今回は三重県津市の専修寺の門前の子院・末寺について。
当記事では専修寺の門前に点在する子院・末寺について述べます。
玉保院
所在地:〒514-0114三重県津市一身田町2812(地図)
専修寺山門の手前のには、2件の子院が向かい合っています。
こちらは山門向かって右側に鎮座する玉保院(ぎょくほういん)。西向き。
専修寺周辺の末寺の筆頭三ケ寺のひとつらしいです(津市教育委員会の案内板より)。
入口の門は一間一戸、四脚門、切妻、本瓦葺。
前後の控柱は几帳面取りの角柱。
木鼻は正面と側面に拳鼻。
正面の虹梁の中備えは詰組。
組物は出組。持ち出された桁の下には軒支輪。
内部の通路部分にわたされた梁には、蟇股が配されています。はらわたは竜の彫刻。
天井は板張りになっています。
妻飾りは笈形付き大瓶束。
軒裏は二軒繁垂木です。
玉保院本堂は入母屋、向拝1間、本瓦葺。
向拝は広めに取られ、ゆったりとした印象。
虹梁中備えには竜の彫刻。
向拝柱は几帳面取り。
正面は唐獅子、側面は獏。どちらも立体的で良い造形だと思います。
ゆるやかにカーブした海老虹梁が、向拝と母屋をつないでいます。
向拝柱の上の手挟は、菊の籠彫。
母屋柱は円柱。
中央の柱間は桟唐戸が設けられ、桟唐戸の向こうはガラスの引き戸。戸の上は菱組みの欄間。
扉の上の虹梁には2本の大瓶束が立てられ、軒下の台輪を受けています。
柱は上端が絞られています。
頭貫と台輪には禅宗様木鼻。
組物は出組で、中備えは蟇股。桁下には軒支輪。
軒裏は二軒繁垂木。
玄関は向唐破風。
蟇股や懸魚に彫刻があります。
以上、玉保院でした。
智慧光院
所在地:〒514-0114三重県津市一身田町2810(地図)
つづいては玉保院の向かいにある智慧光院(ちえこういん)。筆頭三ケ寺のひとつ。こちらは東向き。
入口の門は一間一戸、四脚門、切妻、正面軒唐破風付、本瓦葺。
玉保院の門と較べると、こちらは開放的で軽快な造り。
軒先には唐破風が設けられ、拝みと桁隠しに懸魚がついています。
前後の控柱は几帳面取り。
木鼻は正面に小振りな拳鼻、側面に大きめの象鼻。
組物は出三斗。
虹梁中備えの蟇股には、唐獅子が彫刻されています。唐獅子は目と口が彩色されていて、素木ながら目力があります。
唐破風の軒下には小振りな笈形付き大瓶束。
妻壁。
妻飾りは標準的なサイズの笈形付き大瓶束。
軒裏は二軒繁垂木でした。
内部は板張りの天井(鏡天井?)。
主柱の間にわたされた梁の中備えは蟇股。梅らしき花が彫られていました。
智慧光院本堂は入母屋、向拝1間、本瓦葺。
虹梁中備えは竜の彫刻。
向拝柱は几帳面取り。木鼻は正面が唐獅子、側面が獏。
組物は連三斗。獏の頭の皿斗が持ち送りになっています。
手挟は波の彫刻。
海老虹梁はゆるやかな曲線。向拝側の下部には菊の籠彫りが添えられています。
母屋柱は角柱。
正面には桟唐戸が立てつけられています。
頭貫と台輪には禅宗様木鼻。
組物は出三斗。
以上、智慧光院でした。
厚源寺
所在地:〒514-0114三重県津市一身田町2814(地図)
玉保院と智慧光院の近くには厚源寺(こうげんじ)。専修寺山門と唐門のある広い通りに面しています。入口は北向き。
門は一間一戸、薬医門?、切妻、本瓦葺。
厚源寺本堂は寄棟、向拝1間、正面本瓦葺、桟瓦葺。東向きです。
子院や末寺にしては大規模な寄棟の堂で、塀越しでも存在感があります。屋根は正面だけ本瓦葺になっており、変わった造り。壁面はガラス戸や化粧板が使われていて現代的。
玄関なども撮りたかったのですが、生活感のある雰囲気だったので自重。
以上、厚源寺でした。
慈智院
所在地:〒514-0114三重県津市一身田町760(地図)
専修寺の東側、太鼓門の近くには慈智院(じちいん)。筆頭三ケ寺のひとつ。西向き。
門は一間一戸、四脚門、切妻、本瓦葺。
全体的に簡素な造りで、素朴かつベーシックな四脚門といった感じ。
主柱から男梁がわたされ、繰型のついた女梁が添えられています。
妻飾りは板蟇股。
天井はなく化粧屋根裏で、軒裏は一重まばら垂木。
本堂は桁行5間・梁間6間、寄棟、本瓦葺。
鬼瓦の銘より1639年(寛永十六年)の造営と考えられているようです。江戸初期の火災でも焼け残り、一身田地域では専修寺の伽藍よりも古い建造物とのこと(津市教育委員会の案内板より)。県指定文化財。
本堂向かって右には玄関。
中備えは出三斗。
唐破風の小壁には蟇股が置かれ、牡丹と思しき花の彫刻が入っています。
以上、慈智院でした。
(訪問日2021/09/19)