世をひねる

甲信地方(山梨県と長野県)の寺院・神社建築を語る雑記。

【知立市】知立神社 ~廃仏毀釈を免れた神宮寺の多宝塔~

今回は愛知県知立市の知立神社(ちりゅう-)について。

 

知立神社は知立市の中心地に鎮座しています。

歴史と由緒のある三河国二の宮で池鯉鮒神社(ちりふ-)の別名もあります。境内には尾張造という様式の社殿があるほか、希少な神宮寺の多宝塔も現存しており、後者は重要文化財に指定されています。

 

現地情報

所在地 〒472-0023愛知県知立市西町神田12(地図)
アクセス

知立駅または三河知立駅から徒歩15分

豊明ICから車で15分

駐車場 60台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり(要予約)
公式サイト 知立市 知立神社
所要時間 10分程度

 

境内

境内入口

知立神社の鳥居

知立神社の境内は南向き。

入口の鳥居は石製の白い明神鳥居で、扁額は「知立神社」。

 

多宝塔

知立神社の多宝塔

境内に入ると参道の右手に多宝塔が立っています。

多宝塔は三重塔と較べても数がやや少ないうえ、神社でこの手の仏塔が残っている例は希少です。

 

多宝塔はこけら葺きで、1層目は3間四方、2層目の母屋は円柱状になっています。

案内板(知立市教育委員会)によると1509年の再建高さは14.5m(てっぺんの金具を含む)。重要文化財です。

もとは知立神社の神宮寺(別当寺)の伽藍の1つだったようで、神宮寺は明治の廃仏毀釈で廃寺・解体となりました。一方、この多宝塔だけは各所の装飾を取り外して神社の文庫とすることで廃仏毀釈をまぬがれ、大正期の解体修理で現在の姿に戻されたとのこと。

 

知立神社多宝塔の1層

1層目の軒下の組物は、木鼻のついた一手先の出組。出組で持ち出された桁の下には、支輪が見えます。

柱は面取りされた角柱で、頭貫に木鼻。

扉は桟唐戸、扁額は退色がひどく判読不能。

 

知立神社多宝塔の軒下

1層目・2層目ともに、軒裏の垂木は二軒(ふたのき)の繁垂木。

2層目は母屋が円形になっており、それに合わせて縁側や欄干も円形です。

2層目の軒下の組物は、尾垂木が突き出た三手先。円形の母屋から組物の肘木が延び、四方の垂木を受ける桁につながる様は壮観。ここは五重塔や三重塔のような四角い仏塔では見られない箇所であり、多宝塔に特有の見どころと言えるでしょう。

 

拝殿

知立神社の太鼓橋

多宝塔の前を過ぎて参道を進むと池があり、急な勾配のついた太鼓橋がかけられています。奥に見えるのが拝殿。

この太鼓橋は市の指定文化財で石材は花崗岩、1732年のもののようです。

ただしこの橋は通行禁止のため、拝殿へは池を迂回して進みます。

 

知立神社の手水舎

手水舎は参道の左手にあり、石材で造られています。

市名にもなるほどの神社なので手水はしっかりと水が出ており、手水舎もいちおう貫や木鼻や舟肘木っぽい意匠が確認できます。

 

知立神社拝殿

拝殿は檜皮葺の切妻(妻入)。向拝も同じく切妻で、妻入の切妻が大小2つ組み合わさった構成となっています。

母屋の正面側は一部が土間で、これは神社建築では珍しいです。

 

知立神社拝殿の向拝

向拝の正面。

向拝柱は角柱、奥の母屋柱は円柱となっています。

虹梁(こうりょう)にはしめ縄がかけられており、その上には蟇股、妻壁の装飾は豕扠首(いのこさす)。

 

知立神社の社殿

拝殿の後方にはこのような社殿が並んでいます。

写真左は拝殿、中央のいちばん高い屋根が祭文殿、その右にあるのが回廊。いずれも桧皮葺。

 

「拝殿の裏には祭文殿と回廊、回廊に囲われた場所に幣殿と本殿がある」といった社殿構成になっているようです。

こういった社殿構成を尾張造(おわりづくり)といい、尾張国(愛知県西部)の近辺でしか見られない希少な建築様式です。

しかし知立市は尾張国ではなく三河国であるうえ、肝心の幣殿や本殿は回廊の向こうに隠されており拝観できず

仕方がないので文化遺産オンラインで調べてみたところ、本殿は1831年造営の三間社流造とのこと。また、知立神社の尾張造の社殿はいずれも檜皮葺で国指定有形文化財に指定されているとのこと。

 

祭神はウガヤフキアエズなどの4柱。

 

境内社

知立神社の親母神社

尾張造の社殿の右側には境内社が鎮座しています。

こちらは親母神社(うばがみ-)。檜皮葺の一間社流造(いっけんしゃ ながれづくり)。

国指定文化財であり、明治期の造営とのこと。

境内社のわりには檜皮が使われていて規模もやや大きく豪華。

 

親母神社の向拝

ほぼ全体が赤で塗装されており、装飾は少なめ。

向拝柱は几帳面取りされた角柱で、虹梁の両端には側面にだけ木鼻がついています。虹梁の中備えの蟇股(かえるまた)は、繊細かつ立体的な彫刻が施されています。

 

親母神社のつなぎ虹梁

縁側は壁面と直交に板を張った切目縁(きれめえん)。背面にも回されていますが欄干はなし。

母屋柱と向拝柱をつなぐ梁は、カーブしていない古風な意匠。母屋の頭貫の高さから出ています。

 

ほか、特に文化財指定されていない小規模な摂社末社がいくつかありましたが、どれも似たような造りで列挙しているときりがないので割愛。

 

他地方では見られない尾張造の社殿がよく鑑賞できないのはやや残念ですが、重要文化財の多宝塔は小規模ながら壮観。社殿・多宝塔どちらも希少なものなので、寺社好きならば一見の価値があります。

 

以上、知立神社でした。

(訪問日:2020/02/08)

 

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