甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【津島市】津島神社 その3 八柱社、弥五郎殿社、南門

今回も愛知県津島市の津島神社について。

 

その1では楼門と拝殿について、

その2では本殿と荒御魂社について述べました。

当記事では八柱社、弥五郎殿社、南門などについて述べます。

 

八柱社と稲荷社

本殿向かって左側(西側)には、八柱社と稲荷社が南面しています。

写真右が八柱社(やはしらしゃ)の拝殿で、切妻(妻入)、銅板葺。

 

八柱社拝殿の軒下。

破風板の拝みには猪目懸魚が下がっています。妻飾りは豕扠首。

柱は角柱が使われ、頭貫には木鼻がついています。柱上の組物は大斗と実肘木を組んだもの。

室内は格天井が張られています。

 

拝殿の後方には八柱社本殿。

桁行1間・梁間2間、一間社流造、銅板葺。

1672年(寛文十二年)造営。津島神社10棟として県指定有形文化財。

 

向拝のかわりに前室が設けられ、銅板葺の屋根は瓦葺きのようなぎざぎざした外観。母屋には前室がついています。その2で述べた荒御魂社と同じ構造・様式です。

 

前室の柱は面取り角柱。江戸初期のため、面取りの幅がやや大きいです。

柱上の組物は連三斗。下側に木鼻を添えて持ち送りしています。

虹梁中備えには蟇股らしき部材が見えますが、しめ縄と紙垂に隠れてよく見えず。

 

前方の1間は前室。前室側面には貫が入り、脇障子のような板壁が張られています。

海老虹梁は前室の組物の裏側から出て、母屋柱の上部に取りついています。

 

母屋柱は円柱。柱間は長押で固められています。頭貫木鼻はなく、柱上は舟肘木。

妻面は妻虹梁がわたされ、大瓶束で棟木を受けています。

破風板の拝みと桁隠しには猪目懸魚。

 

背面。

縁側は背面以外の3面にまわされています。

 

八柱神社のとなりには稲荷社。

一間社流造、銅板葺。見世棚造。

こちらは簡素な見世棚造で、めだった意匠はありません。

 

八柱社および稲荷社の左側、境内西端の区画には多数の境内社が並立しています。

いずれも見世棚造で、一間社流造、銅板葺。

 

弥五郎殿社

津島神社拝殿の正面から左(西)へ向かうと、境内西端の区画に摂社の弥五郎殿社(やごろうでんしゃ)が東面しています。

入口の鳥居は木造で、神明鳥居とも明神鳥居ともつかない造り。

 

弥五郎殿社拝殿は、梁間3間・桁行2間、切妻(妻入)、銅板葺。

1673年(寛文十三年)造営。県指定有形文化財。

 

柱はいずれも円柱。軸部は貫と長押で固められ、柱上は舟肘木が使われています。

内部は板敷きで、柱間に欄干が立てられています。

 

正面の軒下。

正面中央の柱間には虹梁がわたされ、中備えは蟇股。蟇股の上には無地の妻虹梁がわたされ、豕扠首で棟木を受けています。

破風板の拝みには蕪懸魚。左右の鰭は雲の意匠。

 

拝殿の後方には、塀に囲われた弥五郎殿社本殿が鎮座しています。祭神は武内宿祢。

桁行1間・梁間2間、一間社流造、銅板葺。

拝殿と同様に1673年造営で、津島神社10棟として県指定有形文化財。

 

前室の構造は荒御魂社や八柱社と同様ですが、こちらは屋根が通常の銅板葺となっています。

 

前室の柱は面取り角柱。柱上は連三斗のようです。

前室側面には壁が張られていますが、その上の欄間には唐草状の彫刻が入っています。

海老虹梁は前室の組物の裏から出て、母屋柱の頭貫の位置に取りついています。

 

母屋柱は円柱。柱間は貫と長押で固められ、頭貫には拳鼻。中備えは蟇股。

妻虹梁の上には大瓶束が立てられ、その左右に笈形(あるいは海老虹梁?)が添えられています。

破風板の拝みと桁隠しは猪目懸魚。

 

縁側は4面にまわされ、側面後方に脇障子を立てています。

正面の階段は前室のすぐ手前にあり、縁側に食い込んだ位置に設けられています。

 

南門

津島神社拝殿から南へ向かうと、南門と藩塀(写真中央奥)があります。

津島駅のほうから当社へ来ると、その1で述べた境内東側の楼門に至り、駐車場もそちらにありますが、社殿の配置からして本来はこちらの南側が表参道だったのでしょう。

 

南門は、四脚門、切妻、檜皮葺。

墨書銘より、1598年(慶長三年)造営。豊臣秀頼の寄進とのこと。1959年の伊勢湾台風ののちに修復。*1

「津島神社南門」として単独で県指定有形文化財となっています。

 

正面向かって左の控柱。

控柱は面取り角柱。桃山時代のもののため、面取りの幅が大きいです。

柱上は出三斗。

 

左側面。

中央の主柱は円柱が使われ、組物を介して棟木を受けています。また、主柱の側面には独特な形状の大きな木鼻がついています。

破風板の拝みと桁隠しは猪目懸魚。軒裏は二軒まばら垂木。

 

内部の通路部分。

主柱のあいだに虹梁がわたされ、中備えに蟇股が置かれています。その上には貫が通り、組物で棟木を支えています。

 

南門向かって左手前には手水舎。

切妻、銅板葺。

 

柱は糸面取り角柱。貫の上の中備えは蟇股。

妻面には束が立てられ、破風板の拝みは蕪懸魚のようなものが下がっています。

 

藩塀とその周辺

南門の北側には藩塀。奥に見えるのは拝殿と回廊。

藩塀は、桁行3間、切妻、檜皮葺。

津島神社10棟として県指定有形文化財。

 

主柱は円柱。前後に角柱(控柱)を立て、貫で前後をつないでいます。

主柱の上部は、前後に梁を突き出して、軒桁を受けています。

妻飾りはなく、主柱で棟木を直接受けています。

破風板の拝みには蕪懸魚。

 

藩塀向かって左手前(南門西側)には、3棟の末社が北面しています。

 

藩塀向かって右手前の末社。こちらの4棟も北面しています。

 

ほかにも藩塀右側(東側)には摂社末社が並立しています。

こちらは摂社の柏樹社(かしわぎのやしろ)。

案内板によると1760年の造営とのこと。

社殿は簡素ですが、塀で囲われています。

 

向かって右の社殿は、摂社の和御魂社(にぎみたまのやしろ)。

柏樹社と同様に1760年造営とのこと。

 

八柱社と弥五郎殿社などについては以上。

その4では居森社などについて述べます。

*1:津島市の歴史・文化遺産、https://www.tsushima-bunka.jp/map/kenzoubutu/map000134.html、2024/12/31閲覧