今回は滋賀県東近江市小八木町(こやぎちょう)の春日神社(かすが-)について。
春日神社は市東部の田園地帯の集落に鎮座しています。
創建は不明。興福寺(奈良市)の寺領であったため、春日大社から分祀されたようです。
境内の規模は標準的ですが、室町前期に造営された三間社の本殿が現存し、国重文に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒527-0108滋賀県東近江市小八木町763(地図) |
アクセス | 愛知川駅から徒歩1時間 湖東三山スマートICから車で5分 |
駐車場 | 2台(無料) |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
春日神社の境内は南向き。集落の生活道路に面しています。
鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「春日神社」。
右に見切れている社号標は「邨社春日神社」。
鳥居の右側には鐘楼。切妻、桟瓦葺。
柱は円柱で、禅宗様木鼻、蟇股、大瓶束などの意匠が使われています。
四脚門
鳥居と拝殿のあいだには門。名称がわからないため、便宜的に四脚門としておきます。
一間一戸、四脚門、切妻、檜皮葺。
主柱と前後の控柱には梁がわたされ、梁の上では板蟇股が棟木を受けています。
主柱の上には小ぶりな巻斗、控え柱の上には大斗と舟肘木が使われています。
柱の配置は四脚門なのですが、梁などの懸架材の使いかたは薬医門に近く、どちらかといえば「薬医門の発展型」といった雰囲気。
拝殿
拝殿は入母屋、銅板葺。
滋賀県内によくある、壁のない吹き放ちの拝殿。プロポーションはやや縦長で、腰高な印象。
中央の柱間は鴨居が高くなっていて、虹梁は文字どおり中央が高くなった曲線形。
柱は角柱で、柱上の組物は出組。桁下には軒支輪。
内部は折り上げ格天井。部屋の中央部はさらにもう一回折り上げされています。
本殿
本殿は中門と瑞垣に囲われています。
中門は切妻(妻入)、銅板葺。
本殿は三間社流造、向拝1間、檜皮葺。
棟札より1444年(文安元年)建立、棟梁は大工新五郎太夫なる人物とのこと(東近江市設置の案内板より)。国指定重要文化財。
祭神は天児屋命。
正面3間・側面2間の母屋に前室を設け、その前方に1間の庇(向拝)をのばした様式。国宝の苗村神社西本殿(竜王町)と同じ様式で、近在には同様式の遺構が多数あります。
向拝は1間。向拝柱は角柱で、室町期のもののため面取りの幅が大きいです。
組物は連三斗。実肘木を使わず、軒桁を直接受けています。
正面には角材の階段が7段設けられ、柱の陰になっている昇高欄は擬宝珠付き。階段の下には切目縁の浜床。
向拝中備えの蟇股(上)と前室中備えの蟇股(下)。
両者ともはらわたに精巧な彫刻が入っています。室町前期のものなのでそこまで派手な造形ではないですが、非常に彫りが細かく手の込んだ力作だと思います。
向拝の右側面(東面)。
組物の上では手挟が軒裏を受けています。手挟には勾玉のような繰型が彫られています。
向拝柱と母屋をつなぐ懸架材はありません。
向拝の縋破風の桁隠しはハート形(猪目)に開口されています。
母屋側面。
前室(写真左)は角柱で構成され、縁側が一段低く造られています。柱間には引き戸。欄干は擬宝珠付き。
母屋の本体(右)は側面2間で、柱は円柱。前方の柱間には開き戸。欄干は跳高欄。
縁側は切目縁が3面にまわされ、後方は脇障子が立てられています。縁の下は角柱の縁束。
母屋柱は長押で固定されています。頭貫木鼻は使われておらず、鎌倉期あたりの古風な造り。
柱上の組物は舟肘木だけが使われています。ここも非常に古風。
妻飾りは豕扠首。
破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚。
背面。三間社のためこちらも柱間が3つ。
中央の2本の柱は舟肘木さえ使われず、柱がそのまま桁を受けています。
柱間や長押の上の欄間にも中備えはなく、流造本殿としてこれ以上ないくらいシンプルな外観。
母屋柱は床下まで円柱に成形されていました。
以上、春日神社(小八木町)でした。
(訪問日2021/03/13)