今回は愛知県豊川市伊奈町(いなちょう)の若宮八幡社と東漸寺について。
若宮八幡社(伊奈町)
所在地:〒441-0105愛知県豊川市伊奈町宮坪1(地図)
若宮八幡社は市西部の農地に鎮座しています。
創建は不明。社伝によると1275年(建治元年)には確立されていたらしいです。室町中期には伊奈城の鎮守として本多氏の崇敬を受けました。延命寺(同市平井町)の古記録によると、15世紀末期に本多正時によって当社境内に伊奈天神社が祀られました。
境内
若宮八幡社の境内は南東向き。入口は農道に面しています。
一の鳥居は石造明神鳥居で、扁額は「若宮八幡社」。
二の鳥居は木造両部鳥居。扁額はありません。
参道右手には手水舎。
切妻、桟瓦葺。
拝殿は、入母屋、桟瓦葺。
正面は5間で、柱間はいずれも桟唐戸。
右側面。
側面は3間で、柱間は半蔀と横板壁。
縁側は切目縁が3面に設けられています。
縁側の終端には脇障子が立てられ、羽目板に彫刻があります。
彫刻は何らかの故事が題材かと思いますが、私の知識では題材を特定できず。
柱は円柱で、軸部は貫と長押で固定されています。柱上には台輪が通っています。
柱上の組物は出三斗と平三斗。
拝殿の後方には本殿がありますが、トタン板で覆われていて軒下が見えません。
本殿は、流造、銅板葺。
拝殿向かって右側には、伊奈天神社が南西向きに鎮座しています。
こちらは覆屋で、伊奈天神社本殿は内部に収められています。
伊奈天神社本殿は、一間社流造、こけら葺?。
1633年(寛永十年)再建。市指定有形文化財。
向拝の虹梁は渦状の絵様が彫られ、眉欠きと袖切がついています。
虹梁中備えは透かし蟇股。雲間を飛ぶ竜の彫刻が入っています。
向拝柱は几帳面取り角柱。
側面についた木鼻は、獅子と思われる神獣の彫刻。こちらの木鼻は口を開いた造形です。
柱上の組物は連三斗。
母屋正面の扉には、X字状のパターンの花狭間が彫られています。
扉の軸は、長押に開けた穴で受けています。
縁側は切目縁が3面にまわされ、欄干は跳高欄。脇障子の羽目板にも彫刻があります。
左側の向拝柱と、母屋左側面。
こちらの向拝柱の木鼻は、口を閉じた造形です。
母屋柱は円柱で、軸部は長押と頭貫で固定されています。頭貫には禅宗様木鼻。
柱上の組物は二手先。
角度がついて見づらいですが、妻飾りに大瓶束があります。破風板には猪目懸魚が下がっています。
伊奈天神社の右側には、6社の末社をまとめた社殿があります。
六間社流造、向拝3間、銅板葺。見世棚造。
以上、若宮八幡社(伊奈町)でした。
東漸寺
所在地:〒441-0105愛知県豊川市伊奈町縫殿58(地図)
東漸寺(とうぜんじ)は市西部の住宅地に鎮座する曹洞宗の寺院です。山号は万年山。
寺伝によると前芝村(現 豊橋市前芝町)に同名の真言宗寺院があり、津波によって当地まで流れ着いた本尊を祀ったのが当寺の前身らしいです。創建は1492年(明王元年)で、本多正時の開基とのこと。創建以来、本多氏の菩提寺として崇敬しており、本多氏が転封されたのちも崇敬がつづいたようです。
境内
東漸寺の境内は南東向き。入口は住宅地の生活道路に面しています。
参道を進むと、塀に囲われた区画に山門があります。
四脚門、切妻、桟瓦葺。
右の石柱は「不許葷酒入山門」。
右側面。
主柱(写真中央右)は円柱が使われ、その前後の控柱は几帳面取り角柱が使われています。
柱間は貫と長押でつながれています。
主柱の側面には冠木が突き出ています。
主柱と控柱をつなぐ頭貫には若葉状の絵様が彫られています。
柱上の組物は、出三斗や平三斗を2段重ねにした構成のもの。
妻虹梁の上には笈形付き大瓶束。笈形は波の彫刻です。
内部。通路上に掲げられた扁額は山号「万年山」(萬年山)。
扁額の上にも虹梁がわたされ、笈形付き大瓶束で棟木を受けています。
参道を進むと、左手に手水舎があります。
切妻、桟瓦葺。
手水舎の向かいには藤棚と鐘楼。
鐘楼は、桁行2間・梁間1間、寄棟、桟瓦葺。袴腰付。
柱は角柱。柱間に飛貫と頭貫が通り、頭貫と台輪に禅宗様木鼻がついています。
組物は出三斗と平三斗。中備えは撥束。
境内の中心部には本堂が鎮座しています。
入母屋、向拝1間、桟瓦葺。
本堂向かって右の玄関部分。
向唐破風、桟瓦葺。
柱は几帳面取り角柱で、正面と側面には禅宗様木鼻。柱上は出三斗。
虹梁は絵様が彫られ、中備えは竜の彫刻。その上の妻面には笈形付き大瓶束。
破風板の兎毛通は鳳凰の彫刻。桁隠しは雲の彫刻です。
以上、東漸寺でした。
(訪問日2024/04/14)