甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【京都市】日向大神宮

今回は京都府京都市の日向大神宮(ひむかい だいじんぐう)について。

 

日向大神宮は京都盆地の東端の山際に鎮座しています。

創建は社伝によると顕宗天皇(450-487)の時代で、勅命により日向国の高千穂から勧請された神を祀ったのが始まりとのこと。飛鳥時代には天智天皇の寄進を受けたようです。平安時代の『延喜式』には「山城国宇治郡 日向神社」という記載があり、これが当社と比定されていますが、別の神社だとする説もあるようです。

応仁の乱で境内を焼失して途絶しましたが、江戸初期に近隣の住人によって再興され、後陽成天皇や徳川家康の寄進を受けました。その後は、街道沿いにあるため交通安全の神として崇敬されたとのこと。

境内は急斜面の山中にあり、社殿は近現代の再建と思われます。2棟の本殿は伊勢神宮を模した神明造で、市内ではめずらしい建築様式となっています。

 

現地情報

所在地 〒607-8491京都府京都市山科区日ノ岡一切経谷町29(地図)
アクセス 蹴上駅から徒歩10分
京都東ICから車で15分
駐車場 5台(無料)
営業時間 随時
入場料 無料
社務所 あり
公式サイト 日向大神宮
所要時間 20分程度

 

境内

参道と拝殿

日向大神宮の参道は西向き。

境内入口は蹴上駅から50メートルほどの位置にあり、ここから境内中心部まで片道5分ほどの急坂です。

日向大神宮入口から南禅寺にかけてのエリアには、琵琶湖疎水の蹴上インクラインという歴史的な土木建築があり、水路の舟揚げ場やトンネル「ねじりまんぽ」が見られます。

 

入口には石造神明鳥居。

右の社号標は「式内 日向大神宮」。左は「青龍山 安養寺」で、参道の途中にある寺院の寺号標。神社と寺院とで共有の参道となっています。

 

参道を進むと分岐があり、左が安養寺、右が日向大神宮の参道です。

参道の両脇には、二の鳥居(石造神明鳥居と思われる)の柱だけが立っています。

 

向かって右側の柱。

貫を入れる穴は円形で、貫通していません。神明鳥居の形式だったと推測できます。

 

境内の中心部に到着すると、参道左手に手水舎があります。

切妻、銅板葺。

柱は円柱が使われ、組物などの装飾は省略、軒裏は一重まばら垂木。神明造を意識した造りです。

 

境内の中心部は南向きで、後述の社殿も南向きです。

三の鳥居は木造神明鳥居。笠木の部分は、角材が使われています。

 

三の鳥居の中心線から右にずれた軸上には、拝殿と外宮(左奥)があります。

拝殿は、入母屋(妻入)、銅板葺。

入母屋破風には木連格子が張られ、拝みには三花懸魚が下がっています。

 

柱は糸面取り角柱。組物はありません。

軒裏は一重まばら垂木。室内は格天井。

 

本殿(外宮と内宮)

拝殿の先には外宮(げく)の御門と本殿が鎮座しています。祭神はニニギと天之御中主神。

外宮の御門は、一間一戸、四脚門、切妻、檜皮葺。

 

側面は2間。神明造の意匠を取り入れた造りですが、構造的には四脚門といっていいでしょう。

柱は円柱が使われ、妻飾りは豕扠首。

 

破風板の拝み部分の鞭掛は、1組が3本(2組あるため都合6本)となっています。たいていの鞭掛は1組につき4本なので、3本のものはめずらしいと思います。

大棟には棟覆板が乗り、外削ぎの千木が突き出ています。鰹木は5本。

 

外宮の本殿は、桁行正面1間・背面2間、梁間2間、一間社神明造、檜皮葺。

江戸後期の造営。社記によると、遅くとも18世紀末の建築とのこと。

後述の内宮の本殿とあわせて2棟で市登録有形文化財。外宮内宮の本殿前にある御門は附指定されています。

 

大棟の千木は外削ぎ(いわゆる男千木)。鰹木は7本あります。

 

神明造は正面3間が正式ですが、この本殿は正面1間で、簡略化された造り。扉が奥まった場所にある点や、縁側と脇障子がある点も、正式な神明造と異なります。

 

背面は2間。

側面の縁側の外には棟持柱が立てられ、棟木を支えています。この柱は正式な神明造の意匠です。

 

外宮から内宮へ向かうと、参道右手に2棟の境内社があります。

左は朝日泉御井神社で、切妻、銅板葺。

右は天鈿女神社・恵美須神社で、流造、銅板葺。

 

境内上段の最奥部には内宮(ないく)が鎮座しています。祭神はアマテラスなど。

内宮の手前には木造神明鳥居が立ち、拝所があります。

拝所は、桁行3間・梁間2間、切妻、銅板葺。

 

拝所の柱は円柱が使われ、柱上に梁や桁を直接乗せています。

妻飾りは豕扠首。

室内は化粧屋根裏。

 

拝所の先には内宮の御門と本殿がありますが、拝所より先には進入できないため、細部の観察はむずかしいです。

 

内宮の御門と本殿は、外宮のものと同様の構造をしていて同年の建築のようです。

ただし、内宮本殿の大棟の千木は、内削ぎのもの(いわゆる女千木)が使われています。

 

境内社

境内西側の手水舎や拝殿の周辺には、多数の境内社が点在しています。

こちらは手水舎の近くにある神田稲荷神社。

 

神田稲荷神社本殿。

一間社流造、銅板葺。

 

神田稲荷神社の後方には厳島神社。

 

厳島神社本殿。

一間社流造。

 

拝殿の近くには福土神社。

神明造風の拝所(御門)があります。

 

福土神社本殿。

一間社神明造、銅板葺。

 

福土神社のとなりには天満宮。

一間社流造、銅板葺。

 

以上、日向大神宮でした。

(訪問日2023/02/24)