甲信寺社宝鑑

甲信地方の寺院・神社建築を語る雑記。

【東近江市】愛宕神社(大字能登川)と善明寺

今回は滋賀県東近江市の愛宕神社(大字能登川)善明寺について。

 

愛宕神社(大字能登川)

所在地:〒521-1231滋賀県東近江市能登川町556-2(地図)

 

愛宕神社(あたご-)は能登川駅北東の集落に鎮座しています。

創建は1942年(昭和十七年)で、当地の氏子中によって京都の愛宕神社から勧請されました*1。能登川博物館*2によると当地は穀物を輸送するための港があった場所で、当社はその跡地とのこと。なお、JR琵琶湖線をはさんだ反対側(能登川町627番地)にも同名の神社があります。

 

境内

愛宕神社の境内は北東向き。境内は住宅地の生活道路と並行しています。

右の社号標は「愛宕神社」。

入口には石造明神鳥居が立ち、扁額は「愛宕神社」。

 

参道右手には手水舎。

切妻、銅板葺。

2本の主柱を立てて屋根をかけ、主柱の前方だけに控柱を立てた構造となっています。

 

鳥居の先には拝殿。

入母屋(妻入)、桟瓦葺。

 

入母屋破風には木連格子が張られ、破風板の拝みに猪目懸魚が下がっています。

 

右側面。

柱は角柱で、柱上は舟肘木。柱間には雨戸が立てられています。

 

拝殿の後方には、覆い屋のかかった本殿が鎮座しています。祭神はカグツチ。

覆い屋は、切妻、桟瓦葺。

 

覆い屋の柱は角柱で、正面中央の柱間には虹梁がわたされています。

虹梁の両端には拳鼻がつき、中備えは蟇股。

 

本殿は、一間社流造、檜皮葺。

 

虹梁は大きな竜の彫刻となっており、この彫刻が中備えを兼ねています。

向拝柱は几帳面取り角柱。正面は唐獅子、側面は獏の木鼻があります。

 

母屋柱は円柱。

縁側は3面にまわされ、脇障子には唐獅子の彫刻。

 

母屋の組物は出三斗。台輪の上の中備えには、波に兎の彫刻。

妻飾りは虹梁と大瓶束。

 

以上、愛宕神社(大字能登川)でした。

 

善明寺

所在地:〒521-1231滋賀県東近江市能登川町570(地図)

公式:善明寺

 

善明寺(ぜんみょうじ)は能登川駅北東の集落に鎮座する真宗佛光寺派の寺院です。山号は瑞光山。

創建は寺伝によると1549年(天文十八年)。京極高清の孫にあたる和敬院永賴という僧が、本願寺の顕如に師事して当寺を開いたとのこと。のちに永賴は石山合戦で功を挙げ、鶴丸の寺紋と蓮如の真筆が当寺に与えられたようです。1781年(天明元年)に、佛光寺派に転派しました。

 

境内

善明寺の境内は北西向き。向かって右(南西方向)へ30メートルほど行くと愛宕神社があります。

右の寺号標は「真宗佛光寺派 瑞光山 善明寺」。

入口の山門は、薬医門、切妻、桟瓦葺。

 

山門内部。写真左が正面側です。

柱は几帳面取り角柱。無地の梁の上に束を立て、棟木を受けています。

 

山門の先には本堂。

入母屋、向拝1間、桟瓦葺。

 

向拝柱は几帳面取り角柱で、側面に獏の木鼻があります。

組物は皿付きの連三斗。

 

虹梁中備えは竜の彫刻。

 

向拝柱の上の手挟は、菊と思しき花の籠彫り。

 

右側面。

母屋の正面と側面は、雨戸を立てています。

 

母屋柱は円柱で、頭貫に拳鼻があります。

柱上の組物は出三斗と平三斗。

 

本堂向かって左手前には鐘楼。

切妻、桟瓦葺。

 

柱は上端が絞られた円柱。頭貫には木鼻がついています。

組物は、大斗と花肘木のような部材を組んだものが使われています。

 

妻飾りは虹梁と大瓶束。

破風板の拝みには蕪懸魚が下がっています。

 

以上、善明寺でした。

(訪問日2024/02/17)

*1:境内案内板より

*2:https://e-omi-muse.com/notohaku/tenkomori/page5.html、2024/03/05閲覧