甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【京都市】西本願寺(本願寺) その1 御影堂

今回は京都府京都市の西本願寺(にしほんがんじ)について。

 

西本願寺は京都市街に鎮座する浄土真宗本願寺派の本山です。山号は龍谷山。通称は西本願寺、お西さん、正式名称は本願寺(ほんがんじ)

創建は1321年(元亨元年)。親鸞(1262年没)の墓所「大谷廟堂」を寺院化したのが本願寺のはじまりです。当時の浄土真宗は関東や北陸で多くの信徒を獲得していましたが、近畿では布教が捗らず、飢饉や延暦寺による弾圧もあって本願寺は荒廃しました。

その後は蓮如によって本願寺の教団が再建され、顕如・教如親子による織田信長との戦い(石山合戦)を経て、1591年に豊臣秀吉の命で現在地へ移転となりました。これが現在の西本願寺です。1602年には教如が本願寺から分離・独立して現在の東本願寺を創建し、本願寺は東西に分裂しました。

現在の境内は江戸前期に整備されたもので、巨大な御影堂や阿弥陀堂が並び立つ雄大な伽藍となっています。御影堂、阿弥陀堂、飛雲閣、唐門など計8棟が国宝に指定されているほか、御影堂門などの10棟が重要文化財となっています。

 

当記事では御影堂などについて述べます。

阿弥陀堂などについては「その2」を、

唐門などについては「その3」をご参照ください。

 

現地情報

所在地 〒600-8501京都府京都市下京区堀川通花屋町下る本願寺門前町(地図)
アクセス 梅小路京都西駅から徒歩10分、または京都駅から徒歩15分
駐車場 あり(無料)
営業時間 05:30-17:00
入場料 無料
寺務所 あり
公式サイト お西さん(西本願寺)
所要時間 50分程度

 

境内

御影堂門

西本願寺の境内は東向き。境内正面は国道1号線、堀川通に面しています。

境内正面には2つの門があります。こちらは南側にある御影堂門(ごえいどうもん)。

 

一間一戸、四脚門、入母屋、本瓦葺。

1645年(正保二年)造営。「本願寺」7棟として国指定重要文化財

 

正面の柱間には虹梁がわたされています。虹梁の中央には大瓶束が立てられ、その左右の中備えには組物と蟇股が置かれています。

 

向かって左の控柱。

控柱は円柱。上端はわずかに絞られ、銅板の飾り金具がついています。

外側(写真左)には木鼻が2つつき、内側は挿肘木の斗栱で虹梁を持ち送りしています。

柱上の組物は出組。

 

内部向かって右側。写真右が正面方向です。

主柱(写真中央)と控柱(右)は貫で連結され、腰貫・頭貫のあいだの欄間には花狭間がはめ込まれています。

門扉は桟唐戸です。

 

通路上の扉筋の梁。

梁の上の欄間には竜の彫刻が置かれ、台輪の上の中備えには獏と思しき鼻の長い獣の彫刻が見えます。

内部は小組格天井です。

 

入母屋破風。

破風板の拝みと桁隠しは、三花懸魚。

奥まって見づらいですが、妻飾りは蟇股や虹梁大瓶束が使われています。

 

背面。

軒下の意匠は正面とほぼ同じです。

軒裏は平行の二軒繁垂木。

 

御影堂

御影堂門の先には、巨大な御影堂(ごえいどう)が鎮座しています。堂内には、浄土真宗の開祖とされる親鸞の像が祀られています。

西本願寺でもっとも大きな伽藍で、本堂に相当する阿弥陀堂よりも大きく造られています。なお、同市の東本願寺や知恩院、三重県の専修寺(真宗高田派)も、御影堂が寺院内で最大の伽藍となっており、これは浄土宗系寺院の特徴のひとつらしいです。

右手前の木は「西本願寺のイチョウ」として市指定天然記念物。水吹きイチョウ、逆さイチョウといった異名でも知られるようです。

 

入母屋、向拝3間、本瓦葺。桁行(正面)62.1m、梁間(側面)53.8m、棟高29m。

1636年(寛永十三年)造営国宝

 

向拝は3間。

 

向拝柱は几帳面取り角柱。上端が絞られています。

隅の柱の側面には象の彫刻。

虹梁には、渦状の絵様ではなく、唐花らしき彫刻があります。

虹梁中備えは蟇股。組物と蟇股の上には、手挟が見えます。

 

縁側から向拝の軒裏を見た図。

向拝柱と母屋をつなぐ梁はありません。

 

母屋の周囲は、正面と側面の各1間通りが吹き放ちの庇となっています。

庇の柱(写真右)は几帳面取り角柱、母屋の柱(左)は円柱。

母屋正面の柱間は、桟唐戸と半蔀が使われています。

 

母屋の左側面(南面)。

側面は前方の7間が庇の空間となっており、後方は格子戸と板壁でふさがれています。

母屋側面の建具は、板戸と桟唐戸。

 

庇の左手前(南東)の梁と天井。

庇の空間には虹梁がわたされ、虹梁の中央には大瓶束が立てられています。

 

母屋柱は上端が絞られ、頭貫に木鼻がついています。頭貫の上には台輪が通っています。

台輪の上の中備えには彫刻が置かれていますが、題材不明。

 

縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。

縁側の外には柱が立てられ、軒先を支えています。

 

縁側の外周の柱は面取り角柱。柱間は貫で連結され、頭貫に木鼻があります。

柱上は平三斗と出三斗。

 

左側面(南面)の全体図。

縁側や庇の空間が意外に広く、母屋の大きさの割に軒の出が非常に深く見えます。

 

破風板の拝みと桁隠しは三花懸魚。

妻飾りは二重虹梁で、蟇股や大瓶束が使われています。ほか、欄間は多数の彫刻で埋め尽くされています。

 

御影堂の南には、寺務所が東面しています。

入母屋、本瓦葺。

 

御影堂の向拝の左右には、このような天水受けがあります。

案内板によると御影堂と同じく1636年のものとのこと。天水受けの四隅は、丸々とした体形の邪鬼が支えています。

 

御影堂などについては以上。

その2では阿弥陀堂などについて述べます。