甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【上田市】弓崎神社

今回は長野県上田市の弓崎神社(ゆみさき-)について。

 

弓崎神社は塩田平の北部の山際に鎮座しています。

創建や由緒は不明。境内は山の斜面を利用した造りになっており、神楽殿と三間社の古風な本殿を見ることができます。

 

現地情報

所在地 〒386-1106長野県上田市小泉1311-イ(地図)
アクセス 上田原駅から徒歩40分
上田菅平ICから車で20分
駐車場 なし
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 なし
公式サイト なし
所要時間 10分程度

 

境内

参道

弓崎神社鳥居

弓崎神社の境内は南向き。川沿いの道路に面した場所に境内があります。

鳥居は石造の明神鳥居。扁額は「弓崎神社」。

 

拝殿(神楽殿)

弓崎神社拝殿

鳥居をくぐると石垣の上に拝殿があります。桟瓦葺の切妻。

神楽殿のような造りをしていますが、後方に幣殿と本殿があるのでこれが拝殿なのでしょう。

 

弓崎神社拝殿

内部は天井がなく、化粧屋根裏になっています。

内部にあがることもできますが、本殿の前には通路(幣殿)があるため、拝殿内部から本殿を見ることはできません。

 

本殿

弓崎神社本殿

拝殿と幣殿の後方には板塀に囲われた本殿が鎮座しています。

本殿は鉄板葺の三間社流造(さんけんしゃ ながれづくり)。正面3間・側面2間、向拝1間。

造営年は不明。おそらく江戸中期あたりでしょうか。

祭神は誉田別命など。大棟の鬼板には八幡宮でよく見かける三つ巴の紋があります。

 

本殿向拝

正面の軒先を支える2本の向拝柱は、几帳面取りされた角柱。向拝柱は虹梁(こうりょう)でつながれ、その上には2つの蟇股(かえるまた)が置かれています。

 

奥の母屋は、正面に間口が3つ。よってこれは三間社。

柱間には両開きの桟唐戸(さんからど)が3組立てつけられています。

縁側は正面にだけ設けられ、欄干や昇高欄(のぼりこうらん:階段の欄干)はありません。

 

本殿向拝側面

向拝柱(左)には、見づらいですが象鼻がつけられています。象のシルエットをしていますが完全に象の形にはなっていません。ここはやや古風な意匠。

向拝柱の上では桁が垂木を受けていますが、桁の木口には桁隠しの懸魚(げぎょ)がつけられています。桁隠しには波の意匠の彫刻が見られます。

向拝柱と母屋(右)をつなぐ海老虹梁(えびこうりょう)はあまりカーブしておらず、雲状の彫刻があるもののほとんど線彫りに近い造形で、平面的で古風です。シルエットといい造形といい、この辺りではあまり見かけない作風だと思います。

 

本殿妻壁

正面3間に対して側面(奥行き、梁行)は2間。

円柱の母屋柱は長押(なげし)と頭貫で固定され、頭貫には雲状の拳鼻がつけられています。柱上の組物は出三斗(でみつど)と平三斗(ひらみつど)。

組物の上にわたされた妻虹梁には渦状の若草が彫られています。その上には大瓶束(たいへいづか)が立てられ、両脇に雲状の笈形(おいがた)が添えられています。

 

本殿床下

床下。縁側が正面にしかないためシンプルな構造。

母屋柱は床上こそ円柱ですが、床下は成形を手抜きして八角柱になっていました。

 

以上、弓崎神社でした。

(訪問日2020/08/01)