甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【上越市】五智国分寺(越後国分寺)

今回は新潟県上越市の五智国分寺(ごち こくぶんじ)について

 

五智国分寺は上越市の海岸近くに鎮座する天台宗の寺院です。山号は安国山。

奈良時代に建立された越後国分寺の後継にあたり、現在の寺院は上杉謙信によって当地に移転され再興されたと伝えられています。境内の伽藍はいずれもあまり古いものではありませんが、新潟県では貴重な三重塔があるほか、市内最古とされる経蔵があるなど充実した伽藍となっています。

 

現地情報

所在地 〒942-0081新潟県上越市五智3-20-21(地図)
アクセス 直江津駅から徒歩25分
上越ICから車で15分
駐車場 10台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
寺務所 あり(要予約)
公式サイト 五智国分寺公式ページ
所要時間 15分程度

 

境内

山門

五智国分寺山門

五智国分寺の境内は南向き。境内の正面には山門が立っています。

山門は銅板葺の切妻。正面3間・側面2間。柱はいずれも円柱。

三間一戸の仁王門。扁額は「安国山」。1835年(天保6年)の造営で市指定文化財。

内部の仁王像は1836年の作とのこと。

 

経蔵

五智国分寺経蔵

参道を進むと左手に経蔵が鎮座しています。

経蔵は桟瓦葺の宝形。正面3間・側面3間。柱は円柱。1693年(元禄6年)の造営で、年代がわかっているものとしては市内最古の建造物で、市指定文化財です。

 

経蔵の扉

経蔵の軒下

正面の扉は桟唐戸(さんからど)、柱は上端がすぼまった形状、頭貫だけでなく台輪にも木鼻がついており、禅宗様の意匠が各所に見られます。

とはいえ軒裏の垂木は平行で、組物は柱上にのみ置かれており、壁板は水平方向に張られています。

 

三重塔

五智国分寺三重塔

参道の右手、経蔵と向かい合うような位置には、この境内の最大の見どころといえる三重塔が立っています。

三重塔は桟瓦葺。3層。3間四方。高さ25.85メートル。県指定文化財。

江戸末期の1865年(慶応元年)に上棟されたようですが、高欄(縁側の床や手すり)がなく未完成

宮大工は上越市高田の曽武川常右衛門と、上越市名立区の江崎長三郎とのこと。両人とも市内の寺社を数多く手がけた名工のようです。

 

三重塔の初重

1層目(初重)の西面。前述のように縁側がまわされていません。

柱はいずれも円柱。扉は桟唐戸。貫と台輪には禅宗様の木鼻。

柱上の組物は尾垂木の突き出た三手先の出組。組物で持ち出された軒桁の下には軒支輪。

組物のあいだの蟇股(かえるまた)には十二支が端正かつ愛嬌ある造形で彫られており、右から申・酉・戌(さる・とり・いぬ)。蟇股の上には巻斗がびっしりと並べられています。

 

三重塔の二重

2層目の東面。縁側を造ろうとしたものの途中で止めてしまった形跡が見られます。

扉が桟唐戸ではなく板戸である点が1層目と異なりますが、他は1層目とほぼ同じ。蟇股の彫刻は十二支ではなく人物像(題材不明)となっています。

 

三重塔の三重

3層目の東面。

1層目・2層目とは打って変わって、軒裏が放射状の扇垂木(おうぎたるき)となっています。組物のあいだの蟇股も3層目にはありません。

また、写真ではわかりづらいですが組物で持ち出された桁の下は、軒支輪ではなく雲状の意匠が彫られています。

 

3層目だけ作風がやや異なりますが、三重塔では3層目か1層目だけ作風を少し変えることはべつだん珍しくありません。

 

三重塔の全体図

北東から全体を見た図。

縁側が未完成で、2層目・3層目は縁束だけが立っており、他の三重塔にはない個性的な外観。

縁側がないからなのか、上にすらりと伸びたシルエットに見える点もおもしろいです。

 

本堂

五智国分寺本堂

参道を進むと境内の中心部に本堂が鎮座しています。

本堂は銅板葺の入母屋(平入)、向拝3間。1997年の造営。

堂内には5体の仏像が並んでいるのが見えました。大日・薬師・室生・阿弥陀・釈迦の5如来が本尊で、これが五智国分寺という寺名の由来のようです。

山門の内部にあった張り紙によるとヒバ材が使われていて、床まで槍鉋(やりがんな)で仕上げたという手の込んだ本堂らしいです。

 

本堂の向拝

向拝の軒下。

軒先を支える向拝柱は、大きめにC面取りされた角柱。角柱をつなぐ梁の上には、くり抜かれていない古風な蟇股が置かれています。

母屋の柱は円柱で、正面の柱間は桟唐戸。梁の柱間は蟇股。

 

本堂の側面

右側面(東面)。

入母屋破風の内部の妻壁には、妻虹梁(つまこうりょう)と大瓶束(たいへいづか)が見えます。

 

本堂の右後方

母屋の軒下は、正面側は蟇股が使われていたのに対し、側面と背面は間斗束(けんとづか)が使われています。

壁板は縦方向。縁側は切目縁(きれめえん)が4面すべてにまわされています。

 

本堂の頭貫

最後に本堂母屋の頭貫の木鼻。

なんとなく動物の頭のようなシルエットをしており、ちょうど目の位置に猪目(いのめ:ハート形)を逆さにした穴が開けられています。このような木鼻は、私は他の寺社でも見たことがありません。

全体的に質実剛健な印象を受ける大型本堂ですが、それだけに小さな意匠のアクセントが映えていると思います。

 

以上、五智国分寺でした。

(訪問日2020/04/30)

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