今回は滋賀県愛荘町の大行社(だいぎょうしゃ)について。
大行社は湖東三山ICに隣接する集落に鎮座しています。
創建は不明。金剛輪寺の鎮守として勧請されたようです。1878年に社殿を焼失したため、金剛輪寺境内社を移築したのが現在の本殿とのこと。
境内社殿は本殿だけというきわめてシンプルな内容ですが、本殿は室町前期の造営のため国重文に指定されています。
現地情報
所在地 | 〒529-1202滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺(地図) |
アクセス | 愛知川駅から徒歩1.5時間 湖東三山スマートICから車で3分 |
駐車場 | なし |
営業時間 | 随時 |
入場料 | 無料 |
社務所 | なし |
公式サイト | なし |
所要時間 | 10分程度 |
境内
参道
大行社の境内入口。山際の集落の生活道路に面しています。
鳥居は南東向きで、石造の明神鳥居。
鳥居の扁額と左の社号標は「大行社」。
参道右手には手水舎。
切妻、桟瓦葺。
参道を進むと境内が右に折れ、南西向きになります。
石垣の上には本殿と中門があるだけで、拝殿はありません。
拝殿はもともとなかったのか、あるいは1878年(明治十年)の火災のあと諸事情(費用の問題など?)で再建しなかったのか、どちらなのかは不明。いずれにせよ、神社で拝殿やそれに相当する社殿がない例はめずらしいです。
本殿
中門と瑞垣の先には本殿が鎮座しています。
三間社流造、向拝1間、檜皮葺。
桁行3間・梁間2間の母屋に前室を設け、さらに1間の向拝を付加した流造。苗村神社西本殿をはじめ、滋賀県内でよく見られる様式です。
蟇股の墨書より1447年(文安四年)造営。国指定重要文化財。
もとは金剛輪寺の本堂北側にあった境内社・三所権現社の本殿で、1878年の火災にともない当地へ移築。1932年の修理で造営年が判明したとのこと。
祭神はタカミムスビ。
向拝は1間。柱は角柱。
後方に見える前室は3間。角柱が使われ、柱間は吹寄せの格子。
向拝柱は角面取り。
柱上の組物は連三斗。実肘木がなく、軒桁を直接受けています。
柱の側面には拳鼻が出ていて、巻斗を介して連三斗を受けています。拳鼻の繰型は、大小の渦を組み合わせた曲線で構成されています。
中備えの蟇股は菊の花のような意匠。あまり立体的でない造形で、室町前期らしい作風。
蟇股の上の巻斗には飾り金具がついています。六角形のシルエットですが宝輪の紋にも見え、寺院風の意匠に見えます。
左側面(西面)。
縁側は高低差がつけられ、前室は床が低くなっています。
縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は擬宝珠付き。
母屋本体は側面2間で、前方の1間は開き戸、後方の1間はしっくい塗りの壁になっています。
母屋柱は円柱。軸部は長押と頭貫で固定され、頭貫に木鼻はありません。
柱上の組物は出三斗と平三斗。
妻飾りは豕扠首。懸魚の陰になってしまっていますが、豕扠首の上には花肘木が使われています。
破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚。
背面。
壁面や欄間は側面と同様にしっくい塗りで、目立った意匠はありません。
母屋柱は床下も円柱に成形されていますが、縁長押が省略されているせいで腰貫が露出しています。
以上、大行社でした。
(訪問日2021/03/13)