甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【斑鳩町】龍田神社と伊弉冊命神社

今回は奈良県斑鳩町の龍田神社伊弉冊命神社について。

 

龍田神社

所在地:〒636-0152奈良県生駒郡斑鳩町龍田1-5-3(地図)

 

龍田神社(たつた-)は町の中心部の住宅地に鎮座しています。

創建は不明。社伝によると法隆寺創建の際、聖徳太子が鎮守社として龍田明神を祀ったのがはじまりとのこと。平安時代の『延喜式』には「龍田比古龍田比女神社二座」と記載され、式内社に列しています。創建以来、法隆寺の鎮守社として隆盛しましたが、明治時代の神仏分離で独立の神社となり、神宮寺の本堂(京都市の法界寺に移築され現存)などが撤去されました。1871年には龍田大社(同県三郷町)の摂社となりましたが、1922年に独立して現在に至ります。

境内

龍田神社の境内は南向き。入口は住宅地の生活道路に面し、南側に国道25号が平行しています。

向かって右の社号標は「龍田神社」。

入口の鳥居は木造神明鳥居。笠木の上に銅板の屋根がついています。

 

拝殿は、RC造、入母屋造、向拝1間 向唐破風、銅板葺。

 

向拝は1間。大きくカーブした向唐破風となっています。

向拝柱は角柱で、柱上は出三斗。虹梁中備えは透かし蟇股。

唐破風の小壁の扁額は「龍田社」。

奥の母屋の柱は円柱で、柱上は舟肘木。

 

拝殿の後方のブロック塀に囲われた区画には、本殿が並立しています。上の写真では3棟が写っていますが、右奥(東側)にもう1棟ありました。

本殿は4棟とも一間社流造、銅板葺。

いずれの本殿も大棟に千木と鰹木が乗り、千木は外削ぎのものが使われ、鰹木は3本あります。

 

拝殿向かって右(東)には神楽殿。

入母屋造、桟瓦葺。

 

神楽殿の手前にはクスノキの大木が生育し、その幹の近くに境内社が祀られています。

 

拝殿向かって左側、境内西側の区画にも境内社があります。

 

鳥居の先には3棟の本殿が鎮座しています。

向かって右は「廣田神社 粟島神社 祗園神社」。左は「事代主神 恵美須」。2棟とも、見世棚造、一間社春日造、銅板葺。

左端の小さい棟は社名不明。見世棚造、一間社流造、銅板葺。

 

さらに奥へ進むと、「白龍大神 市杵島姫命 弁財天」があります。

こちらも見世棚造、一間社春日造、銅板葺。

 

柱はいずれも角柱。

向拝の庇は母屋正面の壁面から出ていて、庇の軒裏と屋根の軒裏が別々になっています。

 

境内南西の区画には、「ソテツの巨樹」。

県指定の天然記念物です。

 

以上、龍田神社でした。

 

伊弉冊命神社

所在地:〒636-0124奈良県生駒郡斑鳩町五百井1-1-19(地図)

 

伊弉冊命神社(いざなみのみこと-)は法隆寺駅北側の住宅地に鎮座しています。

創建は不明。現存の本殿の部材には、1580年(天正八年)の墨書があるようです。詳細な沿革は不明ですが、1777年に奉納された石灯の銘には「白山大権現」とあり、明治時代の記録には「白山神社」と記されていたようです。

 

境内

伊弉冊命神社の境内は南向き。住宅地の一画にありますが、境内は小さく、案内板や目印になるようなものもありません。

 

境内入口に鳥居などはなく、石灯篭と築地塀が建っているだけです。

 

境内の中心部には拝殿。

切妻、桟瓦葺。

 

拝殿の後方には鳥居が立ち、本殿の覆屋があります。

鳥居は木造明神鳥居。

覆屋は切妻造(妻入)。板塀とブロック塀で囲われています。

 

覆屋の内部には本殿。拝殿の後方は立入りできないため、本殿は覆屋のすきまからのぞいて見ることしかできません。全貌の確認ができないうえ、細部の観察も困難です。

本殿は、一間社春日造、こけら葺

墨書より、1580年(天正八年)造営国指定重要文化財

 

軸部や軒裏は丹塗り、壁面は白塗りで、虹梁には木鼻や蟇股彫刻、縋破風には懸魚が使われているのが確認できます。

隅木の有無は確認できませんが、文化庁のデータベースに“春日造”とあるため、おそらく隅木入りでない純粋な春日造かと思います。

 

以上、伊弉冊命神社でした。

(訪問日2024/12/07)