甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【南砺市】善徳寺(城端別院) 後編 本堂、鐘楼、太鼓楼など

今回も富山県南砺市の善徳寺について。

 

前編では山門について述べました。

当記事では、本堂、大鐘楼、太鼓楼などについて述べます。

 

本堂

山門をくぐると、右手に本堂が南面しています。本尊は阿弥陀如来。

入母屋、向拝3間、桟瓦葺。

1759年(宝暦九年)上棟

県指定有形文化財。勝興寺本堂に次いで、仏堂として県内2番目の大きさらしいです。

 

向かって左端の向拝柱。

向拝柱は几帳面取り角柱。側面には獏の木鼻。

虹梁との接続部には、持送り材が添えられています。持送り材は木口に繰型がつき、前面には菊水の意匠が薄く彫られています。

 

柱上の組物は連三斗。獏の頭に巻斗が乗り、組物を持送りしています。

組物の上の手挟は、菊の籠彫り。

向拝柱と母屋をつなぐ懸架材はありません。

 

向拝の正面中央。

虹梁の前面には、渦と若葉の絵様が彫られています。

内側の柱の組物は出三斗。

中備えは蟇股。

 

蟇股の詳細。

はらわたの彫刻は、松竹梅が題材と思われます。

 

向拝柱の下端。

四角い基壇と礎盤の上に柱が立てられ、柱の下端は飾り金具がついています。金具は猪目(ハート形)をアレンジした曲線で構成され、逆立ちした唐獅子の彫金が入っています。

 

母屋正面の柱間は、桟唐戸が使われています。

桟唐戸の内には障子戸が入っています。

 

母屋柱は上端が絞られた円柱。

柱の上部には、頭貫と台輪が通っています。

組物は木鼻のついた平三斗。中備えは蓑束。

 

隅の柱。こちらは柱上に出三斗が使われています。

柱上から斜めに伸びる隅木の下には、竜の彫刻が添えられています。

 

左側面(西面)。

側面の柱間は舞良戸。

後方の軒下には孫庇があり、縁側が途切れています。

 

妻飾りは二重虹梁。

大虹梁の上は、中央が蟇股、左右が大瓶束。蟇股と大瓶束のあいだの壁面には、丸い窓があります。

二重虹梁の上の妻壁には笈形付き大瓶束。

破風板の拝みには、鰭付きの三花懸魚が下がっています。

 

鐘楼

本堂の南には鐘楼があります。

入母屋、銅板葺。

1786年(天明六年)上棟。大工棟梁は山村與四郎。

県指定有形文化財。

 

軒裏は放射状の二軒繁垂木。

尾垂木三手先の詰組が配されています。

 

柱はいずれも円柱。上端が絞られた粽柱です。

飛貫の位置には唐獅子の木鼻。唐獅子は頭が小さく細身な体形で、風変わりな作風だと思います。

柱の上部には頭貫と台輪が通り、禅宗様木鼻がついています。頭貫には四角形と六角形を組合わせたパターン、台輪には菱型の文様が彫られています。

 

入母屋破風。

うまく写真が撮れませんでしたが、妻虹梁の下には竜の彫刻があり、妻飾りは大瓶束があります。

破風板の拝みには、鰭付きの蕪懸魚。

 

経蔵

境内の南側には、経蔵が鎮座しています。こちらは市指定文化財のようです。

二重、宝形、桟瓦葺。

 

下層。

縁側はありませんが、基壇に欄干が立てられ、欄干の親柱には逆蓮がついています。

正面は3間で、中央の扉の左右の羽目には彫刻があります。左右の柱間は火灯窓。

柱は角柱で、柱上は舟肘木。

 

上層。扁額は「功徳林」。

こちらも角柱と舟肘木です。

軒裏に垂木はありません。

 

経蔵のとなりには、梵鐘が置かれていました。

 

式台門

山門の北側には、式台門が東面しています。

一間一戸、四脚門、切妻、正面軒唐破風付、銅板葺。

 

唐破風の兎毛通。

猪目懸魚が使われ、左右の鰭には菊の花が彫られています。

 

正面の軒下。

梁の上には出三斗が置かれ、その上では笈形付き大瓶束が唐破風の棟木を受けています。

 

正面向かって右の柱。

手前の柱は几帳面取り角柱。虹梁と飛貫の位置に禅宗様木鼻がついています。

柱上は出三斗。

 

内部。訪問時は祭事の控所として使用されていました。

主柱は円柱で、主柱と門扉のあいだの欄間に彫刻があります。主柱と控柱(写真右)のあいだには、腰貫と腰長押が通り、花狭間が張られています。

門扉は桟唐戸。下のほうには大きな菊の紋があしらわれています。

 

通路上の欄間や、冠木の上の蟇股にも派手な彫刻があります。

冠木の上には蟇股が2つあり、写真左は竹に虎、右は波に竜で、竜虎のならびになっています。

 

側面は、主柱の上から冠木が突き出ています。

主柱の上の組物は木鼻のついた平三斗。

妻飾りは格子が張られ、こちらにも菊の紋があります。

破風板の拝みと桁隠しには、鰭付きの蕪懸魚。

 

太鼓楼など

境内の北端の石垣の上には太鼓楼があります。

二重、宝形、銅板葺。

造営年不明。1726年(享保十一年)には現在の式台門の位置にあったようで、当寺最古の伽藍です。1850年(嘉永三年)に現在地へ移築されました。

県指定文化財。

 

下層。

柱は角柱で、柱上には実肘木。

壁面の下半分には横板壁が張られています。

 

上層。

柱間は1間四方で、壁面に火灯窓が設けられています。

頭貫と台輪に禅宗様木鼻がありますが、欄干は跳高欄、軒裏は平行垂木となっています。

 

ほかにも、境内北側の区画には多数の伽藍があり、そのほとんどが市指定文化財となっています。

こちらは台所門。

壁面はしっくいとなまこ壁で、土蔵風の門です。

 

台所門の先には庫裏。

訪問時は祭事の控室になっており、拝観はできませんでした。

 

以上、善徳寺でした。

(訪問日2023/05/05)