甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【城陽市】水度神社

今回は京都府城陽市の水度神社(みと-)について。

 

水度神社は城陽駅の南東にある斜面の住宅地に鎮座しています。

創建は社伝によると平安時代。しかし『山城国風土記』の逸文に当社の記述があることから、奈良時代には確立されていたようです。往時は参拝客でにぎわい、かつての参道は茶屋が立ち並んでいたとのこと。

現在の参道周辺は住宅地になっていますが、松並木が残されています。桧皮葺の本殿は室町前期の造営で、国重文に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒610-0121京都府城陽市寺田水度坂89(地図)
アクセス 城陽駅から徒歩15分
城陽ICから車で10分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト なし
所要時間 15分程度

 

境内

参道

水度神社の参道は西向き。後述の社殿はいずれも南向きです。

境内は西向き斜面の住宅地の一角にあります。JR奈良線の踏切の辺りから社頭まで松並木がつづき、由緒ある神社だと直感できる雰囲気でした。

 

入口の鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「水度神社」。

 

参道左手には手水舎。桟瓦葺、入母屋。

内部は格天井が張られています。

 

ほか、参道の脇には境内社がいくつかあります。

こちらは「稲荷大明神」。切妻、檜皮葺。

 

こちらは名称不明。3棟いずれも切妻、檜皮葺。

屋根が苔むしています。

 

拝殿

境内を進むと、参道が左手に折れ、境内は南向きになります。

 

拝殿は、入母屋(妻入)、檜皮葺。

軒先に反りがつき、優美な趣。柱間は壁がなく、吹き放ち。

 

柱は角柱で、柱上は舟肘木。

軒裏は二軒まばら垂木。

 

破風板は飾り金具がついています。金具の紋は、下り藤。春日大社の紋ですが、当社にその系統の神は祀られていません。

破風板の拝みには鰭付きの蕪懸魚。

入母屋破風には木連格子が張られています。

 

中門

拝殿の先には、中門と透かし塀に囲われた本殿が鎮座しています。

中門は、妻入唐門、檜皮葺。

 

柱は几帳面取り角柱。柱と柱を直接つなぐ梁はありません。

柱上は出三斗。

妻虹梁に掲げられた扁額は「水度神社」。扁額の裏は板蟇股。

破風板の拝みには兎毛通。飾り金具には下り藤の紋があります。

 

右側面(東面)。

門扉は、唐破風の屋根の中ほどに立てつけられています。

 

門扉の上には貫と台輪が通っています。貫と台輪の両端には禅宗様木鼻。

台輪と妻虹梁の間にも蟇股が置かれています。

 

本殿

中門の先には本殿が鎮座しています。

桁行1間・梁間2間、一間社流造、正面千鳥破風付、桧皮葺。

1448年(文安五年)造営国指定重要文化財

祭神はアマテラス、タカミムスビ、トヨタマヒメの3柱。

 

向拝は1間。垂れ幕には下り藤。

虹梁は無地の細い材が使われています。

虹梁中備えは蟇股で、唐草などの植物が彫られています。鎌倉時代の幾何学的な造形から、安土桃山以降の写実的な造形へと移行してゆく過渡期といった感じの造形です。

 

向拝柱は角柱。古いもののため、大きく面取りされています。

柱上の組物は連三斗。柱の側面に斗栱が出て、組物を持ち送りしています。

先述の蟇股も、こちらの組物も、実肘木を使わずに桁を直接受けています。

 

正面には角材の階段が7段。

階段の欄干には親柱が立てられ、向拝柱の近くにも親柱を立てて欄干を伸ばしています。

向拝柱の下端には長押が打たれ、その下に浜床が張られています。

 

右側面(東面)。

茂みの陰になってしまいましたが、向拝と母屋をつなぐ梁はありません。

装飾的な意匠はほとんどなく、それだけに屋根のカーブの美しさが際立ちます。

 

破風板の拝みと桁隠しにはシンプルな猪目懸魚。

妻飾りは古風な豕扠首。

母屋柱は円柱で、軸部は長押で固定されています。柱上に組物はなく、中央の柱のみ舟肘木が使われています。

 

縁側は3面にまわされ、背面側は脇障子でふさがれています。脇障子に絵や彫刻などはありません。縁側には跳高欄が立てられています。

母屋は亀腹の上に建てられ、床下は白い壁板でふさがれています。

 

背面にも目立った意匠はありません。

 

軒下は非常にシンプルな意匠で、端正かつ清楚な印象でした。しかし屋根を見ると、正面にこのような千鳥破風が設けられていて、純粋な流造本殿とは一味ちがった構造です。

破風板の拝みには、小さな鰭のついた猪目懸魚。破風内部は黒い木連格子になっています。

 

以上、水度神社でした。

(訪問日2022/02/24)