが生えかけているので、造営が終わってしばらくは雨ざらしにされていたのでしょう。

 

柱を観察すると、床上は円柱ですが床下は角柱になっていました。

 

稲村神社本殿の背面

見切れかけていますが、背面にも頭貫の木鼻や詰組があります。

背面側は欄干の水平材を支持するスパンが妙に長く、やや間延びしているように見えます。

 

解説は以上。

冒頭にも書いたように、やはり屋根がこけら葺きの状態で維持されているのが素晴らしいです。縁の下の彫刻にコケが生えてしまっているのがやや心配ですが、これはこれで趣があるのではないでしょうか。

 

以上、稲村神社(黒野田)でした。

(訪問日2020/01/24)

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